『麗しい』『夢想都市』『君と僕』
拝啓 朝方はめっきり涼しくなりましたが いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
『麗しい』『夢想都市』『君と僕』
昼間は炭鉱の浮島の南端と言われているね、もちろん僕は此処に来てからというのも、ツルハシを肩に担いで、ホッパ車の荷台に炭の様に黒光りする石炭を積めている。汗で身体はビショビショになるし、湿気も高いから水を飲まないと死んでしまいそうだ。
この島は狭いくせに僕みたいに至る場所から来た人間が多くて、人口密度が異常だ。僕は無機質なコンクリート構造の17階に住んでいる。窮屈な階段を登って上がるのがとても辛い、僕はこのアパートに帰る前に銭湯に行く、背中に般若の絵が描かれた人で埋もれている。仕方ないさ、仕事中に爆発でもしたら誰か分からないもんね、誰かの身体か確認出来たら、家族のもとに帰れる。まぁ、僕は死なないで君のもとに帰るさ。
銭湯からあがって、スーパーでも寄ろうとすると、細くて長い建物が、四角い窓から光を射して僕の足下を照らす。僕の故郷にはない風景だ。緑のない、灰色の景色、周りは黒く濁った濃い海、でもこの夜の光景は僕はとても大好きだ、この小さな光は灯火で顔と身体が真っ黒になった、酔ったおじさんが夢を語って、歩いていく。そして遠い故郷の思い出を話す人の声が、いくつもの部屋からも聴こえてくる。
僕はそのままスーパーで買い物を終えると、自分の住んでいるアパートの屋上の24階に行く。そしてその硬い真っ平な屋上のスラブに腰を降ろして、買ってきた飯と酒を飲む。海水の混じった暖かい温風が僕の皮膚を触って行く。僕は立ち上がり、狭く高く建っている建物を夜は僕が見下ろすのだ。けれども最初は首を上に向けて見る、そうすると空には幾億の砂の粒の様に輝く星が僕の瞳に映る、下に首を見下ろすと人が創り出した文明の光の星を散り散りと放って僕の網膜で反射する。
ここには夢の架け橋がある。その橋を通って君の待つ故郷、そして、僕の故郷に戻れます様に、この麗しい夢想都市が君と僕に希望を与えてくれます様に…
『麗しい』『夢想都市』『君と僕』