老いを楽しむ

古代インドにおいて、理想的な人生観として、人生を4段階に区別するというのがある。
「学生期」 「家住期」 「林住期」 「遊行期」だ。

ちょうど私が、家住期まっただ中の時、
桐島洋子さんは、50代になって、子育て終了と同時に、これからは「林住期」と日本を飛出し、
さっさとカナダに住いを移された。
ずっと、林住期に憧れていた私にとっては羨ましい限りだった。

その、桐島洋子さんが、20年経って、再び「家住期」、といって日本に戻ってこられた。
カナダでは、豊かな自然に親しみ、スピリチュアルな世界にもふれ、十分に楽しまれたそうで、
「あんまり気持ちが良い時間ばかりで、あの世との境がわからなくなりそうで…」と、
再び、「家住期」にと舵をきられたそうだ。

私は60代後半になった今も未だ「家住期」まっただ中、現役の主婦だ。
高齢社会になった今、この調子だと、憧れの「林住期」は味合うことなく「遊行期」になりそうだ。

私の人生の最終章のシナリオは、旅の果て、
「ゴビ砂漠の満点の星空を眺めながら、砂漠の砂となり、やがて宇宙と一体になる」だ。

それまで、老いを楽いんでいる私に家族は、
「元気なうちに早く旅立たないと歩けなくなるよ」と急き立てる。

老いを楽しむ

老いを楽しむ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-29

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted