塩っ辛い話。をつまみにしてジョッキを片手に準備はオッケー!

塩っ辛い話。をつまみにしてジョッキを片手に準備はオッケー!

まずはビール?その後、焼酎と日本酒持ってこい!泡盛も許可する!


「何が社会の底辺だぁー、あいつめ、学生の頃は一緒だったのに社会に出たら急に冷たくなりやがって。俺は頑張ってるのに、頑張るだけじゃだめなのか…」
僕は久しぶりに高校の頃、中の良かったメンバーで飲んでいた。そうするといつのまにか仕事の話になっていた。まぁそれは当然ちゃ、当然だが、僕は散々馬鹿にされた。お前の仕事はなっていないとか、お前は甘いとか、給与とか立場とか…僕はそんな事に余りこだわりを持つタイプではないから聞き流していた。だが流石に数人の友人からグチグチと言われると腹が立ってきて席を抜けたのだ。しかしこのまま帰るのは腹ただしいので僕は適当に目がついた小さな戸を開けてこの居酒屋に入店したのだ。
僕はジョッキの中で金色の水と細かい泡を立てるアルコールを喉に押し流した。
すると、角砂糖の様な甘い声と同時に僕の空いている手を握って声が聞こえた。
「わかります!頑張っているのに怒られるんですよね!私も貴方の気持ちが良くわかります!」
僕は共感された声の主の元を見た。髪を少し茶色く染めている今時のOLだった。目と鼻に粘ったい液体をグスッグスッと垂らして泣いて僕にそう言ってきた。顔が赤い。あー、この女の人、結構酔ってるんだなぁと思った。けれども僕の独り言に共感してくれた事は結構嬉しかった。

「私も特にやりがいがあるわけでもありませんが、それでも日々、私なりにこなしているんです!そしたら高校時代の友人たちは結婚して主婦になって私に向かって言うんです!働いて何が楽しいの?佐東も早く結婚したら?って、ちょームカつきません?」
彼女はそう言って焼酎をビールで割って勢いよくゴクッゴクッと飲み干した。
「それ美味しいんですか?」
僕はその光景にビビって聞いた。
「飲まないとやっていけません!」
彼女はジョッキを力強く置いて言った。
そして堂々とした声で言い放った。

「よーーし!今から歌いにいくぞぉおおお!」
彼女は白いシャツの腕の裾をまくり上げて叫んで立った。
その言葉に僕も賛同した。
「いいっすねぇえ!行きましょう!行きましょう!」

こうした後、僕と彼女は換気の悪そうなカラオケ店に入店して散々歌い、ビールと焼酎とウーロンハイを浴びる様にして飲んだ。そのせいだろう。僕は気分が悪くなり崩れかけた足を運んでトイレの便器にオリジナルのカクテルを注いだ。うーん、頭が痛い。
そうしているとトイレのドアが恥じらいもなく唐突に開いた。
「てっめぇええ!軟弱か!この程度で吐くとは!ちゃんちゃら可笑しいわ!」
彼女はそう言葉を僕に吐きつけると僕の襟を掴んで階段を降りて店から出た。彼女は道路の横にとまっているタクシーに声をかけて僕を蹴り上げて座席に押し込んだ。
「おっちゃん!まん丸若葉アパートに向かってくれ!」
「了解です。ところで飲み過ぎじゃないですか?最近、この時間帯を良くループしてますよね?」
「うっさい!何時もの事だろ、さっさと車を出せ!」
僕はこのやり取りを聞いてこの女、常連なのか?と回る思考を巡らせて考えていた。

アパートの一階の部屋の鍵を開けて僕は再び蹴り上げられた。
「冷蔵庫に発泡酒が入ってるから取ってくれ」
彼女は丸いテーブルの横に座り僕に指で指示して言う。
見知らぬ女の子の部屋に入ったというのに緊張もへったくれもない。僕は彼女のビールと自分の分のビールを取り出して彼女の前に冷たい缶を置いた。
プシャァ!
心地よい音が聞こえる。その後喉を鳴らす音が僕の近くから聞こえてくるが「もぉ、眠い…」バタリ!彼女は倒れて寝息を立て寝始めた。

きっと疲れていたんだろう。まぶたを少し半開きに開けて白目を見せて。ぐぉー、ぐぉーと鼻息を流す。
僕はその彼女から視線をそらしてテーブルの端っこを見た。するとだ。【北見中学校卒業アルバム】と書いてある厚い本が置いてあった。
僕はビクッとする。北見中学校だと?僕の母校ではないか?
僕はそのアルバムを手に取った。
どうやら僕の先輩らしい。僕はページをめくった。見た事がある顔が点々とあるが、その中に今、僕の隣で寝ている彼女の顔はない。不思議に思って最後にある寄せ書きのページをめくった。
【佐東会長!3年間ありがとう!】と書いてある。
佐東会長?ん?あの眼鏡をかけていて幸の薄そうで静かでパッとしない、あの佐東会長?この横で寝ている女が?嘘だろ?
僕は口を開けてその信じられない変化に驚いていた。
僕はまた寄せ書きのページに目を向ける。そこには彼女が書いたらしき文字が書いてあった。
【絶対に動物のお医者さんになる!】
これは…将来の夢って奴か…
僕はその文章と今の彼女の姿を見比べて目を擦った。また段々とモヤモヤとし始めた、でもその心を打ち消して僕も横になった。

「あ、あ、ああ、私、また、あー」
時計の針は午前11時を指している。カーテンから光が漏れスズメの鳴き声も薄っすらと聞こえてくる。
「ごめんなさい、私、お酒を飲むと人が変わったようになるんですよ。ホントに迷惑をかけてすいません」
彼女は乱れた髪の毛を軽く手で直しながら言った。そうした後に僕を玄関に進ませようとさせた。この姿が彼女の本来の形なのだろうか?なんとなく悲しくなって来た。昨日の夜の彼女の方が生き生きとしていて僕個人的に良かった。
だからだろうか?僕は言ってしまう。
本当に失礼だと思う。
「夢、叶えたんですか?」
「はい?」
彼女は眉を潜めて聞き返した。
「叶えたんですか?動物のお医者さんになるって夢?」

僕はきっと悪い奴なんだろう。彼女はその言葉を聞いて下を向いてしまった。それだけで分かってしまう、彼女の夢は叶わなかったのだ。
僕は彼女のその唇を噛みしめる表情を見た。そして何故だろうか。羨ましく感じた。多分、それは僕にはなかった目標で挫折で経験だからだ。僕は今までの時間を何となくだけで過ごしてきただからだ。そう、僕には一生見せる事が出来ない彼女の表情であった。
でも一つだけ僕に言える事はあった。
「貴女の状況が今、どんな状況かは僕には分かりません。でも貴女の今までの努力は良くやって来たと思うんです。だから自分がダメだって思わないで下さい。」
僕の声に彼女は言った。
「どうして?」
「中学校時代の貴女と今の貴女、その変化でわかります」

そして僕は最後にこう述べた。
「どうです?今から僕と植物園にでも行きましょうか?そうしたらアルコールも丁度よく抜けますよ。そんでまた夜にでも飲みに行きましょうよ?」
僕は偉そうな質問をしたくせに何のフォローも出来なかった。でも彼女とまだ一緒に居たいと僕は思ってしまう。
「うん。私のオススメのお店に連れてってあげる」
僕のくだらないお願いを佐東会長は嬉しそうに頷いた。

塩っ辛い話。をつまみにしてジョッキを片手に準備はオッケー!

塩っ辛い話。をつまみにしてジョッキを片手に準備はオッケー!

学生の頃は一緒だったのに急に冷たくなりやがって

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-07-04

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