時を越える推理  第一章

明治が、始まってすぐに二つの法律が世の中に追加された。 
一つは、「150年時効法」。 
この法律の概要は、読んで字が示すとおり150年間が時効の期限になるということ。 
すなわち、警察は、この150年間事件の捜査を新たな警部に引き継いでいき1世紀以上も事件の真相を追い続けるのだ。 
そして、この法律に連動してこの二つ目の法律が制定された。 
その名は、「子孫及び親類捜査権」だ。 
この法律は、被害者の遺族やその親類に代々警察を動かす権限、「捜査権」を引き継いでいくと言うもの。 
この法律は、年齢、性別、経歴に関わらず全てに対して平等を制定した政府は約束している。だが、明治以降、150年間代々引き継いでいく必要のある事件は殆ど、存在していなかった。仮にあったとしてもせいぜい一代で事件は解決している

そして、この法律改革を無駄だと考え、その信念を決して曲げない一人の男がいた。 
名は、千郷 輝元(せんごう てるもと)。
職は弁護士。年は27歳になったばかり。まだまだ若手の弁護士とも言える微妙な年代だ。いや、そろそろ終りを告げる年齢だろうか。 
職業から考えて、自分のこの意見を明治政府側に、伝えられないわけではない。法律の下で働き、法律の下で人助けをし、法律の下で給料をもらい、食べて行ける職業のなのだから。
だが、千郷には自信を持って反論できない理由があるのだ。
その原因の理由は、自身の性格から来ている。
自分の学校や母校の同級生にもよくいるだろう。
自分の意見がたとえ、正論であってもその意見に自信がもてない、また、自分の意見を周りの大勢の人に発表してもし間違っていたら・・・、と勝手に想像して発言するのを恥ずかしがってしまうタイプ。
千郷の性格はこの例に見事に当てはまる。
そのため、自分の友人に色々と愚痴っている。何とも情けない事だ。
今日も、自分が十代の頃からの旧友と待ち合わせている。
場所は、いつも待ち合わせ場所としている汽車駅の近くの喫茶店だ。
「おう、輝、遅かったな。七分遅れだぞ。こっちはお前のしょうもない愚痴に付き合ってやってるやってるのによ。」
「わるかった、わるかった。少し仕事が遅れちまってよ。まあしょうもないって言うなこれでも俺は、熱心に考えてるんだ。」
彼の名は、野村谷 公(のむらだに こう)。先にも述べたように、千郷とは十年以上の付き合いでよくこの場所で談話しているのだ。性格は、千郷とは正反対で自分がこうと思ったらすぐに実行するタイプ。これまたクラスに一人はいそうな人柄。しかし、偶に、独断専行な振る舞いをしてしまうこともしばしば。そこは、千郷が補っているため何とか二人の天秤は吊り合っている。 
「ふん、そんなことは知っている。現に、俺もお前との同志だ。いつか究極の欠点を見つけ出して明治政府をとっちめてやろうな。」
(ああ、やっぱ公は頼もしい。持つべきものはやはり友だな。) 
千郷は、つくづくそう思った。
今日は、三十分くらい話をした。この後のまさかの出来事には、二人は知る良しも無い・・・。

時を越える推理  第一章

時を越える推理  第一章

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-04

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