その女異邦人にて、
その女異邦人にて、
コランダムのうち、色が赤じゃないのは不純物の違いらしいけど君の瞳にはクロムはないってことかな?蓮の花のつぼみの様に瞳を変化させて怒る事も良くあるけど、正面から僕が眺めたときには六条の光が光線を発して生じるよね。アステリズム、星彩効果とか偉い人は言うけど君の白く光る筋は僕の黒雲の様な瞳には眩しすぎる。
サファイアの瞳。初めて見た時から忘れない。僕の引き出しに入っていた青いビー玉を見詰めては君の瞳を子供の頃から思い出していた。
「坂口!飯食いに行こうぜ!学食!学食!」
僕がぼーとした後あくびをしていると数人の友達が寄ってきて僕の袖を引っ張った。僕は頭がのぼせたまま歩いて学食に入った。
「ねぇ、見てよ!すっごい美人がいるわ!金髪よ!ハーフかしら?お人形さんみたい!」
僕の数人の友達の一人がそう言って指を指した。
僕はその先をなんとなしに見た。
身長が高くスレンダーな肌の白い女の子は囲んでいる男共を退けてこっちに走って来た。
「トモヤぁああ!あいたかったわ!」
そう言ってその女の子は僕のみぞに拳をかました。僕はその打撃攻撃で口から粘ついた唾を吐いた。
その光景を見て数人の友達が騒ぎ出す。
「何々!坂口くんの知り合い?」
「こんなに可愛い子を知り合いにいたとは、許せん!絶交だ!」
その事に肌の白い女の子は綺麗な日本語で言った。
「トモヤは私の従兄弟よ!トモヤ!せっかくフランスから来てるんだから日本を案内しなさいよ!気がきかないわね!」
そう言うと肌の白い女の子は僕の耳をつねって歩き出した。
柔らかく光沢があり薄く伸ばせる事が得意でギリシャ・ローマ・エジプトまでもの古い人が愛し、木の葉を舞う風にその細くて今にも折れそうな、音色を奏でる幾千の閃光は太陽の輝きを受けてパチパチと拍手する。夜になるとしっとりとした君の汗とシャンプーを狙い、カーテンをめくって潜り込んできた盗人の風が君の黄金の髪の毛を捕まえたね。
あの時、君の恥ずかしく揺れたブロンドの髪を初めて見た時から忘れない。
「ねぇ!トモヤ!どうして空港に迎えに来てくれなかったの?私がこの大学に留学すること知っていたでしょ?」
僕はその後ろに座っている口のうるさい肌の白い女の子を乗せて、ママチャリをこいでいた。
「それに何よ!あの男共は!日本人の男はすぐに女の子に声をかけるわけ?明日から私のボディガードになってよね!」
翌日僕は肌の白い女の子の所為でとんでもない嫌がらせを受けた。可愛い女の子を横にいるとこんなに大変なのか…
「わははは!坂口くん!とんだ災難だね〜」
数人の友達の一人が俺の背中を叩いて言った。
「何が、鬼のボディガードだ!羨ましいぞ!チクショー!」
「同じ家に住んでるだって?マジふざけんな!」
最後に肌の白い女の子は言う。
「トモヤ!明日って夏祭りなんでしょ?一緒に行くわよ!」
白い大理石がきめ細かく蝋を垂らしてその腕を飾る。でも羊のミルクのように柔和で優しい体温でその熱で硬い鉄も溶かす君。でも時にはオーロラを創り上げる雪景色の中で生まれた雪の結晶のようだ。1μmに満たない君の変化し続ける極小の彫刻。そして二度と見る事のないその息を飲むほどの白い肌。あの暑い空と大地が溶解した夏に見た氷の皮膚を持った君を忘れなれない。
「明日!トモヤと夏祭り!スッゴい楽みー」
肌の白い女の子はそう言いながら赤く蓮の絵が描かれた着物を試着していた。
「そうだトモヤに見てもらおう」
そう言って肌の白い女の子は階段を上がりトモヤのいる部屋へと行った。
何やらトモヤの部屋から声が聞こえてきた。トモヤは電話をしているらしかった。白い肌の女の子は声をかけ様とするが…辞めた。
白い肌の女の子は小さい声で言った。
「日本人の方が好みですって…」
白い肌の女の子は自分の部屋へと戻った。
翌日、数人の友達が言った。
「なぁ坂口!今日なんで!あの子来てないんだよ!」
僕は知らないよと答えた。
大学の授業が終わって数人の友達と夏祭りの会場へと向かった。会場にあいつもいるだろと思いながら。会場に着くと僕は待ち合わせ場所に立って携帯を弄っていると「おい!坂口!見ろよ!お前の従姉妹!イメチェンしてるぞ!」
僕はそう言われて振り返った。
赤い蓮の着物を着た肌の白い女の子が照れくさそうに立っているが、僕は絶句した。
ブロンドの髪の毛を黒く染めサファイアの様に黒く青い目に黒いコンタクトレンズをはめ込んでいた。
「これは、これで可愛いじゃんか!な?坂口?」
その友達の言葉を無視して僕は白い肌の女の子の手を取って走り出していた。
「いきなりどうしたの?トモヤ?痛い!もっと優しく掴んでよ!」
僕はそう言われても一心不乱に会場の裏の林のある公園へと向かっていた。青いベンチと黄色い錆びたジャングルジムのある場所に到着して僕は白い肌の女の子から腕を離した。
僕と女の子は息を荒くして吐いた。
「トモヤ?もしかして怒ってるの?」
「だって!トモヤは髪の毛の黒い、目も黒いトモヤと同じ日本人が好きなんでしょ?私みたいな金髪のハーフは好みじゃないんでしょ!」
君はオオカミ?それともお腹を減らしたライオン?背が小さい頃から初めてあった時から君は可愛いヤイバを僕に向けて威嚇したね。覚えてる?小さな怪獣は背中にあるジッパーをおろすとコテンと転んで天使が羽根を見せて頬を染めて笑ったね。君は本当はオオカミでもなくてライオンでもなくて優しい子羊。嫉妬深い子羊。泣き虫の子羊なんだね。僕は知ってるよ。ただそれに気付くのはちょっぴり時間がかかったけどね。
宝石の様に輝くサファイアの瞳、過去、現在、全ての王様が愛した金色の髪、雪の結晶で彫刻された白くて美しい肌。そして君の人柄。僕は初めて君と出会った時から君に虜なんだよ。
「そうなんだ…私もトモヤの事が好きよ」
赤い蓮の着物を着た女の子は僕に優しく唇をつけた。
「電話の会話、私の勘違いだったわけね。無駄に髪を染めてもったいないわ」
僕はその白い肌の女の子の手を握った。彼女は恥ずかしそうにして握り返した。
「ねぇ、もう少し此処にいない?早く花火が上がったらいいなぁ私ね、花火が好きなんだ」
僕はゆっくり頷いた。子供の頃に出会って初めて見た、彼女の楽しそうな顔は今も昔も変わらないでそこにあった。
その女異邦人にて、