似た者同士

くらげみん

例えば、晴れた雪の日に目を思いっきり瞑って開いたとき、あまりの輝きに目が焼かれてしばらく動けなくなる。例えば、新月の夜にいきなり電気を消して、真っ暗闇のその中に、しばらくするとぼんやりと、次第にはっきりと物の輪郭が見えたりする。僕の好きなものは、そういったものに似ているんだ、と彼は言う。意味がわからなくて訝しげな顔をしているわたしに、わからなくていいんだよと笑う。

今日の天気は雨だから、グレーのパーカーを着なければね、と彼は言う。そんなこと言ったら、梅雨なんて毎日同じようなグレーのパーカーになってしまうじゃない、とわたしは言う。それでもいいんだよ、だって雨だものと彼は笑う。そんなんじゃちょっと格好悪いよ、わたしが選ぶから雨の日でも違う服を着てよ、とわたしが言うと、目を細めて笑いながら、ありがとうと言う。

部屋で彼に何を読んでいるの?と聞くと、幼馴染が殺されてしまって犯人を捜すサスペンスなんだけど、本当は犯人は主人公っていう話だよ、と彼は言う。どうしてもう結末を知っているの?と聞けば、後ろから読んだからね、と笑って答える。そんなの、本を読む楽しみが無くなってしまうじゃないとわたしが言う。ニッコリと笑いながら、わかっても楽しいからいいんだ、と彼は言う。

わたしは彼の事を10分の1も、100分の1も分からない。きっと理解をしていないと思うけれど、友人によくあのちょっと変わった彼と付き合えるわね、なんて言われると、変わってなんかない、ユニークなだけなんだと言う。わたしは彼のユニークさを理解したつもりで居るだけなのに、少しも分からないはずなのに、それなのに彼の全てが好きだと思う。目玉焼きを必ずポン酢で食べていても、靴下の左右がバラバラで履いてしまっていても、それでもその全てが彼であり、その全てが愛おしいと思う。理由なんて分からない。

今日も雨が降っているね、と彼が言う。グレーのパーカーを取り出そうとする前に、今日はこれを着てくださいと、彼に似合うかと思って買ってきたシャツの入った袋を差し出すと、また目を細めてありがとう、と言う。その笑顔を見て、ああ好きだと感じる。

僕はね、と彼が呟くような声で言う。僕は、君のそういう口うるさい所とか、世話焼きな所が不思議で不思議でたまらないんだ。正直放っておけば良いじゃないかと思う事もあるよ。でも何故かそういう所が疎ましくは思わない、何故かそういう君が好きなんだよ、とまた笑う。なんだか目頭が熱くなった気がしたが知らぬふりをして、馬鹿じゃないとわたしが言う。馬鹿かもしれないね、でもそういうことなんだ、僕の好きなものって似てるんだ、と彼が言う。

それを聞いてわたしはやっと気がついた。わたしも彼と同じであったのか、理解できないと思っていたけれども、なんだ、大切な所は同じだったなと思うと、わたしも目を細めて笑いながら、そうだねと返事をした。

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  • 小説
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-09

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