デリートメモーリー

まだ未完成です>_<

もしも記憶が消せるならあなたならどつしますか?

雨がしとしと降る夜、美鈴はその雨に溶け込むようにひっそりと泣いていた。
「あなたの記憶消してあげましょうか?」
見上げると全身黒ずくめの服を着た男が彼女を覗き込んでいた。彼は美鈴も傘に入れるようにして話しているが、いかにも不審者という出で立ちだ。
「何ですか、いきなり…」
「私ならあなたの辛い記憶消してあげることができますよ」
最初は何を言っているか理解できなかった。そして、普段なら理解しても無視しただろう。しかし、この時の美鈴にはとても魅力的な言葉に思えた。
「…じゃあさ、かずくんとの思い出を消してよ。もう全部忘れたいの…」
「承知しました。本当に全て消してしまっていいのですか?」
男はにっこりとしながら確認した。先ほどまで気づかなかったが、よく見るとかなり整った顔立ちをしているようである。
「全部消しちゃってよ!かずくんなんて私の人生にいなかったことにして欲しいの…!」
「わかりました。ではあなたにこの薬を渡します。これを飲んで寝てしまえば全て忘れることができますよ。一度飲んでしまえばその効果を消すことはできないので注意してくださいね」
そう言いながら、男はカプセル型の薬を渡した。白と青のカプセルで明らかに怪しい見た目である。しかし、美鈴は直感的にこれは本当に記憶を消すものだと思えた。そして、彼女はもらうとすぐにそれを飲み込んだ。
「そんなに躊躇なく飲む人はあまりいませんよ。勇気があるのですね。では、これであなたは記憶を消すことができます」
男は微笑みながら言った。
「消した記憶って戻ることあるの…?」
おそるおそる聞いてみると
「私が持っているもう片方の薬を飲めば戻すことができますよ。でも、記憶を消したことも忘れてしまうのでこの薬をもらいに来る人はいませんけどね」
「よかった、それでいいの…もう戻したくないから。ありがとう」
その言葉を聞くと彼は美鈴に傘を持たせ
「それでは、楽しい人生をお過ごしください」
と言い暗闇に消えていった。

デリートメモーリー

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  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-24

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