もらったもの。あげたもの。

もらったもの。あげたもの。

ありがとう

「ねこは飼っちゃいけない」
そのルールを破り、うちに住み続けたのが君だった。名前はごえもん。メスなのにこんな名前つけちゃってごめんな。
5月20日。父が仕事から帰ると、家の前の道路で車に轢かれたごえもんがいたらしい。

ごえもんと過ごした2年間を、僕は忘れない。今までだってそうさ。野良猫を見ると思い出すよ。
ごえもん元気かなぁって。
またいつか地元に帰った時に撫でてやろうって。
なつきの悪いお前は、5分くらい触り続けると怒るんだよな。俺のことはめちゃくちゃに引っ掻いて、めちゃくちゃ噛むくせに、喧嘩になるとめちゃくちゃ弱くてさ。よく顔とか体に傷をつけて帰ってきたよな。しかもだいたい重症でさ、腹のとこに穴空いてたり、耳がちょっとちぎれてたり、口が血だらけだったり、そのうち病気で死んじゃうんじゃないかってひやひやしてたよ。
でもお前はなんだかんだで元気でさ。ツンデレっていうのかな。たまにめちゃくちゃ甘えてきてくれたよな。
学校から疲れて帰ってきた日。
嫌なことだらけの日。
宿題がしんどい日。
ギターを弾いてる時。
お前はちょこちょこ俺の目の前に来てはごろんごろんしてたよな。
ありがとな。いままで。
沢山もらったよ。いろんなものを。
何をもらったか具体的には言えないけどさ。
お前からは色んなもんをもらったよ。

俺は…どうだった?
お前になにかあげれたか?
お前になにかしてやれたか?
たぶん、してやれたよな。餌もやったし。撫でてやったし。お前に向けて人生とはを語った日もあったよな。ニャン生のお前にわかるわけのない話を隣で黙って聞いてくれたよな。普段は伏せてる耳がピンと立ってて可愛かったよ。
もう家を離れて3年経とうとしてる。書いてて思ったよ。もうそんなに経ったかって。
2年くらいかな?成人式ついでに俺が帰ってきた日。
12月28日。
お前はいつもと変わらない顔して、俺の足にすりよってきたよな。
もう俺、あの時はお前が可愛すぎて連れて帰ろうかと思ったよ。覚えててくれたんだな。
久しぶりって言ったら、本当ににゃーって鳴いたよな。
俺はできるだけお前といたよ。友達との約束もけってお前といた日もあったな。家の外の段差でさ、お前が2段下にして、俺がギターを弾いてる。あの時の3時間くらいの時間を思い出した。なんだかんだお前は、人懐っこい猫なのかなーって思って触ったらさ、引っ掻いたよな。忘れてやらないからな。

こうしてお前のことを書くと、もっともっと遡って、小さいお前が自販機の前に捨てられていた頃の話も書きたくなるよ。隠れて家の中で飼ってたら親にばれて、怒られるかと思ったけど、案外パピーモノリノリでさ。お前のトイレとか、餌とか、買ってきだしたよな。
ほんと、パピーには感謝してる。俺が地元離れたら捨てるとか言ってたのにちゃんと最後まで面倒見てくれたもんな。
たくさんの癒しと、大切な時間をありがとう。
ゆっくりやすめよ。もう喧嘩するなよ。日向を浴びて沢山寝ろよ。好きなところで好きなだけ駆け回れよ。

じゃあね。

もらったもの。あげたもの。

もらったもの。あげたもの。

自販機の横の段ボールの中に君はいた。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-21

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