くまかめついのべ。⑯
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《①》
タマゴサラダの繁殖に成功してからというもの、毎食必ずタマゴサラダが食卓に現れる。
「あー、偶にはポテ」
途端に向けられる突き刺さるような視線と、おぞましいオーラ。
ポテトサラダは彼女のライバルが繁殖に成功させ、諸々の権利ももちろんその子が、僕の元カノが。
《②》
「この国ではこれを使って、ONIという身の丈数メートルの強大な怪物を撃退してきたらしい」
「こんな小さな兵器に、そんな威力が」
「運良く手に入れられたサンプルだ。慎重に解析しよう」
「た、大変です。奴らはこの紙に願いを書くだけでそれを叶える事が」
「なんと」
《③》
くじらは一晩でとっても大きくなる。
収穫時期を見誤ると、畑から運び出すのがとっても大変になるんだ。
《④》
「ライオンを手懐けてくるぜ!」
勇敢な男に憧れる彼は、突然ライオンを手懐ける為に旅に出てしまった。
婚約者を置き去りに音信不通。
◆
「良かったね、手懐けられたみたいで」
方々探して隣県で見つけだした冒険家さん。
ライオンみたいな頭の女と、仲良ししていて。
《⑤》
雨蛙を目一杯押し込んだ貯金箱。
すっかり忘れて二十四年。
恐る恐る底の蓋を開けてみると、深緑色の綺麗な宝石が沢山詰まっていた。
「実に素晴らしい。ついつい涎が」
蛇顔紳士は札束でぱんぱんのバックを僕に渡し、蛙宝石を嬉しそうに持って帰った。
《⑥》
「無駄な経費を削減する為に、まっくら屋との取り引き今後一切打ち切る事にした」
愚かな国の代表のせいで、白いシルクハットのまっくら屋は国を去ってしまった。
闇夜酒が恋しくて布団を頭から被るけれど、ああ、やっぱり、違う。
《⑦》
「下ですよ。乗ります?」
極悪人面だらけのエレベーター。
隅っこに、真美子さん。
「あの」
僕は上だと言われた。
上に行くように。
「あと一人、乗れますけど」
隅っこの真美子さんと、目が合う。
《⑧》
途端に膝の上のリノールの巨体が軽くなった。
魂の重さは二十一グラムと聞いていたのに、ふわりと浮かび上がってしまいそうなくらい、軽く。
「まったく、最期まで無茶苦茶な奴だな」
天国の門は酷く狭いらしい。
そんな重たくて大きな魂で、引っかからないと良いけど。
《⑨》
三日で完成させたタイムマシンを世間に発表せず、過去の英雄や有名人を連れてきてはウォシュレットを試させる父。
「聞いてくれ、ナポレオンはな」
変人で変態で天才なんだ、この人。
くまかめついのべ。⑯