享年19歳

享年19歳

享年19歳

私はある宇宙船の一室でのんびりとジュースを飲みながら本を読んでいた。その部屋は大体3畳ほどの大きさだが、私が一声かけると白い壁からテレビやパソコン、ゲーム機、ハンバーグ、ミートパイ、おもちゃなどほとんど何でも出てくる。私はこの部屋で毎日過ごしている。ハイテクになった時代のおかけで私たちは働かないで、この様に好きなことをやっていられるのだ。
私はベッドの上で脚をパタパタと動かしていると、部屋のドアが開いた。
私のお母さんが立っている。母は私に近づいて言った。
「ノキちゃんはそろそろ19歳になるわね」
私はコクりと頷いた。
母は少し寂しそうに笑いながら喋る。
「ノキちゃん、最後の年じゃない?それで、半年間だけ特別に地球に行けることになったのよ」
母の言葉に私は嬉しくなって跳び跳ねた。何しろ初めて地球という場所に行くのだ。しかもこの部屋から出るのも初めてだった。こんなにドキドキして楽しみになるなんて、心が爆発しそうになる。
私はさっそく小型の宇宙船に乗って地球へと出発して目指した。
到着すると空は青く、空気はすんでいて、地面には土というのもあった。川というのが流れており、魚という生き物もいる。上を見ると鳥という生き物が旋回していて、木というのも植物が緑色の葉を揺らしている。
私はたちまち、そこら一体を駆け巡った。走っても走っても壁がない、気持ちよかった。すると目の前に、カタカタと古いロボットが私のところに来た。
「ワタシめ、ノキ様にお仕えしますロボットでございます、これを着てくださいまし」
そう言うと白いワンピースと麦わら帽子を私にくれた。私は感激する。服と言うものを今まで一切、着たことがなかったのだ。
私はこの服を着けてまた駆け巡った。
太陽の照れる日、雨の降る日、曇りの日、全てが神秘的だった。それに私の周りには動物たちが囲んで、初めて友達を作った。私はこんなに幸せでいいんだろうかと思った。
そしてある日、ロボットが私のそばに寄ってきて話す。
「ノキ様、そろそろ、ノキ様のお歳が19歳になります」
私は言う。
「私、死んじゃうの?」
ロボットは優しく言った。
「痛みはないです、ノキ様の身体に埋め込まれているチップが微弱な電気を発して脳の神経をダウンさせるのです」
「そうなんだ…」
夕日がさしかかる。
なんて綺麗な景色なんだろ、私はこんな時代に生まれて良かったって本当に思う、私はまぶたが重くなって深い眠りに落ちていく。
その事をロボットが確認してその彼女の母に連絡した。
彼女の母は数時間してやって来た。
「本当に幸せな顔でしたよ」ロボットがきしむ音を出して言う。
「でも、いくらなんでも早すぎるわ…だってまだ19よ」
ロボットは決まりきったマニュアルの文書の様な言葉を言った。
カタカタと口を動かす「現在の人類は人口を遥かな数に達しており、宇宙船でもその数を補えない程です、それによって生まれた瞬間から子供の将来を測定して、その子の生きられる寿命を定めるのです」ロボットはまだ続ける。
「この場所だけでも希少なのです、緑や動物のある場所はもうありません、ここの場所以外の地球上ではすでに、汚染されておりまして…」
母は怒った口調でロボットに言った。
「そんなこと、知ってますわ!」
ロボットは少女の身体を持ち上げて言った「そう、これが幸せなのです、人が働かず、好きなような物で遊び、好きな場所で死ぬ、戦争もありません」
「あるのは定められた命だけです」

享年19歳

享年19歳

享年19歳の少女は、幸せ

  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-20

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