ENDLESS MYTH第3話ー8

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  稲光が激しく 空を覆っていた。 ここがどこなのか そして いつ なのかも メシアにはわからなかった。 黒雲の間から地上を照らし出す 稲妻の光は、 巨大な廃墟を映し出していた。 一体それが何なのか、 どういった目的で 作られたのか、 メシアには何も分からなかった。 ただそこに放り出された 一人の ちっぽけな人間に過ぎないのだから 。
 雨はまだ 降り始めてはいない。 だが稲妻は激しくなり続けていた。
 地上には 草が生い茂っている。 しかしメシアの知っている植物とはまるで違った、 姿、 大きさをしていた。
 草はメシアの背丈をゆうに超えており、針山のように嵐になびいている先端を尖らせていた。
 前の見えないメシアは、両手で草をかき分けながら先に進んでいった。 とりあえずこの場から 何とかして逃げ出さなければと思う気持ちが先走っていた。
 またひとつ轟音が空を駆け抜けた時、青白い輝きの向こうにそれは現れ、メシアの前に凛然と立っていた。
 シルエットは 巨大な建物である。だが、 建物の大きさはメシアが知っている建造物のそれとは、明らかに異なった異次元の大きさであった。
 最初見たとき 彼の眼には 壁にしか見えなかった。 それが建物だと気付いた時 彼の頭は 激しく混乱した。
 さっきまで見ていた宇宙空間それもまた驚愕ではあったが、建物の大きさはそれら宇宙空間同様の驚きを、与えるに十分な大きさであった。
 自分がいったいどこにいるのか ここがちきゅうなのか、それともまた別の空間なのかメシアは混乱し、 発狂する寸前であった。 
 とにかくここから逃げなければならない。その思いばかりが彼の脚を前へすすめた。
  草の壁をかき分けながら メシアはもう一度自分に 何が起こったのかを考えた。
 光につつまれる前メシアが最後に覚えているのは親友であるファンが掌をかざされ、激しい重力に押さえつけられたのを覚えていた。
 あれがどういった現象なのかメシアにはわからなかった。ただ 自分の知らないところで 何かが起こっていることだけは 誰にも理解できていた。
 壁のような草むらを 進んでいた メシアは あることに気づいた稲妻が空を覆う眼下に広大に広がる地上には植物が生い茂っていた。だが不思議なことに虫1匹いる気配がなかったのである。 
 これだけの草むらがあったならば 虫の一匹もいても不思議ではない。それなのに虫は一切いなかったのだ。それどころか生物の気配すらなかった 前方に見える建物には、光のひとつもなく人の気配は全くない。
 けれどもメシアは目の前の建物を目指すしかなかった。 周囲に他の建物はなく、文明らしきものは目の前の建造物だけだった。
 歩いても歩いても、壁のような巨大な建造物は 近づいてこない。いったいどれだけ歩いたのだろう メシアはとうとう歩くのをやめた。
 したたる汗は 冷たかった。この世界では孤独でしかなく、誰も助けには来ず、先が見えなかった。
 このままどこにも辿り着けないのではないか、そんな嫌なこと考えが頭から離れなかった。
 次に草むらをかき分けた時、 イナズマが地上に走り抜け柱を作った。そしてメシアはある事実に衝撃を受けた。
 彼が目標にして目指していた巨大な建造物 それがいつしか建造物ではなく、自然の構造物に変化していたことに気づいた。
 巨木だ。しかもメシアが想像を絶する、天を貫く程の巨木がそこにそそり立っていたのだ。
 稲妻が再び地上光の雨を降らせ時、彼は気付かされた。
 巨大構造物の横に巨大な木が雲を持ち上げていたのである。
 いったいここはなんなのか?
 愕然とするしかないメシア。
 と、その時に生温い風が吹き抜け、彼の鼻孔に生臭さが針を刺した。
 そして草むらに急激な気配が立ち上がったのである。

ENDLESS MYTH第3話ー9 へ続く
 

ENDLESS MYTH第3話ー8

ENDLESS MYTH第3話ー8

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-07-03

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