スノウドーム
誰かを好きになればなるほど、無性に腹が立つからね
夕食を終えた後、いつも通りベッドに転がる気分になれないまま座って、天井を眺めていた。
中一になって引っ越してきた新しい家は母のお気に入りだった。確か、ミツルのお母さんにも似たようなことを言っていたような気がする。
ミツルか、今私の心にどんより曇り空を作っている元凶の奴。
もう話さなくなって数年立つっていうのに、小学生の頃は、きっと一番の仲良しだったような気がする。
今は手の届かない、例えば背中が急にかゆくなってしまった時のように扱いにくい。
きっとミツルしか持っていないゲームを持っていて、それが楽しかったから。
母親同士が仲いいとか背の順で並んだ時に前後だったからとかその程度。
なんて自分で出した答えなのに、問いただしているんだから少し可笑しい
そうだ、高校生にでもなればしっかりするどころか
中途半端に世間を知ってしまって、持て余す時期なんだろうと
ミナもそうだ、3組のなんとかちゃんには彼氏がいるだの、5組のほにゃらら子には遠距離だの
そんな話ばかり、数年前の部活一色だった彼女は化粧も覚えて、いわゆる恋愛一色だった。
自分はどうなんだという話を振ったら、少しだけ驚いた顔をして、視線をちらっと泳がせた。
その時点で聞かなきゃ、よかったって後悔しておけばよかったくらいだった。私はため息をついた
携帯が震えて、ミナからの催促のメッセージが見えた
だから、今の私がミツルに彼女がいるかどうかとか好きな子がいるかどうかなんて
知るわけないじゃない。私は立ち上がって、携帯ではなく、机に飾ってあるスノウドームを手に取った。
中では一人の子供が上を見上げている様子で入っていた。これの片割れのような同じスノウドームをミツルが持っている。
これをもらって以来、すっかり話さなくなった、話せなくなった。
ミツルが私のことを「好き」だと言ったから。
どこでそうなったんだろう、私が今でもわからない感情をどうして、ミツルは先に分かってしまったんだろう。
ミツルはこのスノウドームには秘密があるよと言っていたけれど、これ以上秘密を増やしてほしくなかった。
未だに「返事」をしない私をミツルはどうして責めないんだろう。
スノウドーム