沈んだ心

沈んだ心

私は、何のために生きているのだろう。

隣の部屋からは、ペンを必死に走らせる音が聞こえる。私は、それに気がつかないふりをしながら、携帯のキーボードを叩く。本当はわかっている。無意味にインターネットを彷徨っている私よりも、隣でペンを走らせる彼の方がずっと偉いことを。

私には夢がない。だから、なんのために勉強するのか、さらには、なんのために生きるのかがわからない。高校合格を目標にしていた中学時代の私は、まさに、今の彼の姿に重なる。必死に勉強に向き合っていた。しかし、高校生になった今、いままで以上に勉強の量も質も増えて、努力をしなくてはならない状況なのはわかっている。でも、目標もないのにただただ頑張るなんてことは私にはできない。そして、私の貴重な時間は、インターネットに無意味に消えていく。

私は今、なんのために生きているのだろう。携帯を弄る手を一瞬止めて考える。しかし、すぐに再開する。なぜなら、
答えが一瞬で出てしまったからだ。
“今の私に生きている意味なんてない”
かといって、死にたいわけではない。きっといつか、私だって大きな夢を持って、それを実現させるために、彼のように必死になって、最終的には美しく輝く日が来るんだ。私にはまだ、その夢がないだけである。

そうはいってもきっと、母が帰って来れば、「勉強しなさい」と、ゲキが飛んで、私は訳も分からずに無意味な勉強をすることになるのだろう。そう考えると、こうして、インターネットを彷徨うのも悪くないかもしれない。

そんなことを考えながら、ペンの走る音に耳をすませる、昼下がりだった。

沈んだ心

思想めいたお話にしてみました。

沈んだ心

私は、何のために生きているのだろう。 自問自答する少女のお話。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-14

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