花よ、散らないで。~キミが必要だから~
九蔵大和。おれは、そんな名前だ。今日は適当に屋上にいったら、舞い降りた天使がいた。
愛おしいと感じてしまう。どうした俺!俺には彼女がいるじゃないか!!ああ、だめだキミがキミが好きだ。
第一話
プロローグ
「す――どこにも行かないっていったじゃないか! 約束は守れよ! 俺はお前のこと――きなんだぞ。戻ってきてくれよぉ。――……お前には言いたいコト、たくさんあるんだぞ! おい……ちきしょう! 俺を俺を一人にするんじゃんじゃねぇよ。おまえは死なないって言ってただろう――」
第一章
「ほら! 大和君、右目から涙がでてるよん? どうしたのかにゃ?」
これは白昼夢なのか? いつも小さい頃からたまに見てきたのだけれども、最近になって言い表しがたい光景を頻繁に見るようになった。
俺は『なんでこんなもんみなきゃあかんねん!』って、大阪弁で突っこみを入れたくなる程うんざりしていた。ほとほと、俺は参っていた。このドリーマー(腐女子)がみる世界を俺が見てどうするんだろ。はぁーあ。夏になるよ。鬱蒼と繁る緑の大地が俺に何かを語りかけてくるような不思議な感覚。
視界から伝わってくる感覚と暑さとがミックスされ、それがゆっくりと自分の頭の中でかき混ぜられように夏を満喫していた。そんなことよりも夢をみたくない。
(だって、男が男の事を想うってそれって……な)
危ない思考回路は消し飛ばし、いつも通り正常運転……平常運転。だって俺には、一つ上の彼女、今年卒業してしまう高校三年生の吾妻朝あがつまあさという彼女がいる。彼女は心配げに、そして少し妬いているような目線で見てきた。。
嘘を言うのも時にはいいよなって俺は思った。夢を茶化して、エロい姉ちゃんとやったという思考にすり替えた。だって、カッコ悪いじゃん。
「あーさっき少しだけみた夢で、文句なしの可愛い女の子食べちまったよ。いやぁーあれは見事なメロン
やった。って、リアルでも可愛い子は募集中だよ!」
『もう大和君たら!』などと俺に好意を寄せる女子達が色めき立っていた。『顔がいい』それだけでこうも違うとなぁ。整形? んなのは負けた奴がするこった。地で勝負するのがいいんだわな。いつもの光景。女子達は熱い視線で俺をみる。そう、俺は、モテモテのモテ期のなんて言ったって、九条大和くじょうやまと君は、俺はラブレターも貰っちゃうし、昼食になれば手作りごはんを頂いたり、呼び出しされたりのオンパレード。
コレで有頂天になるなっていう方がおかしいかもだけど、有頂天になるよな……普通なら。俺は軽く見せている臆病な男なだけだ。
女の子遊びは『やる』に至らず。キス止まり。いつだって女の子は例えて言うなれば『獰猛果敢』な生き物だから。なかにはモロに『ホテルいこ?』なんて誘ってくる女の子もいる。怖い怖い。まぁ今の彼女の朝もそういうとこ肉食系女子かもしれない。逃げているが、送り狼ならぬ送られ狼になりそうで、なんだか怖い。
(魂までも持って行かれそうで恐ろしい)
そんな考えを抱いてしまうぐらい『やる』っていう行為は俺にとっては神聖なものだった。
最近の女子は貞操観念が麻痺しているような気がする。昔ながらの考えを持つ俺的には、結婚してからと決めている所がある。遊びまくってもイイコト無いだろうし。それこそ『性病うつされましたー!』なんてありえないし。やっぱり、遊んでる風に見せて、『遊んでない自分の本気』の求愛っていうギャップ萌えを狙ってみたり。
まぁ、童貞って言っても信じてくれないのがなんというか女の子を取っ替え引っ替えしてるせいかもな。俺的には色んな女子を知りたいというのもあるし、コレだ! っていう女子に出会った時に自分を曝け出す時、余すことなく相手に暴かれたいから。
「こら、大和くん! 一途に私をみなさい! 彼女の私がいるのに、女の子に媚びたりしないでよ。でも
うちの彼氏様は簡単にはなびかないけど。ふふっ」
「どうだろうね。その自信どこにあるんだか。ねぇだぁりん」
「あのなぁ……」
一見したら可愛い女の子に見えるのだけれど、颯太、そう佐藤颯太さとうそうたは俺に首ったけの男好きな女装師。服装も勿論女の子の制服に身を包んでいる。下手な女子より可愛い。だけど同じもんつけてる人間なんかは好きじゃない。
「今日も素敵よ。だぁりん」
まるで語尾にハートマークが付いているかのように、ベタベタとしてくる。それを牽制するかのように、朝が俺に抱きついてくる。
「暑いでしょ。離れなさい。ほらほら。二人とも」
「えー」
不服そうな朝。彼女だからというスタンスなのだろうけど、甘い雰囲気の気分でもないので可愛がらない。こんなひどい男でも、『好きよ、好きよ』と言ってくる二人はなんだか不思議な存在だった。
その前に颯太は男だから除外したいものだけれど、女子は颯ちゃん頑張って! などと、応援めいたエール送っている。全く、この腐女子共め! と言いたいところだけれども、なんとも言い難い。確かに颯太の純粋な好意は好きだが、それに応えるというのはまた別の話。友達として大事だと思うから俺は友達でと言い切っている。
昼食風景だけれど、俺は別のことを考えていた。実は俺は母の手一つで育てられている。貧しいというわけではないが、元々、母さんは気風がいい人だし。けれど、財布の紐は締めて無駄遣いなどはしなかったから。
これでも俺は、学年首位の頭を持ってる。勉強と運動。人との繋がりを大切にと教えてくれた母に教えられ感謝と共に、母の子供で良かったと心底感じた。。
そんな母に、新しく出来た夫、つまり俺の父親がデキるのだ。子持ちだそうで俺と一緒の学年だそうだ。何も聞かされずに、ある日ポツリといわれたので。なんだか俺は一人取り残された幼稚園児のような気分だった。
新しい家族がデキるのは嬉しいけれど、でも、何かが違ってて。ウキウキとした気分にはなれないのだった。母さんが楽できるのは嬉しいけれども、父親になる人と初対面だといやに『緊張するんだよなぁ』と思っていた。
花よ、散らないで。~キミが必要だから~
えと、はじまりました!大和は彼女はいるが、好きな人ができてしまう。けれど…・。ッて感じです。
軽い男ではなく、重きを置いている人なんだけど、ちゃらい。そんな男の子。どうでしょうか?