くまかめついのべ。⑪

《①》
近所のスーパー、ドイツの田舎町、加工品、通販、モチーフ、特売。
人参を買う度に必ずレシートに刻まれる、にんじんさんポイント。
何処で買っても加工品でも、必ずそれが加算されていって。
「累計三十二万ポイント」
意味も価値も使用方法も、今のところ誰も知らない。

《②》
「角砂糖二つ、ガムシロ半分」
躊躇いのない選択。
いや、まだだ。
「それに、ミルク味のチロリンチョコを三つ」
なんとたまげた。
僕のコーヒーの好みを知っているのは、間違いなく別れた彼だけなのだ。
「何故、幼女に」
紆余曲折ありまして、と、幼女はブラックを一口。

《③》
遠くの島から流れ着いたヤシの実。
子供たちが作った砂のお城。
幾度となく満ち引きを繰り返す海。
ああ、なんと趣のある光景かな。
「あ」
眼前に迫る強固なヤシの実。
城の建造の為、掘られた穴。
もうすぐ満ち潮。
ああ、どうか意識はなくしませんようゴツンッ

《④》
地球上のあらゆる生物を根刮ぎ捕まえて、親兄弟も友達も捕まえていった宇宙人のロボット。
「……」
彼らは今日も、取りこぼしがないか見回りをする。
彼らは今日も、何故か目の前のすぐ近くの僕だけを無視して、見回りをする。

《⑤》
「普通に考えりゃカラスは黒い。だが、俺が白って言ったら白なんだよ」
古臭い体育会系な教師、先輩。
ヤクザやら暴力団やらの親分に憧れてるんだろうな。
「はいはい」
真っ黒なカラスの群れが一瞬で真っ白に。
神様の気紛れが、また一つ世界の常識をひっくり返しやがった。

《⑥》
『恋や愛は禁止』
これがこの国唯一の決まり事。
王様が決めた決まり事。
「恋も愛もクソくらえじゃ」
王様は恋と愛が何よりも大嫌い。
ベタな少女漫画をじっくり読んでは、ずたずたに踏みにじるのが日課で。
「恋も愛も」
王様は今日もまた、恋と愛の事ばかり考えている。

《⑦》
先日願いを叶えてあげた少女が、クレームをつけに神界にまで乗り込んで来た。
「あの氷谷先輩は私の望んだ先輩じゃないわ。私は原作ファンなの。あれはアニメ版でしょ?アニメ版は細かい設定が」
別次元の男性を恋人として具現化させたのだが……どうやら勉強不足だったようだ。

《⑧》
宝物交換会は賑わっていた。
ビー玉、人形、宝石に犬。
「お兄ちゃん、見て見て」
僕の手を引っ張り、はしゃぐ妹。
大切な妹。
「……」
立派な望遠鏡があった。
ああ、欲しいなぁ。

「こっちだよ」
裏山の神社。
妹に連れられたどり着いたそこは、お祭りのような。

《⑨》
「プォロロッツァ星でも七草粥を食べます」
遠く遠く遠く離れた星からやってきた宇宙人。
何処が頭か足か分からないし、食生活も生活様式も全く違うのに。
「新年七日目の朝に」
初めての共通点が、何故に七草粥。
何故に、せりなずな。

《⑩》
響紫色の髪。
黒檀の杖。
あああ、嫌な予感はしていたんだ。
「人間の魔女が一人増えたくらい何てことないですよ。このまま押し切りましょう」
遠目に見える敵軍の拠点から、緑色の兵士が隊列を組んで現れた。
馨しいピーマンの香り。
私の弱点を知る、幼なじみで、天敵で。

《⑪》
ベーコンは油を使わずに焼き上げる。
ベーコン自身の油で、カリカリに仕上げるんだ。
半熟よりも少しだけ火を入れた目玉焼き。
しっかり焼いたトースト、サラダ。
ミルク多めのコーヒーを添えて、鍵穴へと差し入れた。
「……」
開く扉。
食材を担ぎ、空腹を堪え旅は続き。

《⑫》
どきどきしながら壺の蓋を開けると、ぞろぞろと虫たちが外に出てきた。
皆五体満足ではないようだが僕の求めていた景色ではない。
「なんで」
肩を組み、談笑しながら草むらに去っていく蟲たち。
喧嘩して互いを認め合う。
虫けらに出来る事も出来ず、僕は次の方法を考える。

《⑬》
「フルート奏者が五人増えたんだ」
久し振りに会った壇ノ浦は、昔よりも更に厳かな音楽を引き連れていた。
一歩歩く度に、細かな身振り手振りにすら大袈裟な効果音。
「自殺願望はなくなったよ。今は世界一壮大なオーケストラを目指してる」
何だか昔より、響く音が明るくて。

《⑭》
警察軍隊警備員ヒーロー。
何重にも固めた守り。
鰻屋『古禄』は、物々しい雰囲気に包まれながらも営業していた。
「絶対に我々が守り抜きます。このタレは、絶対に」
ある日突然、日本中で継ぎ足し継ぎ足し使われてきたタレやつゆが襲われた。
とうとうこの店が、最後の。

くまかめついのべ。⑪

くまかめついのべ。⑪

ついのべまとめでござい。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-27

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