色音乃物語(三)
Case 3 敬意と不問
「ねえ」
「……んっ。どうしたの」
隣で横になっているしのは、てっきり寝ているものと思っていたので、あきらは少し驚いた。
「明日のお祭り。やっぱりいかない」
「そう」
「……あきらくんってさ、いつも理由とか聞かないよね」
「そう……だね」
「興味ないの」
「話してくれる時は、僕が聞かなくても話してくれると思ってるから。言わないのはそういうことなのかなって」
「ん。まあ。そうだね」
「どうしても聞きたい時は聞くよ」
「今は?」
「しのたんが“行くのやめようかな”って言っていたら、理由を聞いていたかも。でも、“いかない”って言ったよね。しのたんが考えて自分で決めたことだから、そのままそれを尊重したいと思ったよ」
しのは暫く口を閉ざし、振り向いてあきらの目をじっと見た。
「おやすみ」
そう言って頬にふんわりと口をつけ、眠りに就いた。
あきらはしのと話す前にしていた考えごとの続きを始めようとしたが、頬に残る感触が心地よくて、次第に意識が薄れて言った。
色音乃物語(三)