本物の豚じゃない

 年中忙しい農業高校の豚舎とは言え、常に人の出入りがあるわけではない。
 強い雨の降る中、施錠された豚舎の中で在学生の少女はさびた机と椅子に収まり日付や利用した人数、代金、使用した豚の名前などを細かく帳簿に記していた。後ろからは豚の泣き叫ぶ声と、それに混じって男たちの激しい吐息が聞こえてくる。豚が暴れて傷つかぬよう、間に入る教師の声も聞こえる。
 豚舎の中で行われているのは人と豚との性交渉だ、金さえ払えばセックスしても病気や寄生虫の感染の心配のない、安全のために飼育された豚と好きなだけ交わることが出来る。今日の客は男だが、女が客のことも少なくない。
 実際、帳簿を付けている女学生も豚との性交渉を経験した人間だ。もっとも彼女の場合、それを豚舎担当の教諭に見つかり、それを弱みとしてこの秘密クラブの共犯にさせられているのだが。
「やっと終わったよ朱美(あけみ)。会計はもう済んでいるね?」
 背が高く体格の良い、繋ぎを来た男が朱美と呼ばれた女学生のいる入り口近くへ歩み寄りながら手を振る。
「はい、萩(はぎ)先生、お客さんは?」
 萩先生と呼ばれた男は朱美が背後をのぞき見ていると気がついて、反対側に親指を突き立てて反対側にある裏口を指さした。
「お前に顔を見られたくないと言うんでな、裏口から帰してやった。オレの前では平気なくせに、妙な羞恥心は残ってるんだな」
「萩先生がいなかったら暴れた豚を止められないじゃないですか」
 即答する朱美に、萩は鼻を鳴らす。
「農業高校の教師ってのはな、女生徒ならともかく、男子学生なら自力で止めるくらいの根性を期待するものなんだよ」
 力説する萩に、朱美は帳簿と手提げ金庫を手渡した。
「獣姦でお金を取ってる先生が言っても、説得力ありませんね」


 一週間ほど後、朱美は萩から呼び出しを受けた。農業科で畜産実習を行っている高校は家畜の世話が忙しく、時間が取りづらい。かといって学校の外で会うところを見とがめられるのは秘密クラブ以前に男子教師と女子生徒という関係上、非常にまずい。そこで朱美は萩からもらっている一時的に熱を上げる薬を飲み、保健室へ行き萩が見舞いに来るという形で連絡を取り合っている。
 朱美ははれぼったい顔を赤くして萩をにらむ。
「またですか、いい加減にしてくださいよ? あんまり乱用するとこれだって怪しまれます」
 抗議に対し、萩の顔は申し訳なさそうだ。
「そう言うな、近頃のケータイは高性能すぎてメールの安全性もアテに出来ん」
「先生、スマホって言わないと老けて見られますよ?」
 萩は表情を渋くし、そのまま乾いた声で笑う。
「手厳しいな朱美は。ともかく、今回は特別な仕事だ。相手はお前にも百万出すと言っている」
 朱美があきれて見せても、萩は話を続けた。
「まあ聞いてくれ、前来た牧(まき)ってヤツは覚えてるか」
 朱美は覚えていた。一年生で小柄な割に豚とセックスするときはやたら騒がしかった男だ。
「ええ、確か一年生の」
 回答に萩は満足そうに笑う。
「さすがクラブの会計士だ。で、ヤツの注文はまず女子と豚を交尾させ、そうして発情させた豚とセックスすることだそうだ」
 熱のある朱美の顔が更に赤みを帯び拳に力がこもる。気付いた萩は朱美に口を開かせまいとまくし立てた。
「待て、分かってる、だからこそ相手も百万なんて金額を提示してきたんだろう。あいにくこっちは人前で豚と交尾してくれなんて頼める相手はほとんどいないし、そもそも約束も秘密も守ってくれそうなのはお前だけなんだ。分かってくれ」
 頭を下げる萩に、朱美は低い声で答える。
「先生の取り分は?」
「は?」
「だから、わたしは百万円なんでしょう? 先生はいくらもらう約束なんです?」
 意味を理解し、萩の顔が鋭くなる。
「朱美、オレはお前の秘密を暴露してもいいんだぞ?」
「豚とやったことですか? いいですよ。その代わり、秘密クラブの帳簿の写しは警察に渡しますから」
 萩の動揺は明らかだった。彼は、まさか高校二年生の小娘にそこまでの知恵があると考えていなかった。自分が管理できると思っていた。予想を裏切られた怒りはごうごうと燃えさかっていたが、握られた弱みがあまりに強かったため彼は怒りを隠した。
「四百万だ」
「じゃあこうしましょう、わたしが四百万、先生が百万、それなら受けます。どうします?」
「いいだろう。その代わり当日は全裸でやれよ、スポンサーの注文だ」
 朱美は顔を上げ鼻を鳴らして萩の顔を見る。
「まだ条件を隠してたなんて、嫌らしい先生ね」
「……三日後、いつもの時間だ。あとこれを朝昼夕に飲んでおけ、擦り傷から感染症になりたくなければな」
 萩はカプセルに入った薬を朱美に渡し、不機嫌そうに保健室を出て行った。

 約束の日は雨が降っていた。豚舎は校舎や職員寮からかなり距離がある上に元々やかましいため、人間が多少声を上げたところで寮はおろか隣の牛舎にすら聞こえないのだが、雨が降っていると雨音が声をかき消してくれるため気が緩むのか客の金払いがよくなる。が、今回朱美は全裸で豚と余興をしなければならない。客の気分を良くするような雨など降って欲しくなかった。
 朱美は萩から渡された最後のカプセルを飲み、職員寮の死角になっているトラック用の出入り口から校内を通り豚舎へ向かう。
 豚舎へ入ると、すでに萩と牧とおぼしき背の低い客の姿があった。客はすでにかなり興奮しているらしく、耳が赤くなっている。
「遅いぞ朱美、スポンサーを待たせるな」
 高圧的な萩に、朱美が言葉を返す。
「まだ約束の時間になっていませんけど」
 朱美の目線を辿ると、時計の針はまだ十五分ほどの余裕を示している。話題を変えたいのか、萩が客に話を振る。
「紹介がまだでしたね、彼女が辻(つじ)朱美です。朱美、彼が今回のお客様、牧信義(のぶよし)くんだ。失礼の無いように」
 金次第でへこへこして。と、内心思いながら朱美は萩に会わせる形で簡単な挨拶を交わす。早く始めたいとのことだったので、朱美はさっさと物陰に入り服を脱ぎ始めた。
 着替えを見たい、なんて言われるのではと警戒していたが信義はそんなそぶりは見せなかった。さすが豚の余興に人間の女を使う変態、女性の裸体には大した興味はないのかと内心あきれながら全裸にタオル一枚という姿で朱美は二人の前に現れる。
「さすが豚とやった女だ、綺麗な体をしている」
 借り物のような不自然さのある信義の口ぶりに朱美は不快感を覚えるも、一時のことと腹を決め萩の用意した豚の前に進み出た。
「なんだ朱美さん、だんまりか」
「調子に乗らないで、牧信義。変態がみんな痴女だと思わないでくれない?」
 きっぱり言う朱美の態度に信義は面食らったようで口をつぐんでしまうが、そこへ萩がフォローへ入る。
「朱美、なんてこと言うんだ」
「こびを売るのは契約のウチに入ってないでしょ」
 生意気な態度に業を煮やし、萩は朱美を押し倒した。裸のままで、敷きわらの上に倒れ込む。
「いいか、ここにはオレたち三人しかいないんだ。何があってもわかりゃしないんだ、よく覚えておくんだな」
 男の、それも大人の力でねじ伏せられては朱美にはどうしようも出来ない。彼女は初めて恐怖を覚え、それからは大人しく豚を興奮させるため後ろへ回り、ねじれたペニスを指でほじくり出し舌で転がした。

「あっ、あっ」
 朱美は豚との前戯を終え、性交渉に入っていた。彼女の膣を豚のペニスが貫き、長い長い交尾を行っている。夢中になり、男二人に見られていることも忘れ、彼女は豚に腰を預けていた。
「いい、あったかい」
 豚にのしかかられ、幸せそうにする朱美。彼女が目をつぶり愉悦に浸っていることを確認し、男二人は素早く彼女の手足に重しを付け、おしりに注射針を突き刺した。
「え、何?」
 突然のことに、朱美は状況が呑み込めない。その間に萩は雄豚を引きはがし、信義は注射器の中身をすべて彼女の中に押し込んだ。
 手足が動かない、何かされた、危ない。そう感じたとき、すでに朱美は仰向けに寝かされ、両腕両股にも重りが付けられていた。
「何、何するのよ!」
 慌てふためく朱美に対して、萩は恐ろしい表情で答える。
「生意気なガキを豚に変えるんだよ」
 そう言って、萩は朱美の股ぐら――大動脈へ薬を注射した。
「痛っ、痛い! ちょっ、そんなところに何刺してるのよ!」
 騒ぐ朱美に、萩は声を低くして答える。
「わめくな、注射しただけだ。肉が厚いから血が噴き出したりはしない」
「まあまあ萩先生、もう少しやさしく説明してあげなきゃ彼女にはわかりませんよ」
 間に入ったのは信義だった。出資者である彼に頭の上がらない萩は大人しく引き下がり、敷きわらに横たわる朱美と信義の二人が対面する形になる。
「朱美さんと言ったね、ボクの言うことをよく聞いて欲しい。萩先生の言うとおり、キミは豚になるんだ」
 恐怖で心臓を高鳴らせながら、朱美が口を開く。
「それは、性奴隷って意味かしら?」
「いいや、言葉通り動物としての豚になるんだ。もっとも、今回使った薬は一日の間しか効き目がない不完全なものだ。なにせ兵隊の肉体改造をしてたら偶然出来た薬だからね、大した研究はされていないのさ」
「へえ、そうなの……うっ!」
 話の途中で、朱美の手の形が変わり始めた。指同士が根元からくっついてゆき、次第にひづめらしい形に変わっていく。
「すごい、目に見える速さで変わるなんて。下準備してあっただけのことはある」
 朱美は萩に与えられたカプセルのことを思い出した。おそらく、あれにも何か入っていたのだろう。などと考えているうちに、彼女の全身がざわめき始める。産毛が生え始めたのだ。
「ふぅん、白豚か。ふっふっふ、やっぱり話は後にしよう、ボクはキミの変化を楽しませてもらうよ。薬を手に入れるのにはだいぶ骨を折ったからね」
「ちょっと、やめてよ、豚になるとか冗談でしょ?」
「冗談かどうかは、自分の目で見てみるといい。萩先生、鏡は用意してあるんでしょうね?」
 萩の肯定の返事を聞き、朱美はこれが冗談ではないという実感がわき始めていた。
「ああっ、はあ……」
 口で息がしづらい、鼻での呼吸が荒くなる。朱美は自分の変形した鼻を見ることは出来なかったが、どんどん深くなる鼻の呼吸が豚への変化を実感させた。さらに……。
「い、痛い……外して、外してぇ!」
 骨格が変化したため、仰向けに寝ていることが困難になっていた。大の字に寝た状態で手足を固定されているが、豚の骨格がその姿勢を許さないのだ。
「萩先生、もういいでしょう」
「そうだな」
 重りから解放され、朱美はようやく自分の足で立つことが出来た。そして思い知らされた、自分は四つ足でなければ立つことが出来ないこと。そして、豊満とは言えないがこれとすぐ分かる胸部が平らになっていること。
「いやあああああ!」
 加えて手がないこと、バランスが取れないこと、手足が短くなっていることなどがいっぺんに朱美へ押し寄せ、軽いパニックを起こさせる。朱美は手足をばたつかせ、周囲にわらをまき散らす。
「叫ぶにはまだ早いぞ子豚ちゃん」
 信義の合図に、萩が鏡を持ち出す。映る姿を見て、朱美はすぐに目を背ける。だが、目にした豚そのものの姿を脳から消すことが出来ず涙しながら豚舎の隅へと逃げ込んだ。大きな耳、大きな鼻、ちらりと見えた複数の乳首……絶望する朱美に、信義が優しく触れる。
「この顔、この体、この尻尾……人間から豚に変わっていくのを眺めるのはとても刺激的だった! さあ、キミも一緒に刺激の渦に溶け込もうじゃないか!」
 言いながら、ふさぎ込む朱美の鼻めがけて香水を吹き付けた。
「ふごおおおお!?」
 強烈な匂いに、朱美が暴れ出す。頭をひっくり返されたような衝撃が彼女を襲っていたが、信義はかまわず香水を自身の体の隅々に振りかけていた。
「おお、ふおお……」
 鼻を押さえ、汗ばむ体を震えさせる朱美に近づき信義は彼女のあごに手を当てそっと、しかし大胆に口づけした。
「ふが、が……」
 朱美は抵抗しなかった、抵抗できなかった。胸がドキドキして、振り払おうなどとは微塵も思わなかった。
 口を離し、舌なめずりしながら信義が口元をつり上げる。
「オスのフェロモンと同じにおいだ、キミはもう発情した雌豚、オスを求めずにはいられない。さあおいで、ボクはキミが求めるオスそのものだ!」
 その後の朱美はただの喋る豚だった。裸になった信義のペニスに喜んでキスし、しゃぶり、受け入れる。叩かれても、尻の穴に指を入れられても、なすがままだった。
「なあ牧、いつまで続けるつもりだ?」
 燃え上がる朱美と信義に、萩が声をかける。すでに二時間以上が経過していた。
「ああ、先生は寝てていいですよ。ボクはまだまだ楽しむつもりですから」
「そうか、夜明けには済ませてくれよ? 流石に隠すのが難しくなる」
 そう言って、萩は豚舎の向かい側へ下がっていった。
「お待たせ子豚ちゃん、夜はこれから」
 信義は朱美の耳に口づけし、そのまま自分のペニスを舐めさせた。
 休憩を挟みながら、行為は何時間も続いた。元より豚の性交渉は数時間に及ぶ、豚となった朱美の体力は長時間の興奮状態に耐えた。しかし……。
「あああああ……あ、あ?」
 薬の効き目が切れかかっていた。朱美のひづめが割れ始め、人間の指に戻ろうとしている。朱美は大いに喜んだが、それを見て信義は彼女の膣に手を突っ込んだ。
「ぶひぃぃぃぃぃ!」
 彼女が甲高い叫びを上げると、割れ始めていたひづめが元の豚の形に戻ってしまった。なぜ、どうしてと朱美が戸惑うのを見て、信義が笑う。
「言い忘れてたけど、豚になってる間に妊娠して戻らなくなった例があるんだ。キミには大量の排卵誘発剤を飲ませてある。最初、豚と交尾したときすでに子宮には大量の精子があった。受精の準備は済んでる、あとは体が妊娠の準備を整えれば……ふふふ」
 語りながら、信義は朱美の中で腕をひねる。まだフェロモンの効いている彼女は快楽に沈み、更に高い鳴き声を上げる。
「この調子なら豚になるのも時間の問題だ。安心していい、ちゃんと飼ってあげるから……ん?」
 朱美の甲高い声が止み、目を潤ませながら信義の顔を見つめた。
「お、お願い、何でもするから……豚になんかしないで……え、エッチなら、本物の豚とすればいいじゃない。こんな偽物の豚なんて放って置いて……ね、信義さん、お願いよ」
 信義は自分のチンコが勃起するのを感じた。
「キミこそボクの求めていた愛する豚そのものだ」
 信義は固くなったそれを朱美の膣に深く突き入れ、それでも飽き足らないという風にもっともっとと深く強く突き入れた。朱美の体毛が濃くなる。
「ぶひぃぃぃ! やめて、お願い、わたしは……」
 言い終わらぬうちに、起きてきた萩が朱美の尻を鞭で叩いた。
「ぶひぃぃぃぃい!」
「お前は豚になるんだ。そうですよね、信義くん?」
「ええ、彼女に決めましたよ。さあ、メスのフェロモンを存分に出すんだ、ボクと豚の精液で妊娠して、豚になって一緒に暮らそう、朱美!」
「いや、いやぁぁ……ぶ、ぶひぃぃぃ!」


「萩先生、今回は不問としますが次からは勝手に業者を入れないでくださいよ」
「はい、分かっております」
 豚となった朱美は名義上母豚として養豚場へ出荷されることになった。農業高校の家畜は授業の一環として解体するのが常であるが、今回は多額の寄付金と引き替えに牧信義の元へ送り届けられる手はずとなった。
 なお、家畜は厳重に管理されており、一頭増えればすぐにばれてしまう。萩たちは頭数を合わせるため、一匹を殺し重機で掘った穴に埋めておいた。そして、細かい健康チェックで朱美と入れ替わったことが分かる前に、搬送してしまおうというわけだ。
「ところで萩先生、家出した辻という生徒だがね、警察が言うにどうも誘拐事件らしい。キミのところにも聞き込みが行くかもしれんが、くれぐれも余計なことを言わんように」
「承知していますよ、我が校のイメージを落とすわけにはいきませんからね」

本物の豚じゃない

本物の豚じゃない

獣姦を行う高校の秘密クラブで余興に豚とセックスする少女。しかし少女自身が徐々に豚に変えられて……。

  • 小説
  • 短編
  • ホラー
  • 成人向け
  • 強い性的表現
  • 強い反社会的表現
更新日
登録日
2016-06-09

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