エスパー

能力は必要か。

持ってありしは。

俺達は行動す。

自ら。

能力者による犯罪はどうやって防ぐか、それは簡単。
同じ能力者が対応すれば良いのである。
俺の名前は漢奈将吾(カラナ・ショウゴ)。
服装は、黒の軽めで生地の薄いダウンジャケット、青いジーパン。
ジャケットのファスナーは軽く上げられている。
能力者の犯罪が増えるに伴い、時音さんの政府への声掛けの元、組織された。
能力者保護組織、ガードの一員である。
俺は創設初期のガードの一番後の加入者である。
組織のリーダーは時音不方(ジオン・フガタ)さんである。
スーツの似合う良いおっちゃんと言った所。
彼の能力は有り余る怪力、もっぱらリーダーであるが故、政治行動の方が主である。
因みに俺の能力は鉄を操る力、つまり磁力使いである。
車の部品の一つ一つの分解、鉄の板で紙飛行機を折れる。
メンバーは後二人、木藤美奈子(キトウ・ミナコ)、山部麻奈(ヤマベ・マナ)。
栗毛の綺麗な長髪、頭にヘアバンド、服装はおしとやかなお嬢さん風、そんな美奈子の能力は予知。但し、今の所自分自身の未来だけは見えない。
予知は意識して見れる物ではない様だ。
初期のガード、二番目の加入者。
栗毛の綺麗な髪を肩の辺りまで伸ばし、白い手袋をしている。麻奈の能力は物に触れてのサイコメトリー。
人や物の過去が見える、が、直に触れないと見えない。
制御が効かない故、手袋をしている。
初期のガード、最初の加入者。
時音さんは40代。
俺は23。
美奈子も同じく。
麻奈は中学三年生。
東京周辺は俺達が管理している。
他の県にも赴いたりする。
昔と比べてガードのメンバーと支部は増えている。
東京本部の主力は俺である。
・・・・・・・・・・・
組織に入る前の俺はと言うと、男癖の悪いとんでもない母親の下で育っていた。
知っている男、知らない男。家に来れば喘ぎ声が聞こえる日々。
母が俺に暴力を振るうと言ったことはなく、家事も普通にこなす人だった。
仕事も至って普通の仕事で、夜の仕事やそういった方面とは無縁である。
そんな俺の相談相手だったのは、母の男癖の悪さに嫌気がさして別れた親父だった。
親父は音楽家で稼ぎの少ないアパート暮らし、それでも温かい人だった。
そうこうしていた中学二年生のある日、友達の家から帰宅中、信号無視の車が俺の方に突っ込んできた。
車が目に入った瞬間。
突っ込んできた車が軽く浮いて、横転した。
気が付くと、周りの人たちは呆然としていた。
「何が」
誰かの声が聞こえ、俺は妙な気持ちになった。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう。
揺らぐ心と共に、周りの車も動き出した。
人々の騒ぐ声、俺はとにかくそこから離れないと、そう思いその場を走り去った。
相談するべきは誰か、そう、父親だった。
歩いて一時間以上かかる父のアパートに行った。
ドアの前で泣きながら座っていると、
「どうした、将吾!!!!」
親父が驚いていた。

その後、親父の部屋で起こった事を喋った。
親父は俺の話を静かに聞いてくれた。
「今、それ、出来るか」
俺の事を気遣いながら聞いてきた。
「分からん」
そう俺が言うと、
「あれでいこ」
と親父は台所を指差した。
「嘘やろ」
「物は試しやろ」
親父は活き活きしていた。
変わった親で良かった。
のかな。
「知らんからな」
そう俺は言うと意識を台所に向ける。
と同時に鍋、お玉、フライパン、包丁。
色々な物が浮き出した。
「凄い」
親父は感心していた。
「もっと凄い事は出来んのか」
「こういうのとか?」
その浮いた物をそのまま移動させる。
「凄いな~」
「もう良い?」
親父の反応に安心というか、何と言うか。
その後、
「金物は浮くけど、お箸とかは無理ねんな~」
夜中中親父と実験していた。
親父がいなかったら今頃どうなっていたか。
自分の力をその日の内に理解できた。
軽く打ち解けた。
多分。
・・・・・・・・・・・・
親父が母に適当な言い訳をし、俺は親父の家に暫く居ることになった。
そして何日か経った時、親父の家に一本の電話が入る。
そう、それが「ガード」からの初めての接触だった。
母は俺の能力を渋々受け入れ、父は悠々と送り出してくれた。
それからは中学を転校とし、東京のガード本部のビル内での生活。
一人一部屋、自分の部屋がある。
部屋は俺の個性を尊重してか、皆と変わらない普通の部屋だった。
入った時分から訓練をしつつ、時には時音さん達と出かけたり。
能力犯罪者との実戦があったり。
昔は時音さんが一緒でないと外出出来なかったが、今は皆ある程度自由である。
勉強は勿論。中学、高校と俺は卒業資格を手に入れ。
美奈子は大卒。
能力者は通信制のレポート提出で卒業資格を一応取る。
麻奈は高校受験である。
麻奈は初めの頃は俺を警戒していた。
彼女の生い立ちはと言うと、幼少期に能力に目覚め。
その能力故、両親や周りから奇異な目で見られ、家から放り出す様にガードに預けられた。
とどのつまり、人が苦手なのである。
彼女の能力を考えると無理もない。
そう俺は思っていた。

皆手袋を外して触れられた事は無いと言っていた。
そういった彼女の事を思い、俺は無闇に彼女に関わろうとはしなかった。
そんなある日、
「お兄ちゃんに相談がある」
と麻奈が俺の部屋を尋ねてきた。
右手が熊に隠れていたのが少々気にはなったが。
この頃の麻奈は時音さんがあげた熊の人形、テディベアをいつも持っていた。
ベッドに座り、横に麻奈が座る。
「どうしたの?」
そう尋ねようと思っていた時、俺の手に麻奈の手が触れた。
そう、直に。
「ちょ・・・・!」
咄嗟に俺は麻奈の手を払いのける。
「ご、ごめん」
麻奈は俺の事をジッと見ていた。
「ち、違う!そうじゃなくて!」
「私が悪いの、ごめんなさい」
麻奈は申し訳なさそうに言う。
「そうじゃ、なくて」
「?」
「何が、見えた」
俺の問い掛けに不思議そうな麻奈。
「何が、見えた?」
「女の人が色んな男の人と裸でいるところ」
彼女の言葉を聞いた時、俺は麻奈を抱きしめていた。
「お兄ちゃん、痛い」
「ごめん、ごめん」
俺は涙を流していた。
「お兄ちゃん?」
「あんなの」
麻奈が俺の頭を撫でていた。
「よしよし、よしよし」
「あんな、物」
苦しかった。
だが、麻奈は、
「お兄ちゃんは優しいね」
と笑いかけてくれた。
「ああ」
暫く抱き合った後、
「お兄ちゃん、大好き」
そう麻奈は笑顔で言って部屋を後にした。
「笑わせる」
ベッドに寝そべりながら呟く。
見てしまったか、あれを。
「馬鹿だ」
ベッドで誰かに言っていた。
誰かに。

それからは、
「時音おじさん」
「美奈子お姉ちゃん」
は元より、新たに。
「将吾お兄ちゃん」
と呼ばれる様になった。
麻奈との一件、麻奈が手袋を外した事について、は皆が驚いた様だが、俺はどうも思わなかった。
思いたくもない。
あの子が俺にどんな気を持とうが関係ない。
そう思っている。
中学生になった麻奈は、
「時音おじさん」
「美奈姉」
「将吾兄」
と呼ぶようになった。
成長を実感する。
・・・・・・・・・・・・
美奈子とは男女の関係にある。
と、言うか交際している。
俺は童貞、美奈子も処女と、お互い初めて同士だった。
それはお互いが19の頃の出来事である。
彼女は自分の力を役立てたいと、ガードに入った。
彼女の両親は彼女の力を誇りに思っており、理解のある人たちだそうだ。
彼女の予知により防がれた事故、犯罪、救助は多い。
勿論、麻奈のサイコメトリーもそうである。
これらも俺達の活動に含まれている。
昔の麻奈との一件の後。
美奈子と二人っきりの時。
「木藤って自分の未来は予知出来ないんだよな」
と俺は言った。
「今の所、よ」
「じゃ~俺にもチャンスがある訳だ」
「は?」
「未来が見えてないから、俺と付き合っちゃうかもしれないだろ」
「回りくどい言い方ね」
「じゃ~付き合って下さい」
「じゃ~って何よ」
「細かいな~」
「あんたがデリカシーがないのよ」
「それは、謝るよ」
「よろしい、仕方ないから付き合ってあげる」
「よっしゃ」
「現金な奴」
そう言う彼女は笑っていた。
自分の未来が見えないのは、彼女にとって最高の幸福なのかもしれない。
未来が見えていたら、彼女の笑顔は見れなかっただろう。
彼女の笑顔に俺は救われる。
彼女がいて。
俺がいる。

「本当にここであってんだろうな」
イヤホンマイクで美奈子に聞く。
「私にだって分からないわよ、絶対じゃないんだし」
警察の待機車の中にいる美奈子に、そんな愚痴を言いつつ、美奈子が予知したという日と場所で適当に待つ。
美奈子の予知のビジョンを解析すると、最近、頻繁に宝石店を襲うモヒカンパンク野郎がまた現れる。とのこと、能力が速く走るって事もあり、結構厄介な様だ。
それはそれとして、こんな昼間に何があるって、そう思っていた時。
ヒュンッ!とまるで突風の様な風が抜けて行った。
「は・・・・?」
今、何か、何て思っていると突然。
「きゃああああああああ!!!!!」
女性の叫び声。
襲われていたのは、ジュエリーショップ。
店の中からケースを割る音が響いてくる。
「そこまでにしとけ」
駆けつけた俺は店の出入り口に立つ。
「黙ってろ、ガキ」
モヒカン頭に鎖の付いた皮パン。上下黒。
腕には鉄の輪をはめている。
パンク系と言うのだろうか、その男は顔にも耳にもピアス。
ニタニタ笑って宝石を鞄に入れている。
「しょうがない」
溜め息混じりに俺は力を発揮する。
「あ、ああああああああ!!!!!」
男は何が自分に起こっているのか分からない様だ。
「ど、どうなって」
男は戸惑いながら這い蹲る。
男の体中の物により鉄の塊その物。
「う、動け・・・・!」
「終わったぞ」
這い蹲り、ジタバタしている男を尻目に待機している警官達に告げる。
「ご苦労様」
美奈子の声を聞く。
その後、
「ご協力、感謝します」
礼を言われつつ、俺の能力で抑えている者に、警官の一人がいつもの様に、銃を構え強力な睡眠弾を撃ち込む。そして手錠。
「俺も同行するよ」
「え、しかし」
「良いって、もしもの時の為にさ」
「そうですか、心強い」
「そういう訳で」
「そう、分かった」
美奈子が答える。
男と一緒にパトカーに乗り、収容施設まで同行した。
この事件は無事解決した。

中学に入った頃には麻奈は明るい普通の女の子になっていた。
麻奈は俺から見た物の事は触れなかった。
俺もそんな事気にはしていなかった。
だが、中学生になった麻奈は、
「将吾兄」
「う?」
「私が小さい頃の事、覚えてる?」
と言ってきた。
「熊の人形持ってた時か」
「そう」
「それで?」
「いや、私もあの時は軽率な事しちゃったなって」
「軽率?」
「ほら!私が小さい頃」
「俺に触れた、か」
「う、うん」
「そんな事気にするなよ」
俺は言う。
「でも」
「それで、どうした?」
「いや、それだけ」
「そっか」
「あのさ、将吾兄」
「う?」
「あ、いや」
「お前は回りくどいな」
俺は笑っていた。
「あの時見えたのが気になるんだろ?」
「うん」
「それは多分、俺の母親と、そういった関係を持った男達、ってところかな」
「そう、なんだ」
「どういう風に見えた?」
「え?」
「いや、どんな映像だったのかなって」
「それは」
「それは?」
「女の人と男の人が抱き合って、色々遡るんだけど、女の人は変わらなくて、男の人はどんどん変わって」
「間違いなく俺の母親だわ」
自虐的に俺は言う。
「ごめんな」
「え?」
「もっと良い物、見せたかったんだけど、どうにも」
「変わらないね」
麻奈を見ると何故か笑顔だった。
「変わったよ」
「ううん、変わらないよ」
麻奈は嬉しそうだった。

「どうかな」
少々納得のいかない俺。
「美奈姉は良いな~」
「は?」
「こんな彼氏がいて」
「そ、そりゃどうも」
「私も彼氏欲しいな~」
「出来る、かな」
「「かな」って何よ」
麻奈がちょっと怒る。
「いや、出来る」
「そう、かな?」
「そうそう」
「じゃ~あ~」
「う?」
「それまでは、将吾兄で我慢する!」
そう言って麻奈が飛び付いてきた。
「こ、こら!」
「将吾!麻奈!予知が!」
って時に美奈子がドアを開ける。
「「あ」」
二人抱き合って固まる。
「将~吾~!」
「ち、違う!これは麻奈が!」
「麻奈のせ~にして~」
「ど、どうして」
「私、先に行くから!」
麻奈が急いで出て行く。
「おい」
「私もあんたに口説かれたのは、あの時分だったかしら」
「あのな~」
「口だけは上手い物ね~」
「いや、俺にはそれ以外にも能力があってだな」
「言い訳は後でゆっくり聞くから、ね」
「は、はい」
「よろしい、じゃ、行きましょ」
「了解」
麻奈がいるとろくな事にならないな。
そう思いつつ、嬉しい俺であった。
美奈子が焼きもちとは。
ちょっと意外だ。
「俺ってモテるのかな?」
「何か言った?」
「いえ、何も」
黙る俺だった。

あの後聞きそびれた、そもそも何故俺に触れたのかについて聞いたら、
「あの時は分からなかったけど、今なら分かる」
と麻奈が言い。
「今はどうなんだよ」
と意地悪く俺が言うと、
「好き」
そう言われた。
麻奈の真剣な表情にドキッとした。
だがすぐに、
「冗談」
と笑った。
「大人をからかうなよ」
「はいはい」
二人の時間は自然と流れた。
これで良いのだと。

10

サイコメトリーによる捜査、今回は行方不明の息子を探して欲しいという内容だ。
俺と麻奈の二人で事件に当たった。
警察官の人も何人か付いてきている。
警察の押収した品から、この雑木林に辿り着いた。
その当時もこの雑木林から足取りが掴めていなかった。
何年も前の事であり、警察ではお手上げの事件だった。
押収された品の中にあったライター、タバコの吸い殻。
それから麻奈はこの場所を読み取った。
男はタバコを吸い、まるで垢抜けたような表情をしており、そのまま車で池に、それが麻奈の見た映像。
「自殺、かも」
「そうは思いたくないけどな」
林を抜けたところには大きな濁った池があった。
「やるか」
「うん」
警察官達は何をするのか検討がつかない顔をしている。
右手を翳し、軽く上にやる。
池の中から車が、自転車の部品が、様々な物が汚い水を垂れ流しながら上がってくる。
「おおお!」
警察官の人たちの声が聞こえる。
「よっ、と」
その声を他所に俺は、余計な他の物を落とし、目に付いた幾つかの部品と車を引き寄せ、自分達の近くに下ろす。
「手間が省けて良いだろ」
と、警察の人たちに言った。
「は、はぁ」
「後は任せました」
そう俺は軽く言い。
「お送りします」
と警察官の一人が先を行き。
「ありがとう」
と俺。
「麻奈、行くぞ」
「うん」
車が気になるようだったが、あの池から上がった事を考えると触らせるのはどうかと思う。
上がってきた車の中の遺体から行方不明の本人と判明。
涙ながらに両親に感謝された。
心が痛んだ。
力は人を救うが、時に苦しめる。
「知らないほうが良い」
「え?」
「その言葉は嘘なのかもな」
「将吾兄」
麻奈の沈む声・・・・。
「今の俺、かっこよくないか」
「はぁ」
麻奈が溜め息を付く。
「あからさまだな」
「当たり前でしょ」
「ま、いっか」
「良くない」
「良いんだよ、それより飯食おうぜ」
「も~」
俺達は美奈子の笑顔に迎えられながら夕飯を共にした。
一人ではないのだと。

11

「君達はいつ結婚するんだ」
事件の報告をし終えた俺に時音さんは唐突にそう言ってきた。
「いや、そんなのまだ」
「能力者だからって遠慮はいらんよ」
「そう、言う訳じゃ」
「ははは、冗談だよ」
時音さんが笑う。
この人の笑顔は温かい、父と似ている。
「時音会長、面会の時間が」
「宮前(ミヤマエ)君、君はせっかちだね」
黒いスーツに黒い髪は結ったように束ねられている。
キリッとした女性、時音さんの秘書だ。
宮前則子(ミヤマエ・ノリコ)さん。
彼女は能力者ではない。
「会長がマイペースなだけです」
少し怒気がある。
「ま、応援してるから」
肩をポンと叩かれる。
「失礼しました」
ドアを閉める。
「あれで会長だもんな~」
歩きながら呟く。
あの人のお陰で何人の能力者が救われただろう。
彼自身が能力者というのも大きいのだろう。
政府の考えによりガードの能力者は一箇所に集めることは出来ない。
このビルにいる能力者は俺達三人くらい。
犯罪者は一箇所の収容施設に集められ、例外の様だが。
能力者が革命を起こすとでも思っているのだろうか?
外国も日本も能力者に対する風当たりは強い。
結束より分散。
魔女狩りに合わないだけましかもしれない。
そうならない為に俺達や時音さんは活動しているのだし。
「もしも」
俺は呟く。
それは考えたくはない。
それに、そこまで人が愚かな生き物だとも思いたくない。
そう俺は信じたい。
「だ~れだ」
目が手に覆われ暗くなる。
「美奈子」
「せ~か~い」
「子供っぽいな」
「そうかもね」
彼女は笑っている。
俺の考えている事も知らずに。
そんな彼女の様子に俺は吹っ切れる。
「よし、飯食いに行くか」
「麻奈も誘おっか」
「今日は、俺の奢りだ~!」
暗いことを考えさせてくれない。
それも人の能力なのかもしれない。
そう俺は思う。

12

尤も単純で尤も強力な力、それはサイコキネシス。
十一月のある日、事件は起きた。
真下京也(マシタ・キョウヤ)、彼はその能力により母親を包丁で刺し殺した。
包丁は心臓を、いや肉体を貫通して壁に突き刺さっていた。
彼の母親や家の中を麻奈がサイコメトリーした結果、口論の途中に能力が覚醒、躊躇なく刺し貫いた様だった。
「お前の様な娼婦、俺が楽にしてやる」
「きょ、京也!待って!京也!」
彼の言う娼婦と言う意味は、彼の家庭環境から来た言葉のようだ。
父親は物心が付く前には病気で亡くなっており、それから母親はキャバクラで仕事をしつつ、男をとっかえひっかえアパートに連れて来ていた様で、麻奈のサイコメトリーでも、母親と男が性行為に及んでいるのを部屋で布団を被って聞いている京也が見えたらしい。
只、彼女が京也の為に家事をしている姿も見えたとか。
京也はどうやら引き篭もりだった。
高校卒業後は暫くバイトをしていた様だが、後は家の中にいっぱなし。
年齢は。
「俺と一緒か」
警察の情報を聞いて、俺は。
他人事とは思えなかった。
まるで自分を見ている様で気持ち悪く思えた。
そんな京也も、予知やサイコメトリーを必要とせず。
警察の捜索により、京也の居場所は直ぐに分かった。
取り壊しをされていない、五階建ての古びたビル、その中だ。
俺は美奈子に言われている事がある。
「彼と対面したら、将吾は直ぐに後ろに置いてあるパイプで彼の頭を殴りつけて」
と、一緒にお昼を食べている時にいきなりボーッとしたかと思うとそう言って来た。
話が聞こえていない時は予知を感じている事が多いから、またいつものか、何て思っていたが。
「俺はどうなってた」
俺の質問に美奈子は、
「言いたくない」
と言った。
「死んでたんだな」
そう言うと、睨みつけるように、
「縁起でもない事言わないで!」
そう怒られた。
「場所は」
美奈子の手を握って聞く。
「ビル、何か、建てかけの」
「いつだ?」
「そこまでは」
美奈子は沈んだ声になる。
「お前の予知は可能性だ」
「でも」
「変えられる未来なんだ」

13

「俺も変えてやる、心配するな」
「うん」
結局美奈子の見た未来では、俺は強力なサイキックで壁と言う壁
に叩きつけられて死ぬと言うことが分かった。
予知したその日に皆に伝えられた。
その未来から皆で相談した結果、今回やはり適任者は俺しかいないと言う結論となった。
美奈子が予知したのは三日前の事である。
時音さん、麻奈、美奈子。
「本当に行かなくて良いのか?」
「ええ」
「将吾兄」
「心配するなよ」
麻奈を抱きとめる。
「将吾、私」
「俺に任せろって」
「で」
何も言わせないよう口付けをする。
「じゃ」
いつもの感じでビルの中に入って行く。
いざ入ると緊張する。
警察の話では四階に彼は潜伏しているらしい。
只の情報に過ぎない故、油断出来ない。
階段を静かに上って行く。
一階には誰もいない。
二階にも誰もいない。
三階、にも誰もいない。
「怖いな」
少し本音を漏らしつつ、上がって行く。
四階に着く。
広い空間で青いダウンジャケットに青いジーパン。
その男と対面する。
と、どちらが早いか。
互いに右手を翳す。
俺の視界には鉄の棒が見えていた。
「が・・・・!」
物凄い力で壁に叩きつけられる。
だが、その衝撃はその一度きりだった。
男の方を見ると、後頭部に鉄の棒が当たり。
「が・・・・!」
ドサッと倒れ込んだ。
カランカラン、カラカラ。
鉄の棒が転がり。
一瞬の死は、希望となった。
未来が変わった。
その後、俺は窓の外へ。
「終わったぞおおおおおおおおお!!!!」
皆に聞こえるように叫んだ。
警察が駆け込み、睡眠弾を。
下に下りた俺は、美奈子に抱きとめられ。
直ぐに救急車で搬送された。

14

「奴はどうなるんです」
病室の中、時音さんに話しかける。
「すまない」
そうふける時音さんの様子に少なからず察しがついた。
「モルモットって訳ですか」
「・・・・そうだ」
俺達能力者は人権を行使する、それ以前に、それに収まる器ではない、と言っても過言ではないだろう。
「アメリカ、ですか・・・・」
「そうなるな」
彼等なら能力者を管理することは出来るのだろう、だが、管理の名の下に何をしているのか、管理すら出来ない日本政府には何も言うことは出来ない。
「分かっていても」
彼の生い立ちや色々がゴチャゴチャになり、俺は少し涙する。
「人は、残酷ですね」
「ああ・・・・」
時音さんが力なく返事をする。
暫くして、俺は。
「時音さん、来週辺りどっか行きませんか」
みんなで一緒に、そう尋ねた。
「将吾君は、何処が良いかね」
そうニコッと笑う時音さん。
「美奈子達と相談しないと」
「それが良い」
二人微笑合った。
・・・・・・・・・・・・
「ちょっと麻奈、ウロチョロしない」
「あれってミッキーじゃない、わ~」
「元気があってよろしい」
と時音さん。
俺や時音さん、勿論宮前さんも一緒に。
今日は東京ディズニーランドに来ている。
時音さんの全て奢りだそうだ。
事件の後なのに、と美奈子は俺に気を遣っていたが、
「だからこそだよ」
と俺は微笑んで言った。
「麻奈ちゃん、私もバニラを」
と宮前さん、
「私もバニラだけど、将吾は何にするの」
「俺はチョコに決まってる」
「時音さんは」
と美奈子、
「う~んチョコも捨てがたいが、ミックスも、いや、やはりバニラか」
良し、バニラを、と時音さん。
「将吾兄ちゃん、美奈子姉ちゃん早く~」
「はいはい分かったわよ麻奈、ほら、将吾も」
「うぃ~っす」
三人コロコロと笑いながら店に行く。
後ろでは時音さんと宮前さんが俺達を微笑んで見ている。
この日常を糧に俺は生きる。
これからも、皆と共に。
日々を。

エスパー

エスパー

  • 小説
  • 短編
  • アクション
  • 成人向け
更新日
登録日
2016-07-13

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著作権法内での利用のみを許可します。

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