○○探し

誰にでもできる簡単な仕事です

苦労して手に入れた最強新卒カードを使いきり届くのはお祈りメールだけだった。
諦めて地元に帰ろうとしていた、あるとき。
とある会社から採用通知がきた。
そこは死体を探す会社だった。
ブラック臭半端ないがこの際受かれば何処でも良い。俺は快く引き受けた。
仕事内容は簡単だった。
死にそうな人の匂いを嗅ぎつけて死体を見つけること。
まず最初に目をつけたのはいかにも老い先短そうなお年寄りだった。
着ている服はボロボロで何日も風呂に入っていないのか鼻にくる悪臭を放っている。
コンビニで100円のおにぎりを買い、よろよろと道を歩いていた。
何となく今日死にそうだな、と思った。
ついていくと彼はアパートの一室で首を吊って死んでいた。
「人生に疲れました」という遺書付きで。
だけど俺は何とも思わなかった。
俺は度重なる面接で既に心が死んでいた。
一切自分の手を汚さない楽な仕事だと思った。
次に見つけたのは8歳くらいの子供だった。
彼は一人公園でボール遊びをしていた。親はパチンコでその場にいなかった。
死にそうだな、と思った瞬間車に轢かれて小さな体が吹っ飛ばされた。
あーあ。と思って死体を確認すると彼の体には虐待されたような打撲痕があった。
あとで見に来た母親は笑っていたような気がした。
俺はなぜだか人の死期がわかってしまう謎の特技があった。
最初は自分に向いた仕事だと思ったが人の死を何度も目にすると流石に嫌になってくる。
さっさとこんな仕事早く辞めたかった。
そう思いながらも今度は20代くらいの男性を見つける。
男は駅の改札を通って先頭車両に並ぶ。
信号が変わって電車がやってくる。
それと同時に若者は身を投げた。
一瞬の出来事だった。
まじかよ、と思いつつも自分の足元を見る。
そこには男の腕が飛び散っていた。
よくよく見るとこの間誕生日に買ってもらった自分と同じ腕時計をしている。
ばらばらになった足には就活で揃えたリクルートスーツと新品の靴。
あそこに転がっている顔にも見覚えがある。
ああそうだ。あのとき俺は死んだんだ。
全く就職が決まらない自分に絶望して。
気づけば左腕はない。足もない。頭もない。
「見つけた」
俺はやっと仕事を辞める事ができた。

○○探し

○○探し

  • 小説
  • 掌編
  • 成人向け
更新日
登録日
2016-05-13

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