天使狩人 6
前回と同じです。
長い一本道を恵は一人で歩いていた。これからどうなるのだろう、と疑問を抱きながら……。
昨日、恵は男に天使狩人になると誓った。しかし、天使狩人は彼が最も嫌うものだ。今まで彼は、自分の親が殺されたこと……それを見殺しにされたことを忘れていない。もはやトラウマだった。
実は、男はそのトラウマを利用したのだ。そして、長峰恵という逸材を手にしたのだ。このことは、その男だけの秘密である。
気がつくと広場にいた。そこには、多数の人がいる……恐らく天使狩人だ。あの男は、こう言っていた。
「この道を抜けた時、お前は仲間と出会うだろう」
だが恵は、仲間をつくるつもりはまっさら無かった。第一、最も嫌うものになった自分も許せないが、それらで結束をするなどもってのほかだったからだ。
そんなことを思っていると、ある光景が目に入った。それは、たまたま恵の場所から見えただけらしく、他の人は気づいてないようだった。
「黙ってろや」
「いやよ、てかこの腕どけてよね!」
見るからに、男が二人がかりで女を押さえつけようとしている。男女の力量の差は目に見える。圧倒的に女が押し負けていた。
ーー助けに…いや、天使狩人か……。
恵は、天使狩人でありながらも天使狩人を嫌っている。それゆえ、助けに行かなかった。
ーーやっぱり、男と女だろ? ふつーは、助けに行くよなぁ……だけど、天使狩人だし………。
いや、ダメだろ
ーー助けに行かなかったら、見殺しにすると同じじゃないか! 俺は…俺は……そうは成らない!
恵は、振り向きダッシュした。揉み合ってる場所へ向かって……。
「てめェら、やめろや!!」
威勢よく声を上げた! それに対し二人組はーー、
「兄貴ィ、どうします?」
「コイツには低魔法でいい、多分新人だ」
「わっかりましたぁ」
二人組のやりとりが終わった刹那、恵の足下が泥沼化した。それに、足をとられ、沈んでいく……。
「な、なんだよ! これ!!!」
「やっぱり、コイツ新人だゼ。魔法も知らないなんてな、ハハハ」
ーーは? 魔法? そうかここは平和世界じゃないんだ。俺が知らないことだってある!
恵は、自分が小さく思えた。それと同じに怒りも覚えた。二人組に対してではなく、ひ弱な自分自身に対しての怒りだ。
「ウオオオオオ」
足を上に上げようともがく……上に、上に、上にーー。
「兄貴ィ、なんかヤバくないスか?」
「ヤバイかもな? うん、ヤバイ!」
「ラァァッ」
持ち上げた足が、二人組の兄貴の顎に直撃した!
「ガハッ」
「兄貴ィィィィィィィィィ」
恵は、拳を握り締めこう言った。
「次は、お前の番だな」
「ギャァァアアアア」
二人組は、ノックアウトされたーーはずだった。恵が、女の安否を確認しようとしたその瞬間! 恵の目に火花が飛び散った。
ーーそんなはずは……、倒したはずなのに………。
「コイツ、本物の新人だな。まだ《洗礼》も受けてないなんてな」
ーーは? 洗礼……?
「兄貴ィ、コイツ、殺っちゃいましょうよ」
ーーえ? 殺る? 殺されんの?
「スターアタック」
女の声がしたーーそして、二つの悲鳴も……。
この世界は……なんなんだ?
恵はそれを最後の思考に力尽きた。
天使狩人 6
まだまだ続きます。