とあるおうちのひとりのこ
だれも知らないような場所にわたしはいました。
わたしは共働きの両親の間に、お兄ちゃん、お姉ちゃんの後にうまれました。
両親は、子どもに寂しい思いをさせまいと、手のひらにおさまるくらい小さくて愛らしい犬を買ってくれました。
お兄ちゃんは部活に勉強に忙しくてほとんど姿をみたことはありませんでした。
お姉ちゃんは習いごとと勉強で、これまたほとんど姿をみたことはありませんでした。
父はもともと家の中で動物を飼うのをきらっていました。
母は仕事に家事に忙しくそれどころではありませんでした。
なのでわたしは精一杯かわいがりました。
ある夏の大雨の日、わたしは一人でお留守番をしてました。
テレビをつけてると、父はよく怒ったので、つけずにそこらへんにおいてあったマンガをあさりました。
子どもの頭の中では分かりかねる内容ばかりでした。
飽きたところで、犬をかまいました。
話はできないけど、いい遊び相手でした。
次第に天気は悪化し、空の機嫌が悪くなりました。
カッ
と、光るたび、震える犬と自分自身に大丈夫だよ。あと少しでみんな帰ってくるよ。といいきかせました。
テレビがついてない静かな家に、雷鳴は容赦なく響きわたりました。
怖くて怖くて、地震でもないのに机の下にかくれて泣きじゃくりました。
はやく はやく
と、みんなが帰ってくるのをそこで震えながら待っていました。
それ以来、一人が怖くて犬だけではかばいきれず、できるだけ姉といようと姉の通う硬筆や毛筆の習いごとに保育園児ながら通うことになりました。
一人でもくもくとやるこの習いごとは、案外性に合ってたみたいで、なかなか楽しかったのをおぼえてます。
級が初めて上がり、名前がのったときには本当にうれしかったです。
そのときちょうど姉は特待生になりました。
我が姉ながら、本当に誇らしかったです。
送迎してくれていた父に、姉が報告しました。
もちろん自分のことのように心から喜んでいました。
わたしも級上がったよ!
わたしも報告しました。
だから?笑 じゃあ毛筆は?
...あがってない。
はッ!もっとまじめにできないならやめれば?!
ただ誉めてほしくて言った自分の言葉に恥ずかしさと後悔を覚え、父の小馬鹿にして呆れ返った一言に自分のどこかが崩れ落ちたような気分でした。
家に着くと自分の部屋に閉じこもり、押さえていた感情を爆発させました。
先生が誉めてくれた1枚も破り捨てました。
教科書もぐしゃぐしゃにして。
それでも悔しくて悔しくて、声にならない声で泣きわめきました。
とあるおうちのひとりのこ