トラムサーカス

なんだ みんな勝手に あっちでがやがや、こっちでぎたぎた ひっきりなしに
俺は両耳広げて綱渡りさ
ごちゃくちゃな雑音こそが静寂で 真空の宇宙は胸も破裂するような暴音の嵐と知れ
演ぜられ 繕われた緊張は狂気の鼓動 イカレたシンバル人形共の大喝采
耳でバランスをとれ
ありもしないものをあると法螺吹く 悪魔の道化は引きつった高笑い
耳で綱を渡れ
象が二足で立ち上がり 張り出た腹に 振り上げられた前足 長い鼻は龍のように天井へ昇り来る
そして喇叭のような 雄叫びが爆ぜて 俺の髪は逆立ち 張り詰めた綱はたわみ
俺はとうとうよろけて落ちた 尖ったブーツの爪先が最後に綱を掻き鳴らした
俺の全身 恐怖と興奮に共鳴しながら 真っ逆さまに
落ちているのか 浮いていくのか 分からない

トラムサーカス

トラムサーカス

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-22

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