過去と今

過去を変えたいと思う人って多いと思う。

小鳥の囀りが呼ぶ肌寒い朝。
太陽の光に照らされ、コナンは起き上がる。
眠そうに目を擦り、メガネを掛ける。
扉を開けると、いつもの景色。

「おはよう、コナン君。」

いつもの聞き慣れた声に、コナンも挨拶を交わす。
目の前のテーブルにはご飯、みそ汁、おかずがある。
コナンはその匂いに釣られて座り込み、食べ始めた。
そして、いつものように雑談を交わしながら、いつしか朝食を食べ終える。

コナンは歯磨きをし、いつもの服装に着替え、出かける準備をする。

「蘭姉ちゃん、博士の家に遊びに行ってくるね!」
「うん、気をつけてね、夕方には帰ってくるのよ。」
「うん!」

蘭は今日空手の練習らしく、学校の服装をしていた。
コナンは玄関を出て階段を降りていると、2階の探偵事務所から小五郎と誰かが話しているのが聞こえる。
どうやら依頼者がいるようだ。微かに「浮気」という言葉が耳に入った。浮気調査みたいだ。いつもの光景はもうコナンには慣れていた。
階段を駆け降り外に出ると、博士の家に向かった。

コナンは歩いて向かっていると、途中で帝丹高校の前を通った。

「(懐かしい…いつもここを通って高校に行ってたんだな…)」

過去を変えられるのなら、変えたいと思う。
ここの学校の奴らと喋って、高校の勉強をして、放課後にはサッカーをしたり、蘭と一緒に帰ったり、時には高校生探偵として難事件を解決したり…。
何気ない高校生活を楽しんでいた。

でも、あの事件で景色が変わった。黒ずくめの奴らの仕業で突然子供の姿になり、力が弱く、何もかもが幼児化していた。
周りから危害が及ばないように自分の正体を隠し、今は江戸川コナンと名乗っている。

その時コナンの目に、帝丹小学校という立て札が入った。

そう、ここが小さくなった今の俺の学校。
最初は嫌がっていたが、今はもう慣れている。

そして色んな人や事件やら、いっぱいあった。
時には命の危機を背負った事件や、各県警の警部、大阪のアイツにも…。
そして、憧れのロンドンに行けた。ビッグベンで蘭に告白もした。

そして……

「コナーン!」

目の前には元太、光彦、歩美の探偵団が走ってこちらに向かっている。

「コナン君、どこに行くの?」
「ああ…博士の家に遊びに行こうと思ってな。」
「ちょうど良かったですね、僕達も遊びに行こうと思ってたんですよ。」
「博士がケーキ買ってきてくれるんだって!」
「早く行こうぜ、コナン!」

コナンは歩美に手を引っ張られ、小走りで博士の家に向かう。
元太、光彦もコナンの後ろで追う。
コナンは少し驚くが、その後少し口が緩み微笑んだ。

「(こいつらにも出会うことはなかったかもしれないしな…。)」

だけどいつか元に戻って、蘭を迎えに行かなければならない。こいつらはたまにしか会えなくなるかもだが、会えないことはない。

…あの時…トロピカルランドに行ってなければ、事件に首を突っ込まなければ、薬に飲まされてなければ……今の俺はなかったのかもしれない。
ある意味良かったのかもしれない。色んな景色が見られたのだから──

過去と今

過去は今でもある。人生こそが旅。それぞれの経験。無駄はないと思う。

過去と今

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-28

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