黄金 六月号
この「黄金」を通して、自己の文学の創造による芸術活動の盛んを願います。
私たち藤光憂美也、明日彼方、苔石俊の三人で、作品の形式は問わずに美しい言の葉を積み重ね、この「黄金」を一つの最高芸術品にするように日々励みます。
皆さま、どうか私たちの作品をお楽しみ下さい。
1、短歌
・苔石俊
血を吐けど なくのを止めぬ ホトトギス
青き美空に恋失いしか
・藤光憂美也
(芥川龍之介に歌う)
橋の下で泳ぐ河童に水乱れ雫飛び散り身の濡れにけり
(石川啄木に歌う)
願えども願えどもなお咲きもせず蕾のままに夢が落ちけり
失いしものにさ迷い枯れたりし花を摘み取り哀れぞと泣く
あかあかと薔薇の花弁が誇りけり消えるなと思う日が過ぎ去れど
暑し日に肌を滑りし水玉の鏡に映る夏の色かな
太陽に腕を回されし背中かな夏は嫌いと耳に囁く
大海の気ままでありし如く我が心も揺れる寄りて戻りて
今にでも消えそうに思うぬばたまの夢に似たりし光なりけり
六月の空や大きな紫陽花が咲きしと思う青でありけり
紫陽花や涙の染みし色彩は海より深く塩が香りし
病葉や夏の緑の繁りたる頃に何ゆえ己のみ散る
程遠き縁は悲しき後の世で影すら隔つ花と水かな
言の葉に雫が付きし滲みては形の浮きし心なりけり
・明日彼方
しとしとと耳に入るは雨の音今日も一人で静かに佇む
夕暮れに烏の鳴き声澄み渡り寂しさまぎれに小石を投げる
爪先で背伸びをしたら君の顔傘に隠れて唇重ねる
朝の風枕元には置き土産手紙と口紅君の余韻
光差す陽が出ているは雲の上雷落ちるは雲の下だけ
隙間風春の寒さを感じる夜共に抱き合い暑さに変える
朝顔は昼になっても朝顔で夜になっても花を咲かせる
蜘蛛の巣に雫が落ちて光差す八つの棘が瞳貫く
灰色の音が轟く綿飴は舌を当てても水の味だけ
有明の海苔を食べれば磯の味ご飯のお供に一枚如何?
上り坂過ぎれば次は下り坂人の生き死に途切れることなし
妖しさに包まれながら抱き締めて白い舳先で二人寄り添う
のろのろと歩く姿はカタツムリ道筋示さず迷い続ける
2、俳句
・藤光憂美也
夏の日や星に変わりて輝きし
澄み渡る夜空に浮きし海月かな
蟷螂かまきりの子や持つ鎌の新しき
白百合や汚れし我に見られたり
土草や天道虫の独り言
眠たしやアイスコーヒーと午後の空
峰雲や行けば如何なる鳥と花
悲しきや空も泣けよと五月晴れ
夏の日や恋でもしたか暮れぬ空
水馬あめんぼの子や水蹴れど円は無く
蛍火や指でなぞりて繋げけり
子燕や落ちはせぬかと糞の上
身に止まる蚊を恨みては息を吹く
3、雨を歌う
・苔石俊
雲海を 仰ぎ心に ざわめきが
あゝ雨が降る あゝ雨が降る
雨の音に 眠り夢見て 濡れている
届かぬ思い 降り積もるかな
止まぬ雨 己の懺悔 打込めて
沈む轍に 波紋は響く
雨脚の はげしき音に 耳を立て
待ち焦がれるは 君の足音
街は濡れ 頬に当たる 小雨にも
君の笑顔が 薄明光線
雨上がり 靄立ち込める 月魄に
今宵も歌う 醜き蛙
雨は止み 輝く粒を 携えて
しめやかになん 紫陽花は咲く
雨は止み 遠く御空に 虹が立つ
傘振り投げて その根掴むらん
窓開き 冷たい夜風に 雨香る
月を仰げば 蛙は歌う
この空を 涙で満たす 青蛙
消えぬ涙痕 頬膨らます
ことならば 沈むほど降れ 夕立よ
我が涙すら 分からぬほどに
・藤光憂美也
短歌
ふと見れば髪に付きたる水玉の未だ残りし何時ぞの雨か
ひねもすに五月雨の降る音すらも立てず寂しく泣く子の如く
余りにも微々たる雨が日は射せど身を震わせて宙を落ちけり
雨粒や降りたるほどに浮きし世の熱を冷ませよ心あるなら
五月雨の向こうの雲は灰色であれど雫は透き通りけり
濡れたりし白き乙女のペチュニアよ地に目をやるな顔を上げけれ
俳句
紫陽花や雨を啜りて膨らみし
五月雨や雀濡れたる瓦屋根
軒下や燕の雛の初雨か
病葉や水玉一つ空の色
梅雨宵や一つの星も見つからず
草の葉や貫き留めぬ梅雨の雨
葉雫や五月鏡に笑う君
黄金 六月号
読んで下さってありがとうございました。楽しんで頂けたでしょうか?まだまだ実力不足でもあり、これから力を付けていく三人であります。どうか応援のほうよろしくお願いします。
私たち三人は、黄金を通して、己の文学に対する感覚を研ぎ澄ませながら、なお読者の皆様にたのしんでもらうことができましたなら幸せの限りです。
感想や意見のほうがありましたなら、
ogon.literature@gmail.com
までお願いします。