深海(仮)4
サメは夢を見た。
よくわからない、明るい場所。
遠い場所にゆらりと揺れる何かが見えた。
目を凝らして見ると、それは身体に不釣り合いな白い羽根を生やした────
そこで夢は途切れた。
ハッとして穴の外を見ると、すでに明るくなっていた。
ドルフィンズに見つからないようにするには昼間がいいのか、夜がいいのか。
その答えはすぐに見つかった。
「あーあ、めんどくせぇなあ、どうせ魚はみんな押し込んだのに探してこいだなんて」
「な、ボスもめちゃくちゃな命令するよ全く」
外からはドルフィンズであろう声がする。
やる気のないことが幸いしたのか、
この場所には気付かずに通り過ぎていったようだ。
後ろを振り向くと、さっきまで寝ていた魚達も起きて、必死に息を潜めていた。
チョウチンアンコウが行ったか?とジェスチャーを送り、サメは行った、とジェスチャーを返した。
「怖いよぉ……お母さん……お父さん……」
安心した反動からか、突然ダンゴウオが泣き出してしまった。
まだダンゴウオは子供だ。
突然こんなことがおきれば怖くなるのも当たり前だろう。
大人のサメでさえ恐怖を感じていたのだから。
子供を泣かせるなんて、許せない。
サメはダンゴウオをなぐさめるように、そっと撫でた。
自分では安心できないとはわかっていても、
小さな子供を守りたいという気持ちがサメにはあったのだ。
深海(仮)4