深海(仮)5
「お母さん……お父さんは、どこに行ったのかな」
クマノミが言う。
その言葉を聞き母クマノミは、
一瞬戸惑った表情を見せたがすぐに微笑み、
優しい声で
「お父さんは、逃げることができたみたい。
私達みたいにはならなくて済んだのよ」
そう言って、クマノミを抱き寄せた。
「そっか。お父さんならきっと、逃げられるもんね」
クマノミは、母クマノミの抑えきれなかった涙に気がつくことはなかった。
──────────
「陛下、これは国の危機です。戦いの準備をするべきでは」
「落ち着きなさい、既に準備はできているわ」
「国民もかなり困惑しているようで、広場に集まっています」
「そうか。では私が説明をする。急いで残りの国民も集めるのだ」
「はっ」
深海(仮)5