7月の淡い物語

時間も無く、最後のほうは投げやりになっています。短編ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

「おい、聞いたかよ。最近、星見の丘で流れ星が見ることができるらしいぜ。」
そう騒いでいる男子の声が聞こえました。そして私は、詳しい話を聞きに男子に話しかける、訳ではなくただ座って、机をみつめていました。私の名前は鳳花(ホウカ)。人見知りで引っ込み思案な中学二年生です。星が大好きで、天文学部に入部したいと考えているもののこの性格のせいで未だに体験にすら行けていないのでした。
 七月の放課後のことでした。たまたま天文学部の近くを通ることがあり、ちらっと部室の中を覗いてみました。するとそこには望遠鏡など星を見るものがたくさん置いてあり、私は思わず魅入ってしまいました。すると
「君、どうしたの?天文学部に興味があるの?」
と後ろから優しそうな声が聞こえました。驚いて後ろをみると栗色の髪をした優しそうな青年が立って、こちらを見ていました。
「す、すいませんでした!」
と私がとっさに謝ると
「いやいや、全然気にしてないから大丈夫だよ。星に興味があるの?」
と青年は言いました。
「はい。ただ、あまり人と喋るのが得意ではなくて、なかなかここに来ることができなくて…」
私がそういうと青年は
「そっか。でも、今ここに来てくれたよね?歓迎するよ。ようこそ、天文学部へ!僕は部長の三弥(ミヤ)。中学三年生だよ。」
といいました。私が
「わ、私は鳳花です。何も出来ないかもしれませんがどうかよろしくお願いします。」
というとミヤは
「うん、よろしく、ホウカちゃん。」
と言いました。そして、私の少しばかり遅い部活動が始まりました。
 天文学部に入部して三日。七夕が近づくにつれてだんだん忙しくなってきました。私たちの学校では毎年、夏休みに入る前に天の川の様子をプラネタリウムにして全校生徒に見せる、という行事があります。 その準備で今、天文学部は猫の手も借りたいほど忙しいのでした。
「あ、ホウカちゃん。今日のことちゃんと親  に聞いてきた?」
ミヤ先輩は心配そうにこちらを見て言いました。私が
「あ、大丈夫です。了解もらえましたから。」
と言うとミヤ先輩はほっとしたような顔をしました。今日は七夕の日。天文学部の合宿の日でもあります。毎年、星見の丘で天の川を徹夜で観察するのです。私は、夜が楽しみでしかたありませんでした。
 夜になり、私は先輩たちと星見の丘で合流しました。観測は午前一時から。それまでは寝るなり喋るなり自由行動でした。私は特にすることもないので散歩がてら星を見てみようと丘の頂上を目指して歩き出しました。吹いてくる風が心地よく、木々や草花がそよそよと凪いでいる音が聞こえてきます。そんな音に耳を澄ませながら頂上へと昇って行きました。頂上には一つの人影がありました。私は不思議に思って少しずつ近づいてみました。すると
「そこにいるのは誰?」
と先輩の声が聞こえました。私は慌てて
「わ、私です!ホウカです!」
といいました。すると月が出てきてほっとしたような先輩の顔が見えました。
「ホウカちゃん、少しだけ僕の話を聞いてくれる?」
そういう先輩に私はうなずきました。
「僕はね、明日が誕生日。でもこのプラネタリウムを完成させたら転校する、親の関係でね。」
と言う先輩を私は思わず見つめました。
「ホウカちゃん、僕は君が心配だった。いつも一人でいる、そんな君がこれからやっていけるのか、不安だった。」
そう優しく語る先輩に私は胸が熱くなり、思わず私は
「大丈夫です!私は、この数日間だけだったけど先輩にとても助けられました。だからこそ、大丈夫だと思います。」
と言いました。そして、私は先輩に一番伝えたかったことを伝えました。
「先輩、七月二十九日、私の誕生日を一緒に祝ってくれませんか?」
先輩はニッコリと微笑むと
「さあ、プラネタリウムを完成させよう。」
と言いました。
プラネタリウムは大成功。みんな喜んでくれ、私たちもやりとげた充実感でいっぱいでした。
「また逢う日まで、頑張ろう。」
そう残して行ったミヤ先輩のおかげで私は変わることができました。今では、友達も沢山できて充実した学校生活を送れています。
 そして今から、私の今までとは違う夏休みが始まろうとしているのでした。

7月の淡い物語

7月の淡い物語

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-12

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