dear....

dear....

昔々のとある君へ


「会いたくて、会いたくて君の名前を叫ぶから、いつか答えてね。」

昔々おとぎ話に恋した女の子。
彼女の願いはたった一つ。
たった一人の記憶に残りたい。
「あなた」の記憶に残りたい。

曖昧なディテールじゃなくて。
その時の空気も何もかも覚えている人に。
消えていく薄れていく。
そんな記憶になど興味はない。

「貴方と逢瀬を交わしましょう。」

それ以上はいらない。
衝撃的な恋に落ちるまで快楽に溺れていたいの。
…なんてね?

「昔々、貴方が恋した女の子はずたずたになったよ、ねぇ何時になったら迎えに来てくれる?」

いつか、君が好きって言えるといいな。
言えたらいいなって思ってるよ。
…でも言えないから、幸せになって。
なんて、小さな願いをかける。

今でも残る記憶の片隅に君はいるのに
貴方の記憶には私は居ないんだろう。
今でも貴方の声が思い出せるのに
貴方の中に貴方は居ないんだろう。

いくら会いたくたってもう会えないのだろう。
会えたらなんて言おう。
待っていたよ?
長かったね?
今度こそ貴方と幸せになりたい?

多分困った顔で笑うんだろうね。
夕日に照らされて自転車を引きながら
「バカだからわかんねーやっ」って。

そしたらきっと「そっかぁ、バカだもんねっ」っていうんだろうな。
「バカって言うなよ、バーカ」って言うから
何も言えなくて泣くんだろう。
で、慌てられるんだろう。

貸してくれたマフラーも
ちょっと前を行く癖に気になって
振り向いちゃうとこも
不器用な癖に鞄持ってくれるとこも
最後まで一緒の高校行こうって言わないでいてくれたことも

まだ、忘れられません。
貴方が好きでした。

本で叩かれたことも
図書館で二人で本を読んだことも
それが貴方の興味のない本だったことも

図書委員一緒になってお互い嫌がったね
最後は委員そっちのけで鬼ごっこしたね
筆箱取り合ったね。
取り返すって理由で追いかけながら、私はこの人が好きだって途中で気づいたんだ。
カブトムシのキーホルダー意味が分からなかったけど別れてからも捨てられなかった。
貴方からもらった赤鉛筆、多分たまたま有ったからくれただけだけど結局使えないままだった。

部活をしながら貴方の部活をしている姿を眺めながらバカだなぁって思いながら気になってしょうがなかったよ。
怒られてることより貴方に見られてしまったことの方が恥ずかしかったりした。

テストの日、理科と社会だけ猛勉強したの。
どうしても勝ちたくて。
「勝った方が好きな人教える。」なんて約束の仕方貴方らしくて無茶苦茶だなぁなんて思うよ。

付き合ってる間もっと話したらよかった。
恥ずかしがってないで修学旅行も一緒に行けばよかった。
ネックレス、嬉しかったよ?
…なんであのデザインだったのか教えて欲しいけどね!!
なんて、もう軽口も叩けないね。
遠くなっちゃったなぁ。

一番好きだったのは貴方の横顔を眺めてる時。暫く眺めてたら目が合うあの瞬間。
「なんでもないよ、なんか用だった?」なんて顔をして目をそらすと「見てませんでしたけど?」って顔して貴方が目をそらすあの時間が私は一番、幸せでした。

初めて出会ったのは図書館だったね。
貴方に告白したのは廊下だっけ?
2度目の告白はそうだ、正門前で。
3度目の告白は階段横の廊下だったね。
…何回やってるんだか笑

5年後、貴方にも私にも恋人が居なければって約束、守れなくてごめんなさい。
私も貴方も変わってしまったって気がついちゃった。
私が好きだった貴方はもうどこにも居なかったんだよね。
何処に行ったんだろう。返してよ。

9歳で出会って
12歳で繋いで
14歳で付き合って
15歳で別れて
18歳で再会して
19歳で弄んで
20歳で決別した

貴方のこと。多分忘れない。

15歳の私が10年後の私に
「まだ彼のことが好きですか?」って聞いていたよ。
今の私は彼女に「あの頃の彼のことはね。」としか答えてあげられなかった。
ねぇ、貴女はなんて答えますか?

まだ彼のことが好きですか?

夜が明けたので寝ます。
届かない手紙を残して。
あの頃の私と彼にしか伝わらない方法で締めるから、もし見つけたなら返信がほしいな。

ばいばい。ばーか(笑)

dear....

そして、10年後の私へ

dear....

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-10

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted