私のワンピース

実際の話です。

何処にも着て行くあてがない。

昔、まだ元気だった頃、1着のワンピースを買った。
黒地に白バラの刺繍。
どうも着るあてがないので、藤沢さくらの歌を聴きながら着替えてみた。

うん、華やかである。

家族に見せたら、どっか行くの?と聞かれ、別にと答えると爆笑された。

こうして私の綺麗な時期は過ぎていく。
いつか袖を通して何処かに通ってみたい。

そんな機会、自分から動かないと起きないよ、と思い、明日朝から着て犬の散歩に行こうと思ったりもしたが、今更戯れるなんて、と思い、いつものTシャツに着替えた。

どうせ弄られるのに決まってる。
ここはそういう街だ。

かっこつけお断り。
私の心情である。

私のワンピース、せめて虫に喰われるな。
着てやるその日まで持ちこたえよ、と思って、今日も終わった。

私のワンピース

シンプルイズベスト。

私のワンピース

私のワンピース、着て行くとこが何処にもない。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-24

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