今ここだよ

私は今、一人ファミレスに挑戦している。

迷うな子羊、ここに一匹オオカミがいるぞ。

私は今、人生初の一人ファミレスに挑戦している。

あんまり恥ずかしい気持ちはない。
ここ都会なら、当たり前のことである。
だから断じて、恥ずかしくはない。

とりあえず、メニューを見る。

あんまり食べらんない。

唐突に、困る。困ったので、ドリンクバーをとりあえず頼む。
そしてミニパソコンを開き、文章を打つ作業を始めた。

「家でしろよなー」

とは、店員だか誰だかわからぬが吐かれた言葉である。
しかし、そんなのにビビる私ではない。
タイピング技術を見せつけながら、私はこの文を書いている。

とりあえず、ジンジャーエールを飲みながら、私は全く最近お腹が空かないことについて、「案外人って簡単に死ぬのかもな」と短文を書いている。
所詮暇つぶしである。

私は最近、遺書を書くのに凝っていて、過去の人たちの遺書を眺めては、その文の美しさにうっとりとしている。
はい、若干病んでいる人がここに一名、救急車さん、こちらです。

そんな妄想分を書いては、投稿して遊んでいる。
暇だからアプリゲームと言う趣味はなく、並んで座っているときの読書など、首が痛くなるから結構である。

それよか人を眺めて遊びたい。

人の悪口を言っている連中は案外軽いばかりで中身が伴わないチキン野郎が多いのと、人に興味を示さないお嬢さんは頭がいい。そしてこんな私に興味を持ってのぞき込んだりしてくる姉ちゃんは対外お笑い体質で、案外友達になりやすい。

私は隣に座ったカップルが、こちらを指して笑っている様子がどのようなレベルで物を言っているのか秘かに観察しつつ、「いや私もあなた方を見て楽しんでいるのですよ」と暴露しながら、お互い楽しく過ごしてみた。

私はイルカ並みに人と波長を合わせるのが得意である。

一時間ほどいて、ファミレスを後にした。
勝ち誇った顔をする親子に向かい、子供に「バイバイ」と手を振ったら、喜んで「ええ姉ちゃんや」と褒めてくれた。
父が聞いたら激怒する話が、私に取っちゃ良い儲け話である。

このように、機会はどこにでも転がっていて、手にするかどうかは当人次第である。

世の若者よ、見習いたまえよと、私はファミレスを後にした。
私がいるのは今ここ、誰にも相手にされる最北端の波頭にいる。
波しぶきが、暖かいのか冷たいのか、どう取るかは私次第だ。

今ここだよ

ほんと、お腹が空かないのです。

今ここだよ

小食にファミレスはきつい。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-26

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