エピローグへ向けて
静かな日曜日に
とても静かな日曜日
とても静かに星は流れた
昼間、誰にも見つからず
星は、流れた
私だけが知っていた
1つの星の終わりの時を
あまりに静かで、あまりに唐突で、
私はただ、ただ、星の最期を見つめていた
流れる星をすくうなんて、できないから
星は、静かに流れ、スープへ落ちた
白いスープへ星は落ちた
今なら、すくえる
簡単に、銀のスプーンで、そっと…
そうしなかったのはなぜ?
すくうことをせず、流しへ棄てたのはなぜ?
スープと一緒に呑み込まなかったのはなぜ?
おかげで、涙も溢れなかった。
来客の足跡
あなたは、チャイムも鳴らさず、唐突に上がり込んできた。
私が、来客だと気付いた時には既にテーブルについていた。
あまりに唐突で、私は酷く吃驚したけれど、靴はきちんと揃えられていた。
思えば、あなたはいつもそうだった。
私は毎回吃驚したけれども、あなたの訪問をいつしか心待ちにしていた。
思えばあなたの方からいつも訪ねて来てくれていた。
そのあと、関係を保てなかったのは、ひとえに私の所為。
あなたが来るたび付けていく足跡を、ぼんやり眺める日々を送る。
この足跡を辿れば、あなたにいつでも会えるのに、私には履いていく靴も、持っていくお土産も、時間を繋ぐだけの話題もない。
ただ、あなたに会いたい。
それだけの理由で、出掛けるだけの勇気がない。
鏡の人よ
歪な私を「歪だ」と言って
惨めな私を「惨めだ」と言って
かわいくない私を「かわいくない」と言って
ただ、あるがままの私を、あるがままに証明して
そして、そんな私を慰めなくていいから、ただ、私が私に耐えられない時、何も言わずに、抱き締めて欲しい
この手を包んで、何も起こらないことを、奇跡など無いということを、わからせて欲しい
あるのは、あなたの体温だけ。
そう思えば、私は私を耐え抜き、生きて行けるとすら思える
エピローグへ向けて