桜のお話

物凄く短いです。過去に書いたやつなので一部おかしいかも。少しホラーありますがそこまでではないです。

 遥か昔、時は江戸時代。一本の桜が咲いていた。その桜には何故だか理性があり、いつも自分を見てくれるとある男の人が好きなのだった。
「はぁ。暇だなぁ。誰か見に来てくれない かな。」
と桜は一人でつぶやいていた。
「いつも見に来てくれるあの人も一週間位見
 てないなぁ。どうしたのかな。」
とその時
「い、痛い。誰か助けて。」
突然、桜の体に激痛がはしった。桜はその時思った。
「あぁ、もうすぐ私の命は尽きるのだ。せめ て最後にあの人に会いたかった。」
すると
「その願い、私が叶えてあげようか。」
そう言ってきたのは人間の少女だった。少女は桜の方をしっかりと見ながら淡々と話していた。
「桜、あなたの様な木でも恋をするのね。あなたの命が尽きるまでは私の体を貸すよ。」
そういうと少女は桜の幹に触れる。その瞬間に目の前が真っ白になった。そしてそっと周りを見てみると、お互いの体が入れ替わって桜は少女になったのだ。そして桜は街の方へ軽やかに駆けていった。
 私が好きな人はちょっと特殊で男性なのに女性のように髪が長いのであった。その特徴を使って探しているととある酒場でその人を発見した。話しかけてみるととてもいい人で桜は直ぐに恋に落ちていった。しかし、ある時、桜の前に行ってみると命が尽きかけていて花弁があと数枚しか残っていなかった。慌てて男の所に行って別れを告げた。すると男は
「途中まで送ってもいいかい。」
と聞いた。断ることもできず、送ってもらうことになった。そして桜の木の前を通った。その時、桜の木に残っていた最後の花弁が散ってしまった。桜は思わず
「ああ、戻ることが出来なかった。」
と言ってしまった。すると男は
「やっぱりか。お前はあの桜だろ。俺が十年前に殺してあの桜の根元に埋めた女に似ていると思ったんだよ。」
と言った。そのとたん、桜は全てを思い出してしまった。この男と出会い、恋に落ちたこと。ある日、殺されてこの桜の根元に埋められた事。そのとたん、殺意が芽生えた。そしてその殺意は桜を妖魔に変えてしまった。そして桜は木の根元に男を埋めた。
 それから数年後の春、枯れてしまったはずの桜が芽吹いた。そうして、桜の呪いと魔法は続いていき、人はそれを繰り返す。ああ、なんと滑稽な事だろうか。その男は薄気味悪い笑みを桜の木の中で浮かべていた。
「おっと、お客さんだ。」
桜の呪いは続いていく。

桜のお話

桜のお話

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-12

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