ENDLESS MYTH第3話ー13
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マクロの黒い球体。大きさはビー玉ほどしかないその無数の球体は、中空から地上から数キロ四方にびっしりと敷き詰められたように現れていた。
ミンチェはそれが何なのか、一瞬では理解できなかったものの、その黒い球体が起こした現象を眼にしてすぐに、自らが置かれている状況の危険性を咀嚼した。
黒い球体のひとつひとつが、上下に白い糸のようなものを放射すると、周囲に半透明な円盤のようなものを展開させ、ぐるぐると時点を開始した。
すると凄まじい吸引力を発揮、周囲の空気、植物、岩、土などあらゆるものを、体内へ吸い込んだのだ。
「ブラックホール!」
思わず叫んだとも時、彼女の緑色の肉体はすでに、シュヴァルツシルト半径の影響下に置かれ、凄まじい力で、近くのマイクロブラックホールに吸引された。
ブラックホール。そのシュヴァルツシルト半径内部に落ちたものは、例え光であっても抜け出すことはできず、空間に生じた穴であり、光すらも吸収してしまうからこそ、黒く見える。
その周囲の空間は湾曲して見えている。
マキナ・アナズ。自然界最大の現象を自らの能力で引き起こす能力者。
ミンチェが草むらの中に、丸顔の少女を発見した時、能力を発揮する間もなく、彼女の垂れた皮膚は吸引されていった。
肉体よりも先に緑の皮膚が黒い穴に落ちていく。
神経が削られていくのを感じた彼女は、苦悶に悶絶する顔を顕にした。
が、吸引される寸前、突然として黒いブラックホールの群れは、黒ぐろとしたその球体面が白く濁り、コンクリートのように凝固すると、惑星の重力の影響を受けて、地面へと次々に落下した。
吸われた皮膚を手刀で切り取り、落下する固まったブラックホールを切り離し、流れる紫色の血液を緑色の掌で抑え、彼女は苦い顔をする。
「何を、グズグズやってんだ。ブチ殺せ!」
昆虫的な容姿をした青い皮膚のソフリオウ人のゴーキン・リケルメンが転送してくるなり、イラ立ちを顕にした声色で叫んだ。
中空に現れた昆虫的な人物は、4本の指を開き、腕を振り上げた。
と、草むらに潜んでいたマキナの足元が急速に動きを鈍らせない、なにが起こったのか彼女は瞬間的にパニックに陥った。
丸い顔の視線を足元に落とすと、脚がコンクリートのように、土とくっつき、固まってしまっていたのだ。
物体を凝固させる能力の持ち主たるゴーキンは、あらゆる物質を硬くする、つまり凝固させる力を所持していた。
実に攻撃的な口調である。
「こんな劣化動物にいつまで手こずってる。こうして、殺すんだよ」
そういった時に、さっき凝固させた数多のマイクロブラックホールを、鉄球のように、片腕を動かすだけで、ふわりと浮遊させると、一気にマキナめがけ突撃させた。
八方から高速で散弾銃の弾丸のような、自らの凝固したブラックホールが迫るのだ、なんと皮肉なことだろうか。
そんな後悔をする余地もなく、小さな塊は高速で接近した。
念力の防護壁を展開させたところで、これだけの数の高速体を阻止などできるはずもない。
が、生きることを本能的に選択した彼女は、周囲に防護壁を構築、亀のように身体を硬直させるのであった。
その刹那、無数の高速体は突如、爆発を起こした。まるで無数の爆竹が空中で爆発するような連鎖である。
身体の酸素中毒症状を、驚異的な速度で緩和したイ・ヴェンスが熱エネルギーを利用して、爆発させたのである。
大きく舌打ちをした昆虫的な生命体は、巨漢を今度は固まらせようと、彼の方へ視線を向ける。
けれども凄まじい殺気が迫るのを感じ、すぐにそちらへ視線を向ける。
すると牙を剥いた獣と人間が混じったような容姿のニノラが飛翔してくるのである。
「今はそのぐらいでいいでしょう。始まったばかりだ」
まるで両陣営の攻防を制するように、全員の脳内に声が反響した。
ファン・ロッペンの声である。
ENDLESS MYTH第3話ー14へ続く
ENDLESS MYTH第3話ー13