宝くじの秘密
態々随筆のタグをつけてまで書くということは
私の感じたもの哀しい気持ちをよっぽど多くの人に知って欲しいというエゴの表れであろう
必ず当たる宝くじの秘密
知りたいですか
ありがとう
おばあちゃん、
先日のことだった
遠く離れた自分の故郷から、今わたしのいるところへ母が大荷物をさげて訪ねてきた。
美しい母は年齢など関係ないと言わんばかりに少しよれのできた顔をめいいっぱいクチャクチャにしながら笑顔で抱きしめてくれた。
とっくに彼女が帰国した今も思い出すことがある。
母がこちらに来たときにおもわず力が抜けて堪えていたもの
それが欠壊した水溜めのように、または連続して溢れていく雫のように頬を伝っていった
異国で一人寂しかった心地になっていたわたしに
母が自分がこちらに来る前に祖母から叱られのだたとこぼした
普通の封筒を開けたそれだけの事
なんでも無いことねと笑ってみてもそれが私あての封筒だなんて思わなかったから
変に恥ずかしいような気分になってしまって
しかしある期日まで開けるなとしたためられた旨の注意書きからして
祖母はなにか大切なことをいいたいのだと思った
大きく曲がり、うねり、決して綺麗とは言えない字
祖母は手の神経を侵されていた
必死になって書いてくれたのだろう
約束は守れそうになく
ホチキス留めの外れた茶封筒の中身を開けてしまった
わたしの愛称
わたしの近況
わたしのいる国のこと
わたしの勉強のこと
わたしのお小遣いのこと
わたしのことばっかり、
それなのに
おばあちゃん、手が震えて書けなくなっちゃいました
必ず当たる宝くじというのは
祖母がこっそり貯めて寄越してくれたお小遣いだった
月末に開けるように言われたのは
きっとそのためな気がして
きちんと包まれた五枚の紙幣に
梅雨の雨粒のような涙が
ぽたぽた、ぼろぼろとこぼれた
わたしの頭の中にいる子供は、まだまだ泣き虫だ
冬また帰ってくるでしょう、と締めくくられたコピー用紙の手紙を封筒と一緒に胸に抱いて
次いつ逢えるか知れない祖母に電話をかけた
宝くじ、大事にするね
宝くじの秘密
おばあちゃんの優しい思い出です