ゼダーソルン ウェシュニップへ (中)

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 「タヴィ・オン文字」の章で、トゥシェルハーテがキューンに差し出した本の出だし
 伝説の三家の一人、セブ・ダーザインがどういった立ち位置にあるかをすこしだけ。

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 ブレン・ホウアーヴの回想録



 はじめに

 我が人生の中でも最良の友の一人であっただろう、レシュタン国の初代法王ネゼィール・ヴィーガ・ロップが六十一歳でこの世を去って一年がすぎようとしていたころだ。もう一人の最良の友であるラキャオ・ヨマ・ジドゥルが、私にひとつの提案をもちかけた。


   病死ではあったがネゼィールが死んだのは寿命だったんだ。
  よって私も老い先短いにちがいがない。だからどうかな?
  我ら三人の中で一番年若いばかりか、九十歳もの寿命がある
  と聞くセブ、キミが、ここらで我ら三人の軌跡を一冊の回想
  録にまとめてみてはくれないものか。


 なぜ急にと問うたところ、じつに彼らしい回答がかえってきた。
 それは、


   我ら三人が戦乱の世に出会ってからというもの、じつにさま
  ざまな変革を、この星に住まう人々に与えたことと思うのだが、
  それを可能としたいくつかの事象は、はた目には『幸運にも偶
  然に起きた、この世のものでない奇跡』でしかないのだ。
   これでは、私たちは、運だけでその地位に居座り続けたハッ
  タリ野郎ととる輩も現れないとはかぎらず、後世に生きる我ら
  が子孫も腹のおさまりが悪かろう。だからここは、いかに我ら
  が計画通りに変革をなしえたか、子孫らのためにも記しておく
  義務があると思うのだ。


というもので。
 さすがは血と伝統を重んじる、もとい功績を重んじるヨマ族の貴族なだけはあるとほほえましくさえ思いはしたが、たとえ記録を残したところで、我ら三人がハッタリ野郎であるかどうかは、読んだ者の審判によるところが大きいように思われた。
 しかし、私としても。
 偶然にも養子に迎えることとなった幼子の将来を慮らないと言うワケではない。
 そこで私はタヴィ・オン文字なる表記文字を用いて全文を記することを条件に、彼の提案を承諾した。また本のタイトルに私の旧名をつかうこととし、事情を見知った者以外には意味をなさない、あくまで私的な記録との要素を深めることにもこだわった。
 それはこの記録の性格上、私の古い過去をヒモ解くことにもなろうとの懸念から慮ったうえでの処置なのだか、その詳細をここで述べることははばかられる。ぜひとも別章を参照していただきたいものである。



 追伸
 タヴィ・オン文字は私の故郷でつかわれていた古代文字で、もちろんこの国の文字とは似ても似つかない、到底解読できる者が現れるとも思えない代物なのだが、じつはネゼィール・ヴィーガ・ロップとラキャオ・ヨマ・ジドゥルの二人には読解法を教授済みである。以外の者で解読を望む場合は、私を含む三家に助けを求められたし。

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(後)では、セブ・ダーザインとは何者か、その故郷とは? とかなんとかな内容になります。

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アープナイム文化圏に伝わる古代文字タヴィ・オン文字で綴られた回想録、そこに綴られたのは? 小学5年生~中学1年生までを対象年齢と想定して創った作品なので漢字が少なめ、セリフ多めです。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-20

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