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あの子の薬指に光る指輪がずっと羨ましかった。薬指を縛り上げて、鬱血するぐらいきつく縛り上げて、私を私だけのものじゃないと教えてくれる誰かに出会いたい。願いは過去形で吐き出されて、言葉の前でだけ正直になる。死だけだよ。あと、私にゆるされたイベントは。それだけ。あとは恐ろしく単調な日々しかない。体の中で確かにあの日のサメが膨れ上がっている。死だけ。死ぬだけ。それだけ。なのにまだ夢を見ている。歩き出すこともなく、立ち尽くしたまま、大嫌いな自分に孤独を着せて、顔もわからない王子様を待っている。ガラスの靴も毒りんごも魔法の長い三つ編みも夢の国にしか存在しないから、舞浜に住みたかった。おばさんになっていく現実を10代のメイクとファッションで抗おうとする。君が君を嫌いだってこと、もうみんな知ってるよ。


20160504

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-05

Copyrighted
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