空に浮かぶ島

西木眼鏡


 僕の住む世界は空の彼方。直径が五メートルの浮島。たったこれだけの小さな世界だというのにどういう経緯であるのか、生まれたときから僕は此処にいて島にはふかふかの芝生とまるでこの島を抱えるように根を張っている大きな木が一本ある。木には毎日鳥がやってきて、僕に魚を分けてくれる。果物類は種類を問わずこの木に実るので味に飽きることがない。高くて狭い、囚われてしまっているとはまさにこのことなのだろうが、今のところひとつとして不自由に感じていることはない。
 一度だけ、地上に降りるチャンスに恵まれたことがあった。それはあるとき遠くの方にぼんやりと見えてきた白く鋭い丘のようなものだった。近くに行くにつれそれが雪を被った山の頂上であることが分かった。丁度、山のテッペンすれすれを僕の浮島が通過しようと思ったその時、意を決して島を出ようと思ったのだが、雪はものすごく冷たいのだということを思い出して踏みとどまった。きっとまた地上に降りるチャンスはきっと来ると信じて、僕は浮島に留まることにした。
 またある時、島に見慣れない青い鳥がやってきたことがあった。鳥の首には細い紐で筒状に丸められた紙が結ばれていた。
『もしこれを見ている誰かがいるのなら、同じく浮島に乗って大空を旅する誰かがいるのなら、私は是非一度会ってみたい』
 初めて僕以外にも浮島に乗って空を漂っている慣だれかがいるということを知った。大急ぎで僕は紙に返事を書いて青い鳥にそれを託した。
 いつかこの空の果てで出会えますように。

空に浮かぶ島

空に浮かぶ島

  • 小説
  • 掌編
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