竜巻優等生
「先生、私の財布がありません。」
この頃、次々と財布の盗難事件が起こっている。生徒間では犯人の決めつけが絶えない。
「俺の財布盗ったのお前だよな!」
「僕じゃないよ!」
一体犯人は誰だ?
消えた財布。
いろは学園の中2の1組で事件は起きた。
5名の財布が無くなっていたのである。5名のうち1人は血の気の多い山岡だった。
昼休みに山岡は地味な生徒の野田のところへ行った。
「おい。野田ぁ。俺の財布盗ったのお前だよなあ。」
「ち、違うよ。なんで僕なんだよ…。」
「絶対お前だ!こんなことすんじゃねえよ!地味だからバレないとか思ってんだろ?え?」
「ち、違うって!」
「証拠出せや。」
「僕の鞄探したら?入ってないから。」
山岡は野田の鞄をあさった。財布は出てこなかったがそれでも山岡は
「どうせ中身だけ抜き取って外側は捨てたんだろ」
と野田を疑い続けた。
盗られた残りの4名も口々に
「あー。なんか野田っぽい。」
「どうせ野田が盗ったんでしょ」
とつぶやき始めた。
それを聞いた野田は泣きそうな顔をして
「なんでみんな決めつけるの?僕じゃないのにっ!」
とぼそりと言った。
野田が涙を見せまいと顔をうつ向けた。
するといきなり山岡が野田の頭を殴り飛ばした。
野田は床に倒れこんだが、野田が犯人と早くも信じ込んでいるクラスのほとんどは、当然だ、というような顔で野田を見下ろした。
「乱暴はダメだよ。山岡。」
1人の少女が山岡に近づいた。
その少女は優等生の巻野 風である。
「なんだよ。巻野。ちくったらお前もこうなるぞ。女子だからって容赦はしないからな。」
「ちくらないよ。でも、こんな行いは見過ごせないね。」
「くっそ。優等生ぶりやがって。ムカつく。」
「野田、大丈夫?」
巻野はしゃがんで野田を起こした。
そこまでの怪我じゃなくて、保健室に行く必要はないようだ。
「うん。ありがとう。巻野さん。」
一部の人は巻野を、犯人を助けるヤツだとひややかな目で見た。
しかし野田が犯人とは決まっていない。巻野は堂々と自分の席に戻った。
事件はまだまだ続く。
竜巻優等生