ヨダカ 第六話 クンねずみ①

第六話 クンねずみ

~首都ラユー~
「今回はラユーに2、3日宿泊。今日は、最初にリンパーへ報告、そして、昼間は薬の販売。次の日、そのまた次の日も同じように薬を路上で売って、最後の日はリンポーに畑の肥料相談して、魔女の家に帰る」
「ん。わかったー」
 肩に乗った蛙は眠たそうに大あくびをしながら言った。歩いている青年の肩はリズム良く揺れていた。季節もだんだん暖かくなり、たまに吹く涼しい風は、わずかに残った桜の花の薫と共に、蛙の頬を優しく撫で、通りすぎた。蛙は朝起きたばかりのせいなのか、それともこの暖かい陽気せいなのか、蛙自身よくわからなかったが、とてつもない眠気に襲われていた。蛙は眠たさを我慢し、振り落とされないよう青年の肩に必死にしがみついた。薄い花びらを通った初夏の日の明るい朝の日差しは駅に植えられた樹の葉をキラキラと蒼く光らせた。蛙は目に入って来る光を我慢し、張り付いた瞼を必死に開けた。すると、目の前にポラーノ広場までつながる大通りが見えてきた。
 ヨダカたちは、魔女の家に帰る前に首都ラユーに訪れていた。ここで薬を売って旅費を稼ぐためと、リン医者姉弟の一番下である樹木医のリンポーに会うのが目的であった。
 朝日に白く光るその大通りは、駅の東側から西のポラーノ広場まで東西に続いていた。モネラの大通りとの違いは、モネラの大通りが駅の周辺しか整備されていなかったのに対し、ラユーの大通りは石に不揃いな形であるものの、平らに形成されたサンムトリ産の石英の石がポラーノ広場まで整備されていたことだった。その石英は緑青や錆、山吹色、灰色を薄めたような白っぽい色をしており、その道には添うように木造造りの店が並んでいた。そしてその前には、まだ夜が明けたばかりだというのに露店が並び始めていた。露店には、旅人の土産物として作られた民芸品、服や鍋などの日用品や生活雑貨、果物や野菜、生魚や肉など様々な物がそれぞれの棚に並べてあった。特に、旅人に人気があるラユー名産の木で作られる壷や食器類などの民芸品や日用品は、以前はシンプルなデザインが多かったが、ムネネ市の職人が来てからは装飾が施されたものが多くなってきた。そして道はそんな商品を目当てにした客が待っていたかの様にぞろぞろと歩き始め、賑わい始めた。ヨダカは最初は人々を避けるように歩いていたのだが、その途中、道の大半を、人が埋め尽くしているのが見えた。
「何あれ?」
 肩の蛙は眼を擦りながら青年に質問した。
「演芸か何かだろう…」
 ヨダカは以前、砂漠で顔を隠した様に服の襟元を上げ、顔を半分隠した。
「ふーん」
 蛙は興味が無さそうに肩の上で呟いた。
「フードの中にいたほうがいいかな?振り落とされそうだし」
「俺のフードの中で潰れるなよ」と言いながら、青年は失礼。失礼。と、言い、観客の肩にぶつかり合いながら、群がる人びとの間を通って行った。そのときだった。
「なんと!その王子は、世界一ワガママな赤の一族の姫様を愛してしまったのです。ほんと、その王子はなんてバカなんでしょう…。あの、赤の一族の姫なんて一筋縄じゃあいけません。煮ても焼いても…」
「何か。お話しているね」
 蛙はフードから顔を出し、声がする方を見た。そこには青年が一人壇上の上に立っていた。どうやらその青年がその上で話をしているらしい。その青年は金色の髪にギラギラ光る青色ジャケット、白いシャツに大きな赤い蝶ネクタイを付け、壇上の上で両手を広げながら何かを言っていた。年齢はヨダカぐらいか少し若く見えた。
「すごくギラギラしている…」
「……」
 青年は興味がないのか、蛙に何も返事をせず、歩き続けた。だが、その時だった。
「おおこれはこれは、あそこにいるにはカラスの一族の方ではないですか」
 壇上の青年が言葉を発すると同時に観客のほとんどがヨダカはの方を振り向いた。蛙ははっとし、フードの中に身を隠した。蝶ネクタイの青年がにやりと口を曲げながらこちらを見ていた気がしたからだ。青年も同じだろう、その声の主に目線を合わせない様にしながら蛙が入っているフードを上げた。
「ヨダカ…あの人、もしかして僕たちの事を言っているの?」
 耳元に移動した蛙が囁いた。
「……カジ。お前は黙れ」
 青年が低い声を出した時だった。
「あれぇ~カラスが西の空に向かって歩きだした!カラスの一族も、やはりカラスと同じように東の空が明るくなったら、太陽を拝んで、カアカア鳴くんですかねぇ」
 壇上の青年はからかうような絞ったような声を出した。すると観客から一斉にどっと笑い声が湧いた。
「ヨダ…」
 何故か急に蛙の心は恥ずかしい気持ちで一杯になった。
「…黙っていろ……」
 ヨダカはそう言うと表情を変えず、その人混みを出た。


「ありがとうございましたー」
 ヨダカは大通りの道の途中で店を広げ、いつもより高い声を張った。
 ヨダカはあのあとリンパーの家に行き、オツベルについて報告した。リンパーは頭を抱えていたが、しばらくするとオツベルの息子宛だろう、手紙書いた。蛙の足の怪我がとっくに治っていたため、ヨダカはついでにリンプーにお礼を言おうと思った。が、相変わらず、彼は引きこもったままで、顔を見る事もできなかった。ヨダカたちはポウセから貰った薬を街で売る予定があったため、リンパーだけ挨拶してその場を去った。その帰りだった。
「とんちんかんといえば、『セロ弾きのゴーシュ』!アイツの音楽は聞けたもんじゃない!あの人はドレミファもわからないのですかねぇ。一体どこで習ったことやら。あんなんじゃ、無音で映画を見た方がまだマシって言ってたら、ありゃしない!」
 ヨダカたちは今朝の青年に出くわした。青年は朝と同じ格好で壇上のうえで、ベラベラとしゃべっていた。相変わらずその周りには多くの観客がおり、金髪の青年が話す度にどっと笑いが起こった。
「また、誰かの悪口言ってる…。朝からあんなに喋っていて疲れないのかな…?」
 青年のフードの中にいた蛙はため息混じりに隣を見た。その隣には顔を真っ赤にしながら目を吊り上げた青年が一人立っていた。
「くそ。天竺め。あることないこと言いやがって。何が“ゴーシュが『ドレミファ』をわからない”だと…。ふざけやがって…」
「…」
 その顔を真っ赤にした青年は、何が入っているかわからない大きいケースを背負いながら、壇上の上にいる金髪の青年を睨み付けた。その背負ったケースは独特な形をしており、上の部分は人の頭のようにほっそりしていて、下の部分は人のくびれのような曲線がついていた。まるで人間の上半身を象ったような形だ。それを見た蛙はゾッとした。もしかしたら、その大きなケースの中に金髪の青年を詰め込むのではないのかと思ったからだ。蛙は震えながら、ヨダカのフードの中に隠れた。
「どうした?カジ…?」
「何でもない…」
「…?」
 ヨダカは蛙が一体何を考えているのか気にも留めず再びまた歩いた。
「…」
 そうして、ヨダカたちは今いる場所に店を広げた。そこは街の中ほどにある大きな荒物屋の前だった。そこには笊ざるだの砂糖だの砥石といしだの金天狗きんてんぐやカメレオン印の煙草たばこだのそれから硝子ガラスの蠅はえとりが並べてあり、日常使う物ならなんでもあった。そして店の前の一番目につく場所に不気味な感じの熊の毛皮が置かれていた。そのせいであろうか、その店の前の道の前に店を開く者はいなかった。
 ヨダカたちは朝の時間はとっくに過ぎたので薬を売る場所がもうないと考えたが、荒物屋の前を通りすぎて行く人は多く、ヨダカはその前で桜貝の様な色をした風呂敷※1を広げた。
「いらっしゃいませー。万能散※2は如何かなー」
「先程はどうも。こんにちは。カラスのお兄さん」
 ヨダカはその声にゆっくり顔を上げた。目の前に電気栗鼠(でんきりす)の逆立った毛のようにツンツンと髪の毛を立てた※3金髪の青年がたっていた。そこにいたのは、道の壇上で演説してた青年であった。どうやらあの顔を真っ赤にした青年に襲われずに済んだようだ。
「……」
 ヨダカはその目の前の人物の顔を確認するとすぐに頭を下げた。黒髪の青年は特にやることもないのか。頭を下げたまま木箱に入った薬を弄り始めた。
「って、あーお前!」
「人を、指で指すな」
 ヨダカは隣に座っていた蛙の手を叩いた。
「おっと。使い魔の教育がなってないじゃないですねぇ。エヘン。エヘン。ひどいじゃありませんか。これでも私、ここら辺だと結構有名人なんですから」
 金色の少年はエヘン。エヘン。と、言いながら、赤い蝶ネクタイの角をピンっと立てた。やはり年はヨダカと同じか少し若く見えた。
「そうみたいだな。…色んな意味でもな。で。なんか用か?」
 黒髪の青年は顔を動かさず少し睨むような目付きをしながら目の前の青年を見た。
「あ。いえいえ。先程のことを謝りに…。あと、私。『天竺』と言うものです。朝の市を中心に演芸をやっております。芸風は…言うまででもないですね。以後お見知りおきを…」
「…すまんが、一応、ここは薬を売ってるところだ。用がないのなら行ってくれませんか?」
「あれ?怒っています?」
 金髪の青年はわざとらしく眉を八の字にしながら、白く尖った八重歯をヨダカ達に見せた。
「店をやってなければこの場で殴りたいが…」
 そう言うとヨダカは視点を落とした。
「そんなヒドいじゃないですか。そんなこと言わずに…」
 金髪の青年はそう言いながら黒髪の青年に向かって苦笑いを浮かべた。
「あまりあの芸は好かん…余計なお世話かもしれないが、ああいう民族を揶揄するのはやめた方がいい」
 黒髪の青年は視線を落としたまま、木箱の中で弄っていた薬袋を、手で持ち直したかと思うと、両手でその袋の角を揃えるかのように風呂敷の上で整え始め、また同じ場所に戻した。
「いやいや。結構、ラユーの市民はあれで笑ってくれるんですよ。私はただみんなが思っていることを代弁しているだけで。それに…エヘン。『太陽信仰』という意味不明なシュウキョウなんてして、毎朝太陽を拝んでいるのはそっちではないですか。私はただ事実をそのまま言っているだけです」
 青年はしゃべり終わると、また眉頭をわざとらしく上げ、その白い八重歯を見せた。
「ラユーは様々な民族が集まる場所だ。そのち怒りを買うぞ」
「ご心配ありがとうございます。でも…」
「クンちゃん!」
 その声を聞いた青年は、その顔をさっきとは全く別人のようにした。赤く大きな蝶ネクタイの青年は次の瞬間、顔を歪ませたと思うと苦虫を噛み潰したような表情になった。
「チッ。嫌なんですよ。ああいう教育がなってないヤツは…」
 青年は悪態をつきながら、後ろを振り返った。そこには栗毛のおかっぱ頭の少女が立っていた。身長は金髪の青年より頭一つ分低く、小柄な印象を受けた。そしてその眉は特徴的で、気が弱そうに八の字に少し下がっていた。
「ヤマネ…」
「あの…」
 下がり眉の少女は金髪の青年を表情を伺うように見ていた。どうやら、彼女の顔立ちは彼のように態と作った顔ではなく元々そう言う顔らしい。
「何しに来た?」
 青年はそんな少女を威圧するかのように見下ろした。
「どうしたんだ…?」
「え…と。あの…えっと…」
 少女は怯えるかのように何回か彼の目を見ると、彼から視線から外した。
「…何度言えばわかるんだ?」
「え?」
「何度言えばわかるんだ!私の名前はクンではない!『天竺』※4様だ!『天竺』とはとてもありがたい名前で、ゲンジョウサンゾウホウシ様が、キョウテンを持ち帰ったありがたい場所から取った名前だぞ!そんなこともわからないヤツは、失せろ!もう私の前に現れるな!」
 何が気にくわなかったのだろうか。青年はいきなり声を荒らげた。
「ご…ごめんなさい…」
 下がり眉の少女はそう言うと、慌てながら金髪の少年の前から消えた。
「いいのか?あんな怒り方して…何か用があったんじゃないのか?」
「これは。これは失礼しました。何せ、そこのチビ蛙と同じで教養がないやつでして…。別に大丈夫ですよ。あんなやつ。まあ、とても古い知り合いでして、あっちが勝手にまだ友人だと勘違いしてるんだけですから…」
 蝶ネクタイの青年はもう一度、エヘン。エヘン。と、言うと、また赤い蝶ネクタイの角をピンっと立てた。
「ま。色々と失礼しました。では。私はこれで」
 青年は深々とお辞儀をすると人混みの中へと消えた。
「なんなの。アイツ…」
 蛙は、帰った天竺の後ろ姿を睨み付けた。
「あっ…あの…」
「ん!?」
 カジカはその表情のまま声がした方を向いた。
「ひ…ひい…!」
 彼女は怯えるかのように、一歩そこから下がった。
「カジ…顔」
 ヨダカは隣でため息をついた。
「あ。ごめん」
 蛙は顔を戻した。
「君は…」
「や…ヤマネって言います!え…と。そのっ…」
 そこには先程の下がり眉の少女が足を後ろにしたまま、腕を前側に構えた。その顔は幼さが残っており、金髪の青年より一回り幼く見えた。
「あ…どうも。ヨダカって言います。見ての通り、薬屋です…。こっちは、カジカ…」
 青年は彼女に興味がないのか、そのまま彼女の顔を見ず並べられた薬を見ながら淡々と話した。
「えっと…。その…」
 少女は口を少しモゴモゴさせると、いきなり頭を下げた。
「ご…ごごごめんなさい!えっと…クン…天竺様を赦してくれませんか!」
「え…」
「あ…いえ…あ。あの!決して、て…天竺さ…様は、悪い人じゃないんですっ。えっと…私達の…私達のためにか…稼いで…くれてるだけなんで…です」
「え…」
 ヨダカは彼女を見たかと思うと、その勢いに圧倒されるかのようにゆっくり瞬きをした。
「あ…すみません!急に変なこと言って!申し訳ありません!」
 青年の反応を見た彼女は少し恥ずかしそうに赤らめながら再び深々と頭を下げた。
「ん…。まあ…はい…。そうですね…」
 カジカは驚きながら振り向いた。その反応は蛙が予想していたのと違うものだった。ヨダカは気のない返事をした後ため息を吐いた。少し機嫌が悪いままなのか、それとも彼女に商売の邪魔されてイラついているのか、理由が蛙にはわからなかったが、彼女から視線を外し後ろの頭を掻いていた。
「わ…私たちは、ネズミの一族の中でも、貧しい生活を強いられて…えっとその…」
「…。すまんが…。それはふざけてるのか?」
「え…?」
 蛙はチラッと再び彼の様子を見た。彼は無表情まま、先程まであまり見なかった少女の顔をじっと見ていた。その表情はいつも彼がやる表情であって、普段と変わらないように見えた。蛙はその表情を見る度、彼が一体何を考えているのかわからなかったが、薬を売るとき以外はいつも固い表情で滅多に笑顔を見せることが無いことはなかった。だが、今日の表情はいつもと全く違うものだった。その顔を見た蛙はなんとも言えない違和感を覚えた。その表情はいつもの無表情の顔ようであったが、目付きは鋭く、顔は笑うことのない人形の様に冷酷に見えた。蛙は恐くなり、思わず青年の暗い目から視線を外した。
「それは、同情を買ってるのか?すまないが、あの芸風は個人的に気分が良くないし、そうやって俺らに同情買うためにここに来て謝るんであれば、その前に『天竺』って言うヤツにあのふざけた芸を辞めさせるのが先じゃないのか?」
 その声に抑揚はなかったが、怒りが混もっているようにも聞こえた。
「え…。あの…えっと…。その…」
 顔を上げた少女は声をどもらさせた。そして、怖いのか。彼女も蛙と同じように彼から視線を外した。
「君は『天竺』って言う、アイツの仲間か?君はそうやっていつもアイツが芸をできるように、誰にでもこう言うことをしてるのか?別に。あんたが説明しても説明しなくても、今の俺にはどうでもいいことだ。だが、勘違いするな。そんなんで許して貰えると思うな」
「いや、あの…ごめんなさい!クンちゃんがあなたを傷つけてしまったと思ったので…えっと…その…。それを謝りたくて…」
 少女は手を後ろにやり、モジモジしながら青年からまたすぐに目を逸らした。蛙は、彼女が気の毒に思えた。明らかに青年の態度に怯えているように見えた。だが、青年の表情は、彼女の様子を見ているためのにもかかわらず、同情する気がないのかまったく無表情のままだった。
「じゃあ、なおさらアイツにあの演芸を辞めるようにいうのが先と違うじゃないのか?アイツの演芸はどうやら人や民族を侮辱して笑いを取っているようだな…。謝らなくてもいいとは言わないが、ああいう事で笑いをとっているんであるなら、明日刺されましたって言ったって文句は言えないはずだぞ」
「えっと…」
 蛙は彼女を同情した。少女はすっかり黒髪の青年にまくしたてられてしまって、気の毒に見えたからだ。だが、それと同時になぜか青年が言うことが正しいとも思えた。ラユーは様々な民族が各地から訪れる場所であると同時に様々な価値観を持つ人が集まっているところでもあった。特にムネネ市の市民が来てからは、民族に多くの多様性が生まれていた。つまり、あの天竺の芸を周りにいた観客のように面白おかしく笑う者もいれば、先程のように顔を真っ赤にした青年のように彼の芸見てに怒っている人もいる。だから、青年は目の前の少女にそう言っているのだ。だが。
「ヨダカぁ…ちょっと…」
 カジカは彼女を見た。おどおどしている彼女は捕食者に怯えるネズミのようにまるっきり萎縮して怯えていた。だが、青年はまだ何か言い足りないのかまた口を開こうとした。カジカは思わず、青年の腕を掴んだ。
「ヨダカ!」
 蛙が大声をあげると、黒髪の青年は我に返ったような表情になった。青年に柔らかい表情という表現はないが、先程の鋭い目付きはそこから消えていた。
「ヨダカ…。その子、アイツじゃないから…」
「あ…すまん。つい…」
 青年は少し気まずそうに、顔をしかめ、蛙から腕を離した。
「す…すみません…」
 少女はこちらの様子を伺うようにまた頭を下げた。
「あ…いや。こちらこそ…。私も少しでしゃばったことを…」
 青年は咳払いをするとフードを上げ、顔を隠した。だが、青年の雰囲気が災いしたか、その姿は明らかに、客商売してる人とは思えず、インチキな魔術師か安っぽい占い師のように見えた。いよいよ、(ある意味、)ここの店の雰囲気に合ってきた。
「ごめんなさい。あなたが言うことは、分かります。勝手すぎますよね……。相手を傷つけているのに謝るから傷つけてるのを許してなんてで…。でも、それでもクンちゃんを許してくれませんか!クンちゃんはただ、何て言えばいいのでしょう『天竺』って言う人を演じているだけなんです!だから、壇上以外でも、嫌味なことを言ったり、人をバカにしたことを言ったりするだけなんです。だから、本当はとても優しい人なんです。だけど…。それを言うと…。いつも…。商売に障るから辞めろって言うんですけど…。だからそれだけはわかって欲しくて…」
「何でそこまで彼のことを庇うんだ?アイツに友人ではないとまで言われたんだぞ…。個人の意見として明日誰かしらに刺されてほしいと願っているが…」
 カジカは酷い事をまだ平然と言っている青年の方を見た。
「…クンちゃんは、本当は…とっても。とっても優しくて…寂しいひとだからです」
「寂しい人?」
「クンちゃんはただ見栄を張って、自分を大きく見せようとしているだけなんです。本当は…とても小さいひとなんです。だから、みんなにケチ付けたり、人を傷付ける事を言って、自分を大きく見せようとしているだけなんです。それじゃないと自分を保っていけないだけなんです。だ…だから…『天竺』っていう仮面を被っているだけで…」
「しかし、何でそんなことを…」
「私たち…。…」
 青年の質問に少女は言葉を詰まらせ、唇を噛んだ。それと同時に、両手でズボンの前をぎゅっと掴んだ。
「…。その足…」
 カジカはその声が発せられた声を聞くと同時に、その声を発した青年と同じ方向を向いた。
「『うすあかりの国』か…?」
 ヨダカは続けて、自然と上がったズボンの裾を見て驚きの声をあげていた。その傷は少女の履き潰された靴から見えた。
 どうやら彼女は不本意だったらしい。「な…」と声をあげ、ズボンから手を離した。
「これは…その…えっと…」
 そして、少女はゆっくりうつ俯くように頭を下げた。
「…。わ…私たちは…そこから逃げたんです…」
 彼女は震えながら、その右足を左足に隠した。蛙は何のことか分からず、青年と少女の顔を交互に見た。
「じゃあ…アイツも…?」
「す…すみません…」
「何故。謝る?」
「えっと…それは…」
 彼女はまた手を後ろにやり、もじもじと体を動かした。
「まあ、全員のネズミの一族がそうではないし…。現王もその事について心を痛めている…。今じゃラユーの考えも昔とはずいぶんと変わって来たんじゃないか?」
「え?うすあかり…の…?」
 蛙は眉間にシワを寄せた。そして『うすあかりの国』について訊こうとしたときだった。
「いいえ!!!!」
 蛙はその声に体をビクリとさせた。少女はその小さな体から発せられたとは思えないほど、大きな声を出した。蛙は一瞬、誰の声なのか判断できなかった。
「ご…ごめんなさい。き急に…大きな声を出して…えっと…その…。たとえ…現王がどう思われたとしても…。何も変わりません。…と思っています。…多少は良くなったかもしれませんが、みんな…同じネズミの一族でさえ、今でも私たちを、違う人間として見ているんです!…だから、今でもクンちゃんは…今でも必死にもがいて…。なんで、普通のネズミの一族はどうとも思われないのに、親に捨てられ、大人たちの都合で勝手にうすあかりの国に入れられた私たちは、皆に変な目で見られないといけないでしょうか。なんで同じスラを持っているのに、ただあそこから出たからって違う目で見られなくてはならないのでしょうか。あの中には…何人かの子供たちがいて、無事脱出できたのは私たちしかいませんでした…。でもそこから無事に脱出しても、外にいた皆から違う目で見られて来たんです。それがいやであの村から出て行ってラユーに来たんです。…けど…」
 蛙は「うすあかりの国」について質問しようとしたが、それは少女によって遮られたため、諦めた。 
「だからって…」
「わかっています。…でも。クンちゃんは特に、あの国で酷い目にあっていました…」
 それは彼女の癖なのか、少女はまた、ズボンの前をぎゅっと掴んだ。
「クンちゃんも私たちと同じく…『うすあかりの国』に入れられました。だけどクンちゃんだけはどこか違うようでした。クンちゃんは、特に『うすあかりの国』に入る前も、誰か大人にいじめられたようで、その姿は誰よりも、傷や痣のあとが酷く、誰よりも大人たちに対して酷く怯えていると同時に、恨む様に見ていました。だからいつも…鬼たちに…。
 あの部屋に入れば待っているのは絶望でした。誰しもが怯え、震えてました。みな誰しもがあの部屋から出たがっていました。でも、そんなことは叶うこともなく、あのうすあかりの部屋でみんな毎日過ごしていました。そんな中で、クンちゃんはあの暗い部屋の中でいつも面白いことを言ってみんなを笑わせてくれました。部屋の外には、電信ばしらの兵隊がいるとか、宝石の雨かが降るところがあるとか。誰よりも傷ついていたはずなのに、皆をいつも笑わせて。だからみんなあの暗い部屋の中でどんな辛いことが合っても希望を持つことができたんです。みんな一緒に脱出できたときは、これから一体どんな楽しみが待っているのか外の世界にみんなワクワクしながら期待してました。クンちゃんも同じ様でした。ただ、クンちゃんはあの部屋から出たと言うのに、みんなと違う様でした。いつも通り大人たちを見ると何度も何度も怯えていました。そしてあの部屋から出たクンちゃんは、その時からまるで別人の様になりました。垢抜けたのか、それとも何かを求めるかのように、全く別人のようになっていったんです。それまでは面白いことを言って、みんなを笑わせていたのに、それが全く無くなって、周りの大人たちの悪口ばかり言って笑いをとる様になりました。そのうちそれは最初は周りを笑わせるだけだったのですが、お金を得る様になって行きました。それが『天竺』なんです。
 クンちゃんはとても悲しい人でした。外の世界に出ても厳しい現実が私たちに待っていたんです。私達は、外に出てからも皆から蔑まれ、そして馬鹿にされながら大きくなりました。でも皆一人ひとり見られず、皆、足を見てうすあかりとわかると、『ほら、親に捨てられた子供たちだ…』『あの子たちはああだから』と言われて来たんです。だから、私たちもクンちゃんもいつもバレないように育って…。変わらないといけなかったんです。そうじゃなきゃ生きられないったんです。もう、捨てられる年齢でも、戻される年齢はないってわかっています。でも…今でも弱みを見せられた瞬間やられてしまうって思ってしまうんです。本当はクンちゃんも私たちと同じ様にびくびく怯えているんです」
「え…だけど、」
 少女を見ていた蛙はゆっくり口を開けた。
「それじゃあ、苦しいよ…。例え、『天竺』っていう生き方で本当の自分を守ったとしても、苦しいのはクンさんだ。自分が自分らしく生きられないとしたら…。それにもし『天竺』に対していろいろ言われたら、傷ついているのはクンさん自身だ…」
 蛙は自らの掌を強く握った。
「それは、クンちゃんだって頭では…分かってはいるはずです。でも『うすあかりの国』の…あの薄暗い部屋が今でもつきまとうんです。どうしても『天竺』という盾なしに、私も…クンちゃんも生きられないです。本当の自分が傷付くのを恐れているから。だから、クンちゃんは変わろうとしているしてるんです。違う何かに。弱いネズミ出なく強い何かに…」
「そんなことをしたら、一生、自分でいられなくなるぞ」
 座っている青年は俯きながら答えた。
「分かってはいるんです…でも、私も含め、クンちゃんも本当の自分であることが恐ろしいんです。本当の自分を出せば、皆から否定される。それに…クンちゃんは、今、私達を養うため、一生懸命、稼いでくれます。だから…何も言えません…」
 話を聞いていたのか聞いていなかったのか。はっきりとはわからなかったが、青年は黙ったままゆっくり立ち上がった。その姿は、金髪の青年より大きく、少女は見上げる様に彼を見た。
「そうか…。すまんな…。店じまいだ…。カジ…」
「あ…うん」
 まだ、日はまだまだ明るいと言うのに、客がつかないせいか、青年は手を後ろにやり背を伸ばすと、その手をだらりと前にやった。そしてそのままの姿勢で綺麗に揃った薬袋が入った引き出しを仕舞い始めた。蛙は彼に言われるまま拡がった引き出しを持ち上げ一つひとつ青年に渡していった。
「で…君はどうするんだ?」
 引き出しを仕舞いながら青年は少女を見た。
「……。クンちゃんは、私の話聞かないと思います…。それに…クンちゃんにとって、私たちのことは…今はもう邪魔でしかないんです。仲間だと思いたくないみたいです。もう…遠い存在になってしまいました…。だから…」
「じゃあ、そんな奴捨てればいいだろ…」
「で…でもそれは余計に孤独を生みます。それでもクンちゃんは自分は一人だと思っているから、自分には仲間はいないって思っているから…。だから、寂しい人なんです。盾を大きくしないといけない。だから…」
「で?」
 青年は少女を見下ろした。
「え…?」
「本当。それってお前の都合だよな…」
「よ…ヨダカ?」
 蛙は薬箱をいつのまにか背負った青年を見た。
「そうやって一番、傷付きたくないの自分じゃねぇのか?」
「え……。えっと…」
 少女の様子を見ていた青年は大きくため息を吐いた。
「…まあ。そんなこと俺には関係ないがな。
  じゃあな。お嬢さん。また貝の火屋をよろしく…」
 青年はそれ以上何も言わず、蛙と共にその場を立ち去った。


 ✳✳✳

「久々の布団だー」
 蛙は敷かれたふかふかの布団の上で倒れ、大きく伸びをした。布団は僅かに若葉の薫りが漂った。
 その民宿の二階からは大通りに赤く光る石油ランプと月の光で青白く光る桜の木が見えた。民宿は二階建の木造でヨダカたちはその二階の西向きの端の部屋に案内された。その部屋の北側には扇風機があった。どうやらこの民宿には各部屋に一基づつ扇風機が置いてあるらしい。蛙は寝ながら部屋の隅にあったその扇風機をじっと見た。季節は初夏に入ったばかりであったが、夜は少し蒸し暑苦しさを感じた。扇風機はそれほど大きなものではなかったが、真鍮製で、羽が4枚付いており、電灯と同じく電気で動く代物だった。しかし蛙はその扇風機に興味があったものの、回すを我慢した。その理由は長時間、直接風に当たると皮膚が乾くからであった。
「ヨダカぁ。窓開けてぇ」
 カジカは布団の上で伸びをしながら青年に言った。
 青年は椅子のうえで足を組んで、ガラス窓から外を見ていた。何か考えているのか蛙にはわからなかったが、相変わらず無表情ままで、彼は蛙に対し返事もしないで、黙ったままネジ式のカギをくるくる回し、西向きのガラスの窓を開けた。街は昼間と違い、とても静かで、近くから小さく鳴く虫の音が聞こえた。カジカは寝ながら空を見た。綺麗な星空が見えると期待したが外は月が明るくて、星があまり良く見えなかった。蛙は布団が粘液で汚れないためと、身体が乾かないために敷いた羊の胃袋※5の革の上でため息をついた。それと同時に昼間の出来事を思い出した。
「ヨダカぁ、今日言っていた『うすあかりのくに』って何?」
「『人身売買』を行う場所の隠語だ…」
「……?え…」
 蛙はその言葉を理解した瞬間、言葉を失った。
「『ネズミの一族』は子沢山で有名な一族だ。だが、中には貧しくて、なくなく子供を売る風習がある。元々は他民族に自分の一族を売ることにより、一族の繁栄させるものであったが、いつしか、子供を捨てるものになったらしい」
「そうなん…だ」
 朝から吹いている風は北向きに方向を変え、昼間とは違うひんやりとした風が窓から入ってきた。蛙は体位を変え俯せになって見上げる様に、青年を見た。
「……」
「…なんだ?」
「ヨダカぁ。何であの子に酷い事言ったの?ヨダカらしいちゃらしいけど」
「あ”?」
 青年は蛙の方を振り向いた。その顔は月の光が邪魔をし、その表情を隠した。
「…て何時もより怖いよ。まだ怒ってるの?『ヤマネ』っていう子に…」
 カジカは黒髪の青年の表情を窺うようにして見た。しかしまだ暗くてはっきりと見えなかった。
「別にいいじゃん。許してあげなよ…。ヤマネさんはただ、仲間想いでやっているだけだし。そりゃ、天竺って言う奴に本当のことを言われたら嫌だけど、ヨダカって本当は『カラスの一族』じゃないんだし。僕だって、別に『蛙』について揶揄されたってどうとも思わないよ…」
「だから?」
「え?」
「だからなんだ?」
 ヨダカの視線に思わず蛙は背中をゾクリとさせた。表情は暗くてはっきりとしなかったがその陰は何時もより大きく感じた。蛙は慌てて被った腹かけを払いのけ、立ち上がった。
「じゃあ、訊くが。仮に仲間だからと言って、あの言いたい放題の野郎を甘やかしてほったらかしにする方が無責任じゃないか?」
 青年はゆっくり椅子から立ち上がり、蛙の方に歩み始めた。
「で…でも」
「危険を侵している仲間に何も言わないのは、ただの自己満足じゃないのか?」
「ち…違う!ヤマネさんは、ただ…クンさんから『天竺』って言う存在を奪いたくないだけなんだよ」
 影が段々と大きくなっていき、蛙は唾を飲み込んだ。
「だとしても、仲間って言うなら辞めさせるべきだ」
「な…なんで、ヨダカそんな酷い事言うの?」
 窓から入って来た静かな風は青年の黒髪に隠れた耳飾りがゆっくりと金色に光らせた。それと同時に白く薄い雲を動かし、光る月をゆっくり翳らした。
「昔…。アイツと同じく、他の一族を軽んじて、滅んだ一族がいるんだ…。俺はヤマネさんと同じでそいつらに何か言えた立場なのに…それができなかった…」
 その声はいつもの平坦な声とは全く違うものだった。
「ヨダカ…?」
 その姿はどこか小さくに見えた。
「はぁ。それにああいう芸風が嫌いなだけだ。もう別にいいだろ…もう寝ろ。明日は一番に場所を取らないといけないんだ」

 ✳✳✳

地球照ある七日の月が、
海峡の西にかかって、
岬の黒い山々が
雲をかぶってたゞずめば、
そのうら寒い螺鈿の雲も、
またおぞましく呼吸する
そこに喜歌劇オルフィウス風の、
赤い酒精を照明し、
妖蠱奇怪な虹の汁をそゝいで、
春と夏とを交雑し
水と陸との市場をつくる
  ……………………きたわいな
  つじうらはっけがきたわいな
  オダルハコダテガスタルダイト、
  ハコダテネムロインデコライト
  マオカヨコハマ船燈みどり、
  フナカハロモエ汽笛は八時
  うんとそんきのはやわかり、
  かいりくいっしょにわかります
海ぞこのマクロフィスティス群にもまがふ、
巨桜の花の梢には、
いちいちに氷質の電燈を盛り、
朱と蒼白のうっこんかうに、
海百合の椀を示せば
釧路地引の親方連は、
まなじり遠く酒を汲み、
魚の歯したワッサーマンは、
狂ほしく灯影を過ぎる
  ……五がつははこだてこうえんち、
    えんだんまちびとねがひごと、
    うみはうちそと日本うみ、
    りゃうばのあたりもわかります……
夜ぞらにふるふビオロンと銅鑼、
サミセンにもつれる笛や、
繰りかへす螺のスケルツォ
あはれマドロス田谷力三は、
ひとりセビラの床屋を唱ひ、
高田正夫はその一党と、
紙の服着てタンゴを踊る
このとき海霧ガスはふたたび襲ひ
はじめは翔ける火蛋白石や
やがては丘と広場をつゝみ
月長石の映えする雨に
孤光わびしい陶磁とかはり、
白のテントもつめたくぬれて、
紅蟹まどふバナナの森を、
辛くつぶやくクラリオネット

風はバビロン柳をはらひ、
またときめかす花梅のかほり、
青いえりしたフランス兵は
桜の枝をさゝげてわらひ
船渠会社の観桜団が
瓶をかざして広場を穫れば
汽笛はふるひ犬吠えて
地照かぐろい七日の月は
日本海の雲にかくれる

 宮沢賢治 『凾館港春夜光景』 青空文庫より※6


 春と夏が混じったの空気は湿度を持っているというのにとても軽かった。ヨダカは吸い込んだ空気を大きく吐き出した。
「…もうすぐ…。八十八夜の別れ霜か※7…。帰ったらチュンセんちの藁を片付けないとな…」
 ヨダカは耳にそっと触れた。
「クソが…」
 ヨダカは風で揺れる前髪を後ろに掻き上げた。

ヨダカ 第六話 クンねずみ①

解説
※1桜貝の様な色をした風呂敷…ただの風呂敷に拘るのは馬鹿げているのですが、どの色を入れようかと迷ってました…。その理由として、これは私の変な拘りなのですが、ヨダカは薬屋であるので何となく昔の『富山の薬売り』を参考にしてます。それで昔の『富山の薬売り』についてインターネットのみで、昔の『富山の薬売り』を調べると、持っている風呂敷が藍色や黒色が多いように見えます。(って言っても、銅像や白黒写真ばかりのためはっきりとせず、また資料館のサイトだと思われるのですが、そこに写っている写真のマネキンが背負っている風呂敷がその色だったという話です。詳しく何色を使っていたという記載は無さそうです。)一方、ゆるキャラなのでしょうか?その子は、緑色の風呂敷を包んでいます。また、色や柄の意味合いも調べたんですが、いずれの色や柄にしろ、ヨダカは黒ずくめであるのでその上に乗っかる上では映えるようにしないとな…と、なかなか決まりません。そもそも、風呂敷は乗っかるレジャーシートじゃなくて(お風呂場では乗っかるために使っていたそうですが)包むやつだからと風呂敷に拘んなくてもいいじゃないのと頭のなかでグルグルして、結局『貝の火』→火の色(赤色)の貝→桜貝?ってことになりました。

※2万能散…これは宮沢賢治の『貝の火』に出てくる薬の名前です。新潮文庫より。
 関係ないのですが付け加えで、『万能散』の『散』は『粉末状の薬』という意味があるらしいです。なので原作の『貝の火』のホモイが母兎から貰った薬やヨダカが売っている『万能散』は粉薬?ということでしょうか…?

※3電気栗鼠(でんきりす)の逆立った毛のように、ツンツンと髪の毛を立てた…
…これは…私の先入観が入ってしまっている文と言えます。電気栗鼠とはポラーノ(ポラン)広場で歌に出てくる架空の動物です…。一体、どういう動物かは謎です(。なので比喩にふさわしくないですね…)。勝手ながら自分の中の『電気栗鼠』イメージは、『黄色い電気を発しているハリネズミ』みたいなイメージになっており、それを優先して文章を書きました(。もうリスでもすらない)。ここで一体何を言いたいのかと言いますと、私の『電気栗鼠』は宮沢賢治が想像した『電気栗鼠』とはかけ離れてしまう可能性があると言うことです。電気と言えば、宮沢賢治の別の話で『月夜のでんしんばしら』と言う話がありますが、その一文に『するとじいさんの眼だまから、虎とらのように青い火花がぱちぱちっとでたとおもうと、恭一はからだがびりりっとしてあぶなくうしろへ倒れそうになりました。』と言う表現があり、宮沢賢治とって電気とは『青くて』『びりり』の電気です。しかし、残念ながら、私の中の『電気』と言うのはテレビの影響か、『黄色』『髪の毛が逆立つ』『ビリビリしながら、骨が透ける(←よく、アニメや漫画である表現と考えて頂ければ)』と言うなイメージを一部持っています。むしろしかし正直言えば世代なんでしょうが…どうしても(オブラートを包まず言いますが)青白く光るものや光線と言えば『かめかめ波』のイメージが拭えず、『電気栗鼠』と言うと自分のイメージした電気栗鼠と同時に、あの黄色い鼠(?)『ピカチュウ』がどうしても出てきます(。稲妻とか、静電気をちゃんと見ているはずなのですが…)。そのせいなのか、(個人的かもしれませんが、)それらのイメージとともに、電気は『毛を逆立てる』というイメージ持ています。残念ながら宮沢賢治の電気には毛を逆立てるという表現はなく(取りこぼしていたらすみません)、私が持っている電気の『毛の逆立ち』のイメージを使いました。なので、今回、天竺の髪はツンツンを電気栗鼠の逆立った毛で表現しましたが、それは、私の中の『電気』であることをご了承ください。

 ※4『天竺』…『天竺』とは、インドのことを示すことは知ってる人もいるかもしれませんが、『天竺ねずみ』とはざっくり言えば、モルモットのことです。

 ※5羊の胃袋…この名詞いれると、『全年齢対象』に相応しくないかもしれないって思ったんですが、グロテスクとも違うんで、入れてしまいました。これは、※1と同じく、私の知識不足で、蛙が布団の上で寝ると、湿るよな…って思って、何か敷物ないかと構想してたのですが、残念ながらずぶ濡れで寝る人は今も昔もおらず、そんな道具はありませんでした。(←私が調べたなかでなの話です)それで仕方なく、昔のもので耐水性があったもので、思い付いたのが水筒の素材に使われた羊の胃袋でした。まあ、カジカが寝るのに相応しい素材かって言ったら、結構突っ込みどころが多い感じです。
 羊の胃袋は主に水筒の素材として使われていて、入った水が革の表面に染みだし、それが蒸発することにより中の水を冷やしていたみたいです。まあ、そう言う理由で、ちょっとヌルッてしているカジカには程よく表面の湿り気を取ってくれて、且つカジカにとってはひんやりして気持ちいいと思っているかもしれないと思い、入れました。時期を間違えると寒いかもしれないです。

 ※6宮沢賢治 『凾館港春夜光景』…次回、なんでこの詩をここにぶっこんだか次回解説しますが、ここに出てくるオルフィウスはざっくり『こと座』を示すみたいです。ギリシャ神話のオルフェウスだーと思いながらこの詩を見たわたくしは、見事に自爆しました(汗)。因みに、ワッサーマンは『水瓶座』のことを示すそうです。(サイト『凾館港春夜光景』の創作より)


 ※7八十八夜の別れ霜か…この『八十八夜』って言うのは、歌を知ってるかも知れませんが、『夏もちぃーかづく、八十八夜~♪』で有名な八十八夜です。この日を過ぎると、霜が降らなくて済むと言うことが言い伝えられており、立春から88日後のことを示すそうです。なんで、五月初旬あたりです。茶摘みだけではないんですね~(。個人意見です)。それはともかくとして、何故、ヨダカがそんなことを言っているのか、そして、最初に書いたのですが、何故、樹木医リンポーへ畑の相談をするのか、今後書いて行けたら幸いです。

ヨダカ 第六話 クンねずみ①

まだ全然、終わってないですが…。(文章もぐだぐだ) 取り合えず、前半?部分。内容忘れた方ごめんなさい…。後で要約かなんか作るかも(嘘ついたらすみません。)

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更新日
登録日
2016-05-20

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