観客

季節外れの雪が降った夜
月が積もった雪を照らす

まるでスポットライト

月明かりを独り占めして
君は踊っていたね

観客は僕一人きり
いつまでも見ていたよ

渡す花束もない
声を掛けることもできない

拍手さえもできないまま

舞台を降りた君の後ろ姿
ずっと見ているだけだった

僕の片想い
君は僕の存在さえ知らない

それでも…
観客でいられるだけで幸せ

雪が溶けると君も消えた

お伽話なんて信じないけど
雪の妖精にでも恋をした?

時は流れて桜が咲いた
短い美しさに終わりを告げる桜吹雪

雪と見間違う花びらの中に
君の姿を見たようで

今度逢えたら声を掛けよう
抱えきれないほどの桜の花束を持って

観客

観客

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-25

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted