時を越える推理  第二章

今日は曇りだった。
いつものように千郷は、公と待ち合わせの場所へと向かった。場所は勿論あの喫茶店。
千郷は、いつもより三十分くらい遅れてしまった。(いつも結構遅れているのだが・・・。)
普段は、大体、待ち合わせの十分くらい前になって気づいて小走りで向かう。それでも五分遅れくらいで目的地についていた。
しかし、今日はそうは行かない。
そのためかなり焦って向かった。曇り空だというのに傘をも持たず家を飛び出すほどだ。
いつもなら、言い訳として、「仕事が長引いた」だのとエセ情報を流して誤魔化していた。実際のところそこまで忙しくは無い。だが、今日はそんな嘘を信じてもらえるだろうか。仮に信じてもらえたとしても、言葉でとっちめられるだろう。
十分以上走っただろうか。元々体力があったのが幸いして普段の二十分以上早くに付いた。
だが、遅刻は遅刻。おそらく公は俺を顔をしかめっ面にしてみているだろう。そんな反省の意味をこめつつ顔を上げた。
公の姿はなかった。
席を間違えのではない。
そもそも、待ち合わせの場所で座る場所は決まっている。公は用心深い性格で記憶力が良い。そんな公がすわる席を間違えるはずも無い。ましてや、待ち合わせに時間を忘れ、遅れてくるはずも無い。
結局、来たのはそれから十数分経ってからだった。
「おお、遅かったな。珍しいじゃないか。お前が時間に遅れてくるなんて。」
「ん、ああ・・・。」
いまいち、反応が悪い。
「どうした。具合でも悪いのか。」
「・・・・・・。」
公は沈黙してしまった。
「輝・・・。」
「ん、なんだ?」
「・・・・・・。」
公は再び口を閉ざしてしまった。
「いや、やっぱり伝えておかねばなるまい。」
「なんだよ、早く言え。」
公が、口を開いた。
「陽が死んだ。」

時を越える推理  第二章

時を越える推理  第二章

  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-07

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