大きな月と小さなうさぎのお話

 遠い昔のお話です。

 ある小さな野うさぎが、夜に草原をお散歩していたときのこと。(そのころは、まだお月さまというものがなかったので、ホタルと星の光を頼りに歩いていました)

 草原の爽やかな風にあたりながら、近くの湖までやって来たとき、湖のほとりに、どうしてか優しい橙色の灯りを放っている、小さなまるい石を見つけます。

 うさぎは、その石を珍しそうに眺めたあと、ゆっくりと拾い上げました。

拾い上げてみてうさぎはびっくり!

 なんとその石には顔があり、なにやら苦しそうな顔をしていたのです。

 「おなかが空いて今にも灯りが青色になりそう。
なにか食べさせてくれないかい?」

 それを聞いたうさぎは、あわてて臼ときねでおもちをつきはじめます。
 なにしろこのうさぎは村一番のもちつき名人だったのです。

 うさぎが、つきたてのおもちを石の口元まで持ってくると、石はその小さな口で、おもちを一口でぱくりと食べます。

 するとその瞬間

 石はぐんぐんと大きくなり、うさぎより大きく、木より大きく、ついにはうさぎたちの住む地球よりも大きくなりました。

 とうとう宇宙へと放り出されると、やっとちょうどいい大きさになったようです。

 うさぎは、いつの間に石が空の上にあることにぽかんと口を開けます。

石は、暗い夜空の中でひとり、温かいひまわり色の光で、地球を包み込んでいます。

 うさぎがその優しい明るさに見とれていると、他のうさぎたちも、ぞろぞろと草原の湖に集まってきました。

 「なんだいなんだい、なんだってこんなに明るいんだ?巨大ホタルでもいるのかい?」

 「いやいや、星でも降ってきたんじゃないか?」

 そんな風にあれこれ考えていたうさぎたちも、星と言われて空を見上げてみてびっくり!

 大きな丸い何かが、空に浮かんでいるのですから。

 うさぎたちは大慌て!

 それを見て、石を大きくさせたもちつきうさぎは自慢気に言います。

 「もちをやったらみるみるうちに育ったのさ。元は石だったんだ。」

 すると、村で一番小さなうさぎが、まるい目を無邪気に輝かせます。

 「夜なのにこんなに明るいなんてすごいや!」

 それを、聞いてもう一度石を見たうさぎたちもそろってうなずきます。

 「あぁ、本当だ。すごい
今日は特別な日だ!」

 「あの石に名前をつけてやろう。何がいい?」

 そうして、うさぎたちが話し合った結果、石の名前は

 『もちつきうさぎ』から『つき』をとって、『月』になったそう。

 そして、月が石になったときのような満月の日を『お月見のの日』として、その日は月まで全員で行って、もちをつくんだとか。

だからその日は、月はとびきり大きいのでしょうかね。

                          おしまい

大きな月と小さなうさぎのお話

小学生の時、ふと月のうさぎについて考えたときにつくったお話です。

本当の由来はわかりませんが、月のうさぎを想像しながら読んでみていただけたらと思います。

大きな月と小さなうさぎのお話

お月見の日に、なぜうさぎがもちをついているのでしょうか?

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-15

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