考察:後日談
三題話
お題
「入る」
「後日談」
「最初から存在しなかったかのように消える」
後日談、なんて語られてもそんなものは本編が終わった後のオマケみたいなもので、いや、オマケですらなくてただの贅肉でしかないように、僕は思う。
だってシリアスでシニカルな物語にコミカルな後日談は、台無しどころかなんだこのくそと本を投げ出したくなってしまい感動も感激も興奮も立ち枯れて最初から存在しなかったかのように消え去ってしまうのだから。
ハッピーエンドなんざくそくらえ。
主人公がバッドエンドでもいいじゃないか。
おっと、話が逸れたな。
つまり何が言いたいのかというと、後日談なんて物語のオチを捏造する時間があるのなら次の作品をさっさと書きやがれコノヤロー、ということだ。
物語が完結した後のことはどうでもいいんだよ。話が終わったら退場するのが当たり前なんだよ。
次巻への繋ぎだって? そんなものは次巻の冒頭に書けよ。
そもそも次も出せることが作品を書いてる時点でわかるなんて自信過剰だな。世の中売れないものは打ち切られて消えてゆくんだよ。だから末尾に『次巻への繋ぎ』なんていらねぇんだよ。
そんなものがあるから、新刊を律儀に何年も待つバカが出てくるんだろうが。
毎回簡潔に完結。次巻を期待させる引きなんて紙の無駄。そんなものを書くくらいなら本編を充実させやがれ。
おっと、また話が逸れたな。
そういえば作者は物語を書き始める前からその結末がわかってるんだよな。プロットやらなんやら。
やっぱり出口がないと入る気になれないか。
形が定まっていないものは形にすることが出来ないのか。
物語の道筋は何本あってもいいし、結末だっていくつあってもいいはずだ。
登場人物は創作とはいえ、規定路線な言動をさせるのは酷だろう。
ifの物語はいくつでも作れるじゃないか。
いやいや、それは小説でやることではないな。どうやってそれを表現するというのだろうか。
登場人物の選択に幅を持たせて、結末もそれに合わせて変化させて、かつ一冊の本にまとめる方法。
そんなことは不可能だ。
分冊すれば出来る。ただそれがはたして面白いのか、そしてそこまで読んでもらえるのかどうか、それは分からない。いや、そんな作品は売れないと思うけど。読むのが面倒だしな。よしんば読んだとして、結局どの結末も気になって全部買う羽目になるんだ。ぼったくり商法だろ、それは。
おっとおっと、またまた話が逸れたな。
後日談は本編とはまた違う新たな刺激を読者に与えるものだから読後感に影響を及ぼす、ということが言いたかったのですよ、僕は。
僕はそれだけを言って前を見た。
目の前では、作家を目指している友人が、口をぽかんと開けて動きを停止している。
僕の手元にはその友人が書いた小説がある。
つまり僕は読者として、感想を求められたのだった。
いや、感想になってなかったよな、これ。
…
そして後日談。
友人は僕に読ませてくれた小説をとある賞に応募したのだが、一次選考も突破することが出来なかったとさ。
ざまあみろ。
いい加減諦めろよ三十男。親も定年している頃だろ。いつまで無職を続ける気なんだ。
それにこんなひねくれた素人に感想を求めても参考にならねぇよ。もっとまともなやつに……いや、他に友達はいないかこいつには。
とりあえず一つだけ言いたい。
アルバイトくらいしろ!
考察:後日談