三題噺「ミックス」「デッキ」「ファイナル」

「――勇者よ、勇者よ、起きなさい――」
 梅森かおるが目を開けるとそこには、美しいお姫様が立っていた――

 と思いきや、マッチョでイカついおっさんがメイド服姿で立っていた。
「おお、勇者よめざめぎゃ、ぶほっ、ちょ、ちょっとタンみゃぁあ!」

 ちゃ~ららららら~

 おっさんメイドを倒した。
 経験値を5手に入れた。
 かおるの人生レベルが1上がった。
 軽いトラウマを手に入れた。
 おっさんメイド特製ブリムを手に入れた。

 おっさんメイドは粒子となって消えてしまった。
「……なんだったの、今の?」
 かおるは手に入れたブリムで拳の血を拭うと周りを見渡した。
 古い石造りの部屋、足元には大きな魔法陣、そして――
「うぷっ」
 カビ臭さとワキガ臭がミックスされたような酷い匂い。
 かおるはろくに探索もできないまま急いで部屋の扉から飛び出した。

「貴様、止まっぶぇええ!」

 ちゃ~ららららら~

「何者だ、怪しい奴むげぇばぁああ!」

 ちゃ~ららららら~

「そこの人、私を豚と罵って…って待って~!」

…………

 かおるは石造りの建物を駆け抜けた。
 途中でデッキブラシと木のバケツを装備して、次々と現れるビキニアーマー着用のおっさん騎士をなぎ倒した。
 そして、たどり着いた先には――

「いやぁあああ!!」
「ふはは、よく来たな侵入者ゆぅぎゃぁああ!」

 脂ぎった贅肉だらけのおっさん裸族がいた。
 最後に「喰らえ、わしの…必殺…ふぁ、ふぁいなるぅう……」と呟いていたがかおるの悲鳴にかき消された。

 ちゃ~ららららら~

 おっさんキングを倒した。
 経験値を30手に入れた。
 かおるの人生レベルが10上がった。
 おっさん恐怖症を手に入れた。
 おっさんキングの呪いを手に入れた。

 その時、部屋全体に声が響いた。
 WARNING! おっさんキングの呪いの効果により進化を開始します。
 WARNING! おっさんキングの呪いの効果により進化を開始します。
 WARNING! おっさんキングの呪いの効果により進化を開始します。
 WARNING! おっさんキングの呪いの効果により進化を開始します。
 WARNING! おっさんキングの呪いの効果により進化を開始します。

「へ? ちょ、ちょっと待ってよ!」

 進化キャンセルできません。
 進化キャンセルできません。
 進化キャンセルできません。
 進化キャンセルできません。
 進化キャンセルできません。
 進化キャンセルできません。
 進化キャンセルできません――



――5分後

 かおるは意識を失って倒れている。
 辺りにファンファーレが流れた。

 ちゃ~ららららら~

 おめでとうございます。
 かおるは女子校生からおっさんキングに進化しました。
 おめでとうございます。
 おめでとうございます。
 おめでとうございます――

 F I N

三題噺「ミックス」「デッキ」「ファイナル」

三題噺「ミックス」「デッキ」「ファイナル」

「――勇者よ、勇者よ、起きなさい――」 梅森かおるが目を開けるとそこには、美しいお姫様が立っていた―― と思いきや、マッチョでイカついおっさんがメイド服姿で立っていた。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-10

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