小ネズミ系女子
一年生の部員に小ネズミみたいな女の子がいる。
かわいい。
石膏像のデッサンや、名画の模写などには興味が無く、友達を連れ込んで、人物画のデッサンばかり描いている。
もしくは外に出て植物の絵を。
ちっこくて、動きに落ち着きがなくて、いつもジグザグににちょこちょこ歩いてる。
…様に見える。
だから俺は心の中でこの子のことを小ネズミちゃんと呼んでいる。
「小林さん」って呼ぶと手を少しばたつかせてから「はいっ」って振り返る。
それが面白くて用もないのについ声をかけてしまう。
「なに描いているの?」
って言ったら、慌ててスケッチブックをバタンと閉じた。
この反応。
さては好きな男を描いていたな…
もしくは好きなアニメキャラ。
こういうのが紛れ込んでくるから美術部はお遊びクラブって言われるんだ…
小林さんは可愛いから許すけど。
「見せて?」と迫ったらよりいっそうバタバタした。
具体的に言うと両手を体の前で小刻みにバタつかせ、首も高速で振った。
「いえ、あのっ」
…これで俺の絵でも描いていたら一気に少女漫画みたいな展開になるんだけど…
無理やり取り上げてきゃーきゃー言ってる小林さんの目の前でスケッチブックを広げる。
校庭にそびえる杉の木や屋上から見た街の風景、花壇の花の絵、よく一緒にいる女の子のクロッキーなんかが描いてある最後のページに…
すごくリアルなハンバーグの絵。
これ、ファミレスガ○トのチーズインハンバーグだ。
良く描けてる。
手前においてあるライスもリアル。
特に割ったハンバーグの中からとろけ出したチーズの描き方が秀逸。
チーズの描き方が…
さすが、小ネズミ!
「アハハッ」
「小林さん!」
「上手い!」
「って言うがお腹空いてるの?」
…ねえ、小林さん、帰りに一緒にこれ食べに行かない?
小ネズミ系女子
小説家になろうにも投稿させて頂いてあります。
小林さんの登場する話は他にも小説家になろうに投稿してあります。