妄想シチュ『寒い日のデート』
「寒いね」
と、二人で言い合いながら歩く、ある日の夕方。
もう朝晩は冷える季節となりました。
彼と繋ぐ手も、冷たい外気に晒されて冷たくなります。
「ふあ……手がかじかむ」
「俺も。そろそろ手袋が必要だな」
「昼間は晴れてれば結構暖かいのにね」
ついこの間まで夏だったのに、いつの間にか秋となり冬となり。
どんどん寒くなってゆきます。
「こういう時は、こうだな」
そう言って、彼は自分の顔を挟むように両手をほっぺたに当てました。
「ほら、お前もやってみなよ」
私も彼と同じように、両手をほっぺたに当ててみました。
「ほあ……ほっぺたが冷たい」
冷たくなった手が、ほっぺたの熱でじんわりと温まります。
逆に熱を奪われたほっぺたは冷たくなってしまいます。
「お、そういえばアイネって体温高めだよな」
彼はそう言うと、両手で私の顔を挟み込みました。
私のよりも更に冷たい彼の手は、ほっぺたの熱をどんどん奪ってゆく。
「んんー」
でも私は抵抗しないで、手を当てやすくなるように彼の方へ顔を向けました。
「お?」
ぴちゅり、と小さな水音とともに唇に柔らかな感触がありました。
「ちょ、ちょっと、何でいきなりキスするの!?」
「いやあ、だって、目を閉じて顔をこっちに向けたから、してほしいのかと思って」
「むぅ」
外なのに、人前なのに。
私の顔は彼の手によって冷たくされた以上に熱くなってしまいました、とさ。
妄想シチュ『寒い日のデート』