アルビノダンス

アルビノダンス

らっきょ太郎

アルビノダンス

「アルビノ星から来ました。留学生のマチさんです皆さん、優しくしてあげて下さいね」
レンズの厚い女の教員は教壇の前に立ち、顔が雪の様に白く頭から一本の触覚が生えたとても可愛い少女を紹介して言った。
「地球に来るのは初めてです。マチですよろしくお願いします…」
白髪、白い眉毛を揺らしてお辞儀する。
教室にいる男たちは一斉に声をあげた。それはそうだ美少女がクラスに来たのだ、気分は良いに決まっている。そしてこの中でも一番、少女マチに熱い視線を送っていた少年がいた。小畑君だ。帰宅部で真面目が取り柄の少年であった。その小畑君の隣の席は運が良く空いていたので留学生のマチはイスを引いて座った。心臓がバクバクと鼓動する。あぁこれが一目惚れと言うのか?そう思った、彼女が隣にいるというだけで身体中の神経が敏感になっている。
担任の授業が終わる鐘が鳴り終わると。マチの座る席にクラスの生徒が餌をあげた鳩の様に集まってきた。
「どうして地球を留学生先に選んだの?」
「アルビノ星人は皆んな美人って聞いてたけど本当なんだね」
「どんな星なの?」
「メルアド教えて!」
マチのすぐ側にいる、小畑君を席から追い上げて質問を連発するが、マチはどの生徒の問いに対しても。「別に…」「ううん…」「いや…」と、短い言葉を話すだけで恥ずかしくて照れていると言うよりも、どちらかと言うと余り誰とも会話をしたくない。そんな感じに見えた。
数日間、クラスの生徒はこの様に接していたがマチの様子に察したのであろう誰も少女の周りに集まろうとする生徒はいなくなっていた。
小畑君はこの時をジッとして待っていたのでスグにマチに声をかけた。
「マチさん、地球ってどうですか?」
「別に…」
「お弁当ってどこで買ってるの?」
「別に…」
「勉強とかついていけるの?」
「ううん…」
流石だ。流石、クラスの生徒を跳ね付けた程の会話の続かなさだ。しかし小畑君は諦めなかった。いやそれよりもマチが少しでも反応してくれので嬉しい気持ちになる方が強い。小畑君は学校が終わった時カバンを整理しているマチに向かって言った。
「マチさん、一緒に帰りませんか?」
「いや…」
マチは目を合わせずに言う。
「いいじゃないですか?途中まで歩きましょうよー」
「いや…」
マチは小さな声でそう言うと教室の出口に向かって早歩きで帰っていく。小畑君はすぐさま、そのマチの背中を追った。下駄箱で靴を履いて校舎をでる。マチはその校舎の空間を切ってグングンと進んで行くのでその中を埋める様にして小畑君も進んだ。
年季の入った門をくぐってマチの横に並んだ。小畑君はマチの顔を見て言った。
「マチさんここの駄菓子屋の苺の飴美味いんですよ!チョット寄って行きません?」
「いや…」
小畑君は強引にマチの腕を引っ張り学校から300m先程の駄菓子屋に入った。
「おばちゃん!この苺の飴を二つ下さい!」
「あいよ!」
そして購入した飴をマチに渡した。
「マチさん舐めてください」
「いや…」
「味見ですよ!味見!」
小畑君は強引であった。
棒のついた飴を袋を外してマチは舌を出してペロペロと舐め始める。そしてマチの口から「美味しい…」と言葉がコロリと転がった。
小畑君は思わず嬉しくなり「でしょ!僕のお気に入りなんです!」と満面の笑みで言う。
飴を舐め終わった後、小畑君はマチに手を振ってバイバイと言った。
マチは白い一軒家のドアを開けて入った。
綺麗な声がマチに対して声を発した。
「マチ、お帰りなさい」
「ママ、ただいま」
髪の長いそして白い美しい女性が出迎えた。そして話す。
「それで今日はカッコいい男の子はいたの?」
その言葉にマチはブスっとして言う。
「やめてよねママ!私は誰にも好きにならないって決めてるんだから」
ママは優しく微笑んで言う。
「それは無理ね、私たちアー星人は美人だらけですもの、黙っていても寄ってくるわ。まぁ地球人はアルビノ星人とか言ってるけど」
「それでも私は…」
「あなたの欲求は我慢出来なくなる時がいつか必ず来る、どんなに我慢しててもね。それが私たちの種を残す為の手段だから」
「うるさい!」
マチはそう言って階段を上がり自分の部屋に去って行った。
翌日。マチは体育でサッカーをやっていたが、どうやら地球の日射はアルビノ星人からすると大変キツイらしく、息をはぁはぁとしてダルそうに動いていた。
「地球の太陽は…なんと、暑い…」
その光景を別の場所でサッカーをやっていた小畑君はこの様な状態のマチに気付いて駆け寄ってきた。
「おい!マチ!大丈夫か?」
「大丈夫…」
「大丈夫じゃないだろ!保健室に行くぞ!」
そう叫ぶと小畑君はマチの華奢な身体を持ち上げおんぶする。もちろん周りにいる生徒たちはその小畑君に向かって茶化した。
「カッコいいねー小畑!」
「もう、さっさと告れよ!」
小畑君は白い歯をニカっと見せて「うっせー」と言った。
おんぶされたマチはもうろうとした意識の中、保健室のベッドに寝かされていた。
もう、日は随分と過ぎ去りオレンジ色の光が保健室のカーテンから漏れ始めていた。マチは目を覚ました。
「よう!気付いたか」
あぁ、こいつが私をここまで運んだのか。
「もう私に関わらないで…」
「どうして?」
「それは…」
思っている言葉が言えない。マチは目線を花瓶の方に向けた。カマキリがいた。昆虫のカマキリだ。小畑君も気付いたらしい声を発した。
「カマキリだな」
「何それ?」
「肉食の虫だよ、あー聞いたことがあるけど、メスのカマキリがオスのカマキリを食べるってよ」
「…」
マチは無言でそのカマキリを見つめた。

翌日もその次の日も、その次の、次の日も小畑君はマチに干渉し続けた。正直マチはウンザリであったがどう、断って逃げてもその少年はマチの心を揺さぶろうとした。
「はぁ…」
触覚がピクリと動く。
「どうやら良い男の子が見つかったらしいわね」
ママは嬉しそうに笑って言う。
「そんなんじゃないわ」
「そうかしらね?」ママ意味深の言葉を述べた。
翌朝、マチはいつも通り学校を向かって駄菓子屋の目の前を歩いている時であった。黒いワンボックスカーが猛スピードで止まり勢いよくドアが開く、そして突如として覆面をした男がマチを車内に連れ込もうとした。凄い力であった。
「アルビノ星人!お前はコレクターに高い値段で売れるんだ!悪いがとっとと車に入れ」
マチは恐怖に声が出なかった。
と、その時であった。
「うぉおおおりゃあああ!!」
勇ましい声で覆面をした男に飛び蹴りをかます少年がいた。小畑君である。その一撃をお見舞いしたが覆面の男は、少し後退りをしただけであった。「何だてメェえええ」と怒鳴り、目標を小畑君に変えたそしてボコボコに殴り始めた。どうやらその光景に周りの大人が気付いたらしく「何をしているんだ!」と、助けが入った。
黒いワンボックスカーはその声に驚いたらしく、慌てて車に乗り込み逃げて行った。
震えているマチに腫れた顔で小畑君は言った。
「怪我はない?マチさん?」
その言葉と優しく微笑んでいる小畑君を見てマチの何かが変化し始めていた。
この事があった後、最近、小畑君とマチは進展をして行っていた。
「小畑君、今日はその、一緒に帰らない?」
「いいけど、どうして?」
「だって、またあの黒いワンボックスカーに襲われそうじゃない…」
「はいはい、お供しますよマチさん」
「うん…」
学校の帰り道に小畑君と話すのが楽しい。そしてお別れの挨拶は辛くなっている。
「また明日ね、マチさん」
「小畑君、さよなら…」
白い一軒家のドアを開く。
「お帰りなさいマチ」
「ただいま、ママ」
触覚がピクピクと動く。
「言った通りでしょ?そろそろ時間の問題ね」
「私は絶対にそんなことはしない!」
「無理なものは無理よ」ママはそう言って夕飯を作り始めた。

「マチさん、今から放課後、屋上に来てくれないか?」
小畑君は真剣な表情で言った。
「うん…」私は断われなかった。小さく頷いた。
マチは小畑君に手を引かれて屋上へと上がって行った。そして気持ちの良い風が吹く中で小畑君は言った。
「マチさん!最初にあなたを見た時から好きでした」
小畑君のその声に胸が高鳴る。
「私も好き…」
そう私が言った後、小畑君は私の身体を抱きしめた。そして言う。
「マチさん、キスして良いかな?」
「キスって何?」
「唇同士をお互いにくっつけるんだよ」
「地球人の愛の示し方…意味わかんない」
小畑君はマチの唇に優しくキスをした。そうして赤い顔で小畑君は話す。
「ははは、やっぱ恥ずかしいな」
マチの身体も火照っていた。あぁこれが恋なのか。抑えられない感情が溢れ出てきていた。抑え様としても抑えられない。本能の欲求。マチが一番、恐れていた物である。彼の顔と私の情欲の心もはや決壊したダムであった。
触覚が大きく動いた。
「小畑君…私も小畑君の事が大好きだよ…」
「マチさん…」
「だからね、私、もう我慢できない」
そう言ってマチは制服の上をスルスルと脱ぎ始めていた。
「な!マチさん!」
「見ていて、私の全てを」
マチは全ての衣服を取り除いた。しかしをの裸体の姿を見ても卑猥な気持ちには小畑君はなれなかった、白い肌の少女の光景がまるで絵画に見えたのか、それとも地球人ではない別の種だからそう感じなかったのかは分からないが、神秘的な雰囲気に包まれていた。
少女はその乳房を揺らして少年の前で踊り始めていた。今まで見た事のない不思議なリズムとテンポと振る舞いであった。
小畑君はまるで何かに取り憑かれかの様にボンヤリとした目に変わっていった。目は開いているが意識の無いそんな感じだ。
マチは小畑君の前に立って言った。
「ゴメンね、ゴメンね」
と、そう言った時であった。ガバァアっと少女の頭に付いている触覚が大きく膨らみ巨大な口を広げ、牙を向き少年の身体を飲み込んだ。
バリバリッ!バリバリバキッ
身体中に幸福と絶頂の電気が流れる。
そして少年の震える影が屋上の床に映った。

マチは涙を流して家へと帰った。
「私!私!大好きな人を食べちゃったよ…だから、誰とも仲良くしない様にしたのに!どうして私は人を好きになってしまったの?どうして私は大好きな人を食べちゃったの?小畑君、ゴメンね…ゴメンね…、私が地球人に生まれていたら、こんな…」
マチは大声で泣いて涙を流した。
そのマチを見てママは言う。
「仕方ないじゃない、私たちアー星人は種を残す為にオスを体内に吸収しないと子供が作れないんだから、しかも私たちはメスしか生まれない。だからこうやって別の星のオスを捕獲して食べているんでしょ。その為に容姿は皆んな優れているし脳を麻痺させる波長の色を出せる為に全身が白いんだしね。まぁ、元気な子を産んでくれ」
マチはせめて人を愛する自我が消えれば良かったのにと思った。そして昔、小畑君がカマキリっていう昆虫の話をしていた事を思い出した。
メスがオスを食べるんだって…

アルビノダンス

アルビノダンス

少女は誰とも関わろうとしなかった。何故なら辛い結果にしかならない事を知っていたから…

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  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-14

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