ひきょうなわたし
安全地帯より
あなたを遠くから思っている。
ここは安全地帯。
ここからあなたを思っている。
あなたはわたしに言葉を投げる。
わたしはそれを拾って大切にしまうばかり。
あなたに会う勇気がなくて、ただ、あなたからもらったいつかの言葉をいつまでも愛でている。
不意にあなたに鉢合わせたら、わたしの声は強張ります。
微笑みの1つぐらい浮かべて会いたかった。いつもそう言って泣いているのです。
安全地帯で。あなたを思って。
まぼろしの春
あなたが微笑むから、春だと思ったの。
あなたの微笑みを確かに見たの。
心はぽかぽかして、どきどきして、ああ、春だと思ったの。
通じ合えたとすら思ったの。それが春の気配だと、信じていたのに、あなたとの距離を感じれば忽ち、木枯らし、吹き荒れる。
距離を知れば、隙間風。
わたしの心臓めがけて差し込む隙間風。
酷く寂しくて、今日は風邪を引きました。
ああ、あの春は、悲しき妄想で、今は冬で、厳冬で、わたしは布団をかぶりあなたの名前を呟いた。
今度こそは
あなたがくれた、こそばゆさ。
あなたは知らない、わたしが幸せであるということ。
上手に笑えなくても。
柔らかな挨拶ができなくても。
会話がなくても。
目を見ることができなくても。
あなたがくれた言葉をまだ、大切に持っていますよ。
今度こそは、あなたに、拙いなりにも、言葉を返したいと願います。
あなたの名前を呟いたあとに、ひっそり言うのは「ありがとう」。
どうかいつか今度こそは
呟くだけの名前をあなたの背中に押し付けて、ありがとうと伝えてみたいものです。
ひきょうなわたし