たこ焼き

たこ焼き

たこ焼き

私はたこ焼きが好きだ。タコの切断された足の欠片が丸いホカホカとした物体の中に入ってるとは、夢があるとは思わないか?そうタコの弾力のある、少しコリコリとした感触にも夢があるのだ。私は噛み砕いた後たこ焼きを飲み込んで、また新たにたこ焼きを突っついた。
すると後ろから声がする。
「おい!三輪!何、委員の係の仕事を抜け出して、たこ焼きを食ってんだよ!」
あっ!隣の席の浅谷くんだ。そう言えば、私って今日、係の仕事だったけ?忘れてた。
そう思い出して私は大きく口を開けてたこ焼きを放り込んだ。
「おじさーん!このたこ焼きは最高に美味しいです!おじさんもタコみたいな顔をしてるからですか?あはははは!」
「無視してんじゃねーよ!」
浅谷くんは怒った口調で叫ぶ。タコが足りて無いんだろうか?
「今にも墨でも吐きそうな勢いだな!浅谷くん!」
「墨は吐かんが、担任の林先生には、お前の日頃の行いは吐いといてやったぜ!いーから、さっさと来い!」
浅谷くんは私の手を引っ張って言う。耳にタコが出来そうな程に最近、私に対して怒るのだ。
「林先生か…タコみたいな頭をしてる癖にムカつきますなぁ」
「三輪が仕事しないから顔を真っ赤にして怒ってたぞ!」
「ほぉー、まさにゆでダコ…」
バコ!
浅谷くんは私の黒いロングの髪の毛の上を叩いた。要するに頭だ。
「いったぁあ!酷いよ浅谷くん!」
「タコ殴りにされたいか!」
私は舌を出して言った。
「うまい!浅谷くん!まさに、たこ焼きの様に!」
「お前の頭の中にはタコが詰まってんのか?」
こうした後。
私と浅谷くんは学校の倉庫に着いていた。教室に荷物を運ぶ。文化祭の準備だ。
二人で運ぶには少々大変で六往復くらいはした。
「はぁはぁはぁ、浅谷くん、手のひらにタコができたよ」
「お前はタコから少しは離れろ!」
と、その瞬間、教室の扉がピシャリと閉まった。浅谷くんは開けようとするが、扉は何故か開かない。
「くそ、誰のイタズラだ…」
「浅谷くんと二人っきりの部屋…まさにタコ部屋…」
バコ!
浅谷くんは私のいい匂いのする頭を叩いた。
「少しくらいは真面目にしろよ」
「うっせーな、このタコが!私だって真面目に考える時だってあるわい!」
「なら言ってみろよ!その考えとやらを」
私はガソゴソと鞄から取り出す。そして浅谷くんに見せる。
「ほれ、見てみ?ここにタコ糸があるじゃろ?」
浅谷くんはそれを見てムカついている表情をするが、顔を変える。
「おい!そのタコ糸貸してみろ!」
そう言って私の手からタコ糸を奪い取る。そして教室にある紙と割り箸を使って一つの凧を造り上げた。
「タコ違い…」
「良いから黙ってろ!」
浅谷くんは白い紙の上にスラスラと文字を書いた。
【SOS】
「ベランダから飛ばすぞ」浅谷くんはそれを持ってベランダへと向かった。
「たこぉーく、飛べば良いね?」
「三輪?お前をぶっ飛ばすぞ?」
浅谷くんの凧を見て部活生の数人が教室の扉を開けてくれた。その後、私と浅谷くんはさっき私が食べていた場所のたこ焼きさんのお店の前に居た。
「たこ焼き!二人分、下さい!」
「はいよ!」
私の手にたこ焼きが入った容器を二つ渡す。そしてベンチに座る浅谷くんの元へと私は進み彼の隣に座った。
「三輪…本当にたこ焼きが好きだな」
「タコスとタコライスは好きじゃない」
浅谷くんは笑って言う。
「聞いてねぇよ」
私は突然に叫んだ!
「浅谷くん!空に火星人のタコが」
浅谷くんは一瞬、空を見上げた。
そこで私は浅谷くんの頬にチューをした。浅谷くんは驚いてベンチから落ちた。
「三輪!いきなり何してるんだよ」
「たこチュー、だけど?」私に恥ずかしがって、ゆでダコの様に顔が赤くなる浅谷くんの顔を見て愉快に笑った。

たこ焼き

たこ焼き

たこ焼きを愛する少女は嫌いになれない

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
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  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-06

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