太陽に照らされて
ある家族を乗せた車が突然交通事故に
その中にいた生き残り長男のお話。
彼は一人の妹とおばと三人でずっと暮らしている家に住んでいた。
どんどん見えなくなる世界に彼は何を思うのか。
そして彼らの運命は。
普段通りの朝
俺は今年両親を亡くした。
両親は交通事故、そして俺もその車の中にいた。
一人の妹がいる。
妹は車に乗り合わせてなくて今も元気に小学校に通っている。
ただ俺は片目を失うことになってしまった。
頭を打ったせいなのかわずかに体も動かしづらい。
ただ、両親がなくなっても俺の朝はいつも通りに来てしまうわけで
どうすることもできないまま今日もまた同じ毎日を繰り返していた。
高校三年生の夏
両親を失ってからもうすぐ5カ月がたとうとしていた。
俺にとっては最後の夏休みで、でもその最後が楽しくなることもとくに期待はしていなかった。
妹は小学4年生で両親の事もそこまで気にしないようになった。
ただ、そんな俺は進路を決めていかなければならない今でも
両親の事を引きづり続けていた。
あれから何日が経ったのだろうか。
そう指を折り数えながら、俺は片目の見えない状態で1月から進んでいない家のカレンダーに目を通した。
来月31日は妹の誕生日、そして両親を亡くして半年の日だった。
妹は半年間泣かなかった。俺よりも強いのだろうか。
それともまだ両親が生きていると信じているのだろうか。
俺には妹が泣かない理由がひとつも見つけられなかった。
何かできる事
妹は今日も元気に遊びに行った。
夏休みだ。
そんな中俺は今日もひとり病院に顔を出していた。
もう一方の目もどうやら少しずつ見えなくなってきているらしい。
メガネは元々かけているがかけても見えてこない世界が
なぜか恐怖を感じさせた。
病院から帰るとおばさんが夕飯を用意してくれている。
妹はもうかえってきていた。
「今日も友達と遊んできたのか」そうきくと「そうだよ」と妹はいつも答えた。
その会話からはじまる夕食はさみしかった。
前までは妹も楽しそうに学校の友達の話をしていた。
妹も大人になったのだろうか。
妹に対して食の細かった俺はどんどん食べられなくなっていた。
妹は今日もいない。俺は病院の帰りに妹への贈り物を探しに行った。
家ではほとんど笑わない妹へなにかできないかと
こんな俺でも何かしてやりたいと思った。
もう8月中旬。夏休みも終わってしまう。
いもうとはいつものように「ただいま」と帰ってきた。
今日も暗い俺の世界は
妹の声だけが響き渡っていた。
妹は最近よく心配するようになった。
そして出かけるのも1時間とかになってしまったんだろう。
妹はすぐ帰ってきた。
気づけばおばもうちの家にはこなくなっていた。
太陽に照らされて
俺の家にもうあのカレンダーはない。
今日の日付を妹に聴くと
8月31日だよっといった。
俺はもう忘れていた。両親の顔も、最後にかけられた声も。
妹の誕生日も、両親がいなくなった年も
あれから何日が経ったのだろう。
妹から俺の通っている高校の匂いがした。
懐かしかった。
今日は妹の誕生日
そして両親を亡くしてからずいぶん長い月日が経過していた。
俺はもう立てない。
大好きな両親の前で拝むこともできない。
そして可愛い妹の成長した姿もわからない。
ただ俺はあの時に見つけた贈り物を妹にわたした。
それは光に照らされて輝くひまわりのペンダントだった。
もう古くなってしまったけれど
妹のそれを付ける姿も見ることもみることはできないけれど、
妹は笑った。
「ありがとう」って。
見えなくなった世界に俺はまだ太陽の熱を感じた。
そう。
これから先も妹はこの太陽に照らされて生きていくのだろう。
空から見守る太陽のぬくもりに照らされて
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太陽に照らされて
思いつきで描いたこの一作品
どうだったでしょうか。
たとえ先の世界が見えなくても
今ここにある確かなものを大切にしてください。
それがあなたにとって一番の幸せだから。